ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『幸福な食卓』 あっさりしているようで深い話 
d0018433_1302020.jpg著者:瀬尾まいこ 
書名:幸福な食卓
発行:講談社
購入動機:他の本の記載から
不思議度:★★★★☆

書き出しはすべての小説において非常に重要です。読み手がそこで話に乗れるかどうか決まるわけですから。それにしてもこの1行目には参りました。

「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」

この不思議な出だしのせいで、一気に物語に引き込まれます。

登場人物が全員ユニークです。私:佐和子は優しいけれども大人のようにクールなところのある中学生。兄の直は勉強もスポーツも万能なのに、大学進学をやめて農業に従事する変わり者。父は自殺未遂をした後に教師の仕事を辞め、なぜか薬学部の受験生に。母は父の事件の後に家族3人と別居することになるが、いつも夕食を作りに来る。
この4人の家族を中心とする4つの連作です。

「幸福な朝食」では、本当は優しい転校生坂戸君が4ヶ月でまた転校してしまう。
「バイブル」では、失恋してばかりいる直に、新しいド派手な彼女(小林ヨシコ)ができる。一方、佐和子は高校受験の塾で、単純明快な大浦君と知り合う。
「救世主」では、同じ高校に合格した佐和子と大浦君は、いつの間にかつきあっていた。クラスで窮地に陥った佐和子は、大浦君のアドバイスに助けられる。

このあたりで、何か少女漫画の世界に入り込んだような気分になりました。不思議な家族の間の奇妙な関係の話が、大浦君の登場で急に俗っぽくなったように感じられたからです。しかし、それも作者の周到な計算によるものでした。
「プレゼントの効用」では、大浦君はクリスマスプレゼントを買うために新聞配達を始め、佐和子はマフラーを編みます。その後に、話が大きく展開します。

佐和子と直の会話がユーモアにあふれていて笑えます。
父の自殺未遂の原因とか、直が女の子にすぐ振られる理由とか、あまり詳しく書かれていません。佐和子の成長小説として続いていきそうなので、今後少しずつはっきりするのかもしれません。

全体にあっさりと書かれているのに深い味わいのある小説だと思いました。
(大浦君の手紙に「おれはそういうハイカラなのは苦手だ」とあるのは、最近の高校生に流行の言い回し?)
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by bibliophage | 2005-04-18 01:37 | その他小説
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