ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『CIA 失敗の研究』 なぜ9.11テロは防げなかったのか?
d0018433_8302581.jpg著者:落合浩太郎 
書名:CIA 失敗の研究
発行:文芸春秋
情報度:★★★★★

国際政治学の専門家、落合氏によるCIAを含むアメリカ国防体制批判。

諜報機関の仕事はスパイだけでなく、「情報収集」「分析」「秘密作戦」「防諜」の4つに分けられ、アメリカにはCIAを含めて15の機関が存在する。
真珠湾の反省から作られたCIAも官僚機構と動脈硬化が進み、9.11テロに至る失敗を引き起こした。その歴史を検証し、問題の在り処を提示する。(前書き他より)


1章「諜報機関の実像」は、CIAの構造と仕事内容について。カウボーイタイプの「作戦本部」と学者タイプの「情報本部」の他「科学技術本部」「管理本部」。以前日本政界の実力者の訪米の折に、排泄物を調べて健康をチェックしたとのエピソードあり。
また、他の機関として、国防情報局(DIA)、国家安全保障局(NSA)、4軍の諜報部門や司法省下のFBIなどがある。
2章「1990年代のCIA」では、1994年に逮捕されたロシアのスパイ、エームスの事件を取り上げ、CIAの規律の低下が書かれている。また、ウルジー、ドイッチェ、テネットという歴代長官の無能ぶりも述べられている。
3章「失われた10年」では、1991年に最大の敵ソ連が崩壊して以降、冷戦状況から対テロリストへの方針の転換が進まず、官僚機構がはびこったことがあげられている。それにより、中東専門の人員が不足し、4章「CIAとアルカイダ」にあるように、テロ実行の情報を前日に受け取りながら見逃されていた、という事態に至ってしまった。
しかし責任があるのは、CIAのみではなく、5章以降に書かれているように、内政重視だったクリントンやミサイル防衛にとりつかれたブッシュ、FBIや他の諜報機関との縄張り争い、9.11が起きるまで無関心だったマスコミなど、罪無きものはいない状態であると筆者は言う。

巻末に参考文献が多くあげられており、この本の情報度の高さを物語っています。実際、はじめてアメリカの諜報機関をオーバービューすることができました。内容が濃く、一読の価値がある本だと思います。(気になる点として、記載の重複が随所にあり、章立てに工夫が必要なように思いました。)
筆者もいうように、リーダーシップをもった大統領がすぐれた諜報機構の長(現在なら新設された国家情報長官)を任命して、各機関が官僚機構を打破し縄張り争いをなくして協力するしか改善の道はないわけです。
まあ、大統領にあの程度の人物が選ばれている国なので、絶対無理だと思いますが…。
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by bibliophage | 2005-07-19 08:31 | 新書
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