ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『グレアムヤング 毒殺日記』 出されたお茶が飲みづらくなる
d0018433_242491.jpg著者:アンソニー・ホールデン 
書名:グレアムヤング 毒殺日記
発行:飛鳥新社
戦慄度:★★★★★

11月はじめに世間を騒がせた静岡の女子高生の薬物投与事件。彼女の座右の書。

「おそらくぼくは彼らを人間として見ることをやめてしまったんだと思いますーというか、正確を期すれば、ぼくの一部がそうしたということですが。彼らはモルモットになっていたのです(本文より)」


「グレアム・ヤングの毒物歴:
0歳 生後3ヶ月で母結核で死亡。
2歳 父フレッド、モリーと再婚。
9歳 香水、マニキュアの瓶を集める。ナチ、黒魔術、犯罪などに興味を持つ。
12歳 化学・毒物学の専門書を読み漁る。愛読書『被告席の毒殺魔』。
13歳 薬剤店でアンチモンを購入。友人が腹痛、嘔吐を頻回に起こす。
   義母、体調をくずす。
14歳 姉、ベラドンナ中毒の症状。グレアム、タリウムを購入。義母、死亡。
   父も嘔吐・腹痛のため入院。父、グレアムを疑いだす。
   理科の担任がノートを見て、机の中の毒物に気づく。
   グレアム逮捕され、狂人犯罪者を収容するブロードムア病院へ送られる。
・・・・・・
23歳 品行方正な振る舞いにより刑期短縮で釈放。職業訓練所に通う。
   訓練所の友人が腹痛を起こす。
   光学器械製造メーカーに就職。グレアムお茶を配って歩く。
   グレアムの上司2人、腹痛・下痢・神経症状で入院し死亡。
   同僚2人は足の痛み・腹痛・脱毛を訴える。
   専門家は死亡した上司の症状を「タリウム中毒」と診断。
   グレアムの過去がスコットランドヤードに照会され、逮捕される。
・・・・・・
42歳 刑務所内で心臓発作により死亡。」

女子高生とグレアム・ヤングは、以前の薬物犯罪者を崇拝し、肉親をもモルモットとみなして毒物を投与した点はそっくりです。恐ろしいのは投与した相手に対し、憎しみの感情がないこと。淡々と毒を与えて平気な点です。まさに人格障害です。ヤングが初回に逮捕された時、鑑定した精神科医は「再犯の恐れが高いので早期に釈放してはいけない」と正しい判定をしていたのに、それはいつしかうやむやになってしまいました。女子高生の場合はどうでしょうか?

ヤングの逮捕が遅れた理由は、初回は「まさか14歳の子供が、肉親に毒物を投与することはない」と思われたこと、2回目は「風土病の感染症と間違われた」ことと「医者がタリウム中毒の症状を知らず診断ができなかった」ことです。
ヤングは自慢したがりの虚栄心を我慢できずに逮捕につながった点がありますが、もう少しクールだったらさらに被害者は増えていたことでしょう。

本書は事件直後の2~3週間前は品切れだったので図書館で借りましたが、現在増刷されているようです。チャールズ皇太子の伝記で知られるホールデン氏の出世作であり、訳もとても読みやすい。人間の心の闇を見つめることのできる本書は、一読に値すると思います。

1994年映画化されています。  
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by bibliophage | 2005-11-30 02:44 | 評論
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