ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『九月が永遠に続けば』 一流の文章、一流のサスペンス…一流半のミステリー
d0018433_163429.jpg著者:沼田まほかる
書名:九月が永遠に続けば
発行:新潮社
購入動機:書評
納得度:★★★☆☆

第5回ホラーサスペンス大賞受賞作で、ダ・カーポの書評でもベタ誉めでした。期待が高まります。

41歳の水沢佐知子は、8年前に精神科医の安西雄一郎と離婚して、高校生の文彦と二人で暮らしている。その文彦がある夜、ゴミを出しに行ったまま失踪した。そして翌日には、佐知子が関係を持っていた16歳年下の犀田が線路に転落死する。
雄一郎は亜沙美という元患者と再婚していたが、彼女は昔の暴行事件で精神を病み、その時妊娠した冬子という子供を産んでいた。その冬子は高校生になっていて、犀田ともつきあいがあった。

設定がややこしいのですが、沼田氏の文章がうまいのですらすらと読めてしまいます。佐知子の一人称で話が進むので、サスペンス感が強く出て、次の展開への期待が続きます。

文彦は生きているのか?犀田はなぜ転落したのか?

話が進むと、人間関係がさらに複雑であったことがわかってきます。そして最後の方で、意外な展開が二回起こります。

新人ということを考えると相当レベルが高い作品です。選考委員の唯川恵氏の言うように、「文章力で大賞を取った作品」と思います。

しかし、いくつか難点があります。
まず、一週間という短い時間の出来事なので、どうしても展開が大きくならずに、間延びするところがあること。次に、最後の近くで、ある二人の関係が判明するのですが、それが取ってつけたような印象があること。これは伏線が弱いせいだと思います。また、ある人物が犯人として佐知子らに罵倒されるのですが、それがどうにも救いがない感じなこと。

あと明らかなミスとして、文彦にとって犀田は「母親の不倫の相手」、との記述(p202)があります。しかし、二人とも独身なので全く不倫ではありません。
またP295からの10頁は、伝聞内容を三人称で書いていますが、急に会話が入ったりして若干気になるところがあります。わざとこういう書き方の効果をねらっているのかも知れませんが…。

サスペンス大賞としては文句ない作品だと思いますが、オチの整合性にこだわるミステリーファンにはちょっと物足りないかもしれません。
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by bibliophage | 2005-04-14 01:16 | ミステリ-
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