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ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『愛のひだりがわ』 筒井式ジュブナイル
『愛のひだりがわ』 筒井式ジュブナイル_d0018433_03504.jpg著者:筒井康隆 
書名:愛のひだりがわ
発行:新潮社(文庫)
成長度:★★★★☆

「時をかける少女」「富豪刑事」の筒井氏が描く少女の成長譚。

<母が死んで一人ぼっちになった小学生、愛。彼女は左手が不自由だが、犬と会話する力を持っていた。治安が悪くなった近未来の日本で、愛は失踪した父を探す旅に出る。少年サトル、犬のデン、ご隠居さん、詩人の志津絵さんらの助けを借りて愛の成長の旅は続く。>

殺伐とした世界における心温まる交流の話という対照性がいいですね。
左手の使えない愛(ちゃん)のひだりがわには必ず誰かがいて助けてくれる、というのがタイトルの意味です。

ジュブナイル(児童文学)らしく、殺人の場面もあっさりだし、愛ちゃんはいつも勉強してかしこくなっていくという教育的内容などを含んでいます。愛ちゃんの旅も、よく言えば展開が読めない、悪く言えば行き当たりばったり、に進んでいきます。

愛ちゃんたちが超音波でハマグリを取る場面がなかなか印象的でした。こういった絵が浮かぶようなシーンをつないでいくのはさすがに筒井氏の技だと思いました。また、戦闘シーンは得意なドタバタを避けて淡々と描かれています。

最後が類型的なパターンだったりと、気になるところもありますが、ジュブナイルということでさらっと読むのが吉かと思います。

虚人たち」との対比で語った村松友視氏による解説も読み応えがありました。
by bibliophage | 2006-08-23 00:42 | その他小説
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