ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『東京奇譚集』 春樹先生活躍中
d0018433_6551830.jpg著者:村上春樹 
書名:東京奇譚集
発行:新潮社
奇譚度:★★★★☆

2005年3月以降に発表された作品に書き下ろしを加えた村上春樹氏の最新短編集。

1.「偶然の旅人」 ゲイで調律師の青年は、カフェで自分と同じディケンズの本を読んでいる女性と出会う。
2.「ハナレイ・ベイ」 サチは、息子がサーフィンをしていて鮫に襲われて死んで以降、毎年ハワイのそのビーチを訪れていた。
3.「どこであれそれが見つかりそうな場所で」 トレーダーをしている男性が、高層マンションから跡形もなく失踪した。
4.「日々移動する腎臓のかたちをした石」 小説家の淳平は「男の一生で意味を持つ女性は3人しかいない」という父のことばが心から離れない。
5.「品川猿」 安藤みずきは1年前からなぜか自分の名前だけが思い出せなくなっていた。

1. は「僕=村上はこの文の筆者である。」という前書き風の書き出しで、いつのまにか春樹ワールドに入っていきます。しかし内容的には、なんと言うことはなく、ジャズの薀蓄がやや鼻につき、2つの偶然の一致(シンクロニシティー)が起きるという話でした。
2. は、サチが言った「エルヴィス」を、「エルヴィス・コステロ」と解した若いサーファーの反応が笑えました。全体には「わたせせいぞう」風で、奇譚の内容もありきたり。「女の子とうまくいく3つの方法」というのは必見かもw。
3. 探偵役の男性が何をするのか期待していると、実は何もしない、というのが新しい気がします。この話に限らず、「デニーズ」とか「メリルリンチ」とかやたらと実在の固有名詞が出てくるのが目に付きました。
4. 淳平はパーティーで出会ったキリエとつきあうことになりますが、この女性が透明感があるというか実在感がないというか…。春樹ファンならきっと気にいる人物だと思います。文中にすごい駄洒落がでてくるのは好感が持てました。作中に出てくる腎臓石のイメージがユニークでした。

以上の1~4まで読んでどうもピンと来なくて困っていましたが、書き下ろしの5.が圧倒的に面白かった。相変わらず比喩が冴えていて、「春の夕暮れどきの月のような微笑み」「眠りを誘う目的の低予算環境ビデオみたいな人生」とか出てきます。猿に関する細かいユーモアも笑えました。ストーリーはかなりドラスティックなw展開をみせ、はっとするようなオチもあります。たぶん典型的春樹ファン(特に女性)は「何これ~」と感じるかも知れません。私はこの作品が最も好きです。
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by bibliophage | 2005-09-21 06:55 | その他小説
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