ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『名もなき毒』 逆玉探偵、杉村三郎
d0018433_9261082.jpg著者:宮部みゆき 
書名:名もなき毒
発行:幻冬社
執拗度:★★★★☆

前作 「誰か」 に続き、好い人である三郎氏が活躍。

<青酸カリによる毒殺事件の4人目の被害者が出た。その家族と知りあうことになった杉村三郎はその真相を知りたいと考えはじめる。一方、彼の勤める編集部ではトラブルメーカーの女性が悪態をつきながら会社を辞めていった。>

489ページの重量級の本なので、電車で読むのには不向き。自宅で休みに読みました。

冒頭、いきなり殺人事件が起きて期待が高まります。が、すぐさま今多コンチェルンの会長の娘婿である主人公杉村氏の日常に話が移り、そのまま淡々と進みます。
結局のところ、全体的にはミステリー色は弱く、人間描写の深い物語になっています。

今回のNo.1キャラは編集部を辞めていった原田いずみ。職歴・学歴詐称、仕事能力なし、責任転嫁、暴力、キレやすい、粘着質。容姿についてほとんど言及されていませんが、おそらくある程度魅力的なのだと考えられます。これはボーダーラインの典型か、はたまた性格障害か?彼女の行動に関して、途中からネガティブな伏線が張られて、その通りに話が展開していきます。過去に兄の結婚式をぶち壊した話がとにかく強烈!でした。

その他、杉村夫妻をはじめ、殺された古屋明俊とその娘・孫(女子中学生)、ジャーナリストの秋山氏、など登場人物がバックストーリーを含めて丁寧に書かれています。
また、青酸カリの「毒」、人間の持つ「毒」、土壌汚染の「毒」、と毒からみで話をまとめ上げる落語的な上手さが感じられました。

表現としては、義父である今多会長の話にただうなづきながら、ふと、「それで、私という観葉植物の葉が揺れた」という杉村氏の心象の描写が巧みだと思いました。

真犯人はちょっと拍子抜けの感があるし、杉村探偵の人の好さ(と無神経さ)も鼻につくところがあります。また、容疑の浅い段階では家宅捜索しないだろう、とかミステリーとしてはツッコミ所が多そうです。しかし、人間の描き方の執拗さというのは一読の価値があります。「模倣犯」を期待しなければ、楽しめる作品だと思います。このシリーズはこういうtaste なのでしょう。
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by bibliophage | 2006-09-12 09:33 | ミステリ-
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