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ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『アフターダーク』 胎動のささやかな予兆の物語
『アフターダーク』 胎動のささやかな予兆の物語_d0018433_024572.jpg著者:村上春樹 
書名:アフタ-ダーク
発行:講談社(文庫)
表現力度:★★★★☆

(永遠の)ノーベル賞候補、村上氏2004年の作品。

<デニーズの店内で夜を明かそうとしていた浅井マリ。そこに姉のエリの友人高橋が通りがかって声をかける。彼の知り合いのカオルに頼まれて、マリは中国人娼婦の通訳をする。その娼婦に暴力を振るった白川は、夜中のオフィスで一人ソフトウェアのバグを直す。一方、エリは2ヶ月前から、彼女の部屋で死んだように眠ったままだった。>

大いなる物語の序章という感じでした。

相変わらず、会話が洒落ていて、比喩が特別に鋭くて、音楽の話が絶えず流れている、という春樹流世界が堪能できます。

高橋の会話が特に凄くて、例えば
「僕にはいくつか問題があるけど…あくまで内部的な問題だから、そんなにやすやすと人目につかれると困るんだ。とくに夏休みのプールサイドなんかでさ」
などというのは、読んでいて痺れてしまいます。現実にこんな物言いをする男がいたら、きっとモテモテですねw。
さらに、「世界中の電圧がすっと下降してしまった感じ」だとか、「新しい一日がすぐ近くまでやってきているが、古い一日もまだ重い裾を引きずっている」とか、渋い表現があちこちに認められます。自在の表現力でした。

お話としては、マリと高橋の今後、エリは目覚めるのか、白川の運命は、など謎が続出したまま夜が明けて、尻切れになってしまいました。続きはどうなっているのでしょうか?

ちょっと気になったのはコオロギという女性の話が説教臭いこと。また、関西弁を使わせるのはOKですが、「ぶちまけた話、…」という言い回しはしないですね。「ぶっちゃけた話」の関西訳のつもりでしょうが…。

ともあれ、ノーベル文学賞に一番近い日本人であることは間違いありません。受賞する日が待ち遠しいです。
by bibliophage | 2006-11-07 23:58 | その他小説
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