ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『弥勒の掌』 どんでん返し炸裂!?
d0018433_8532071.jpg著者:我孫子武丸 
書名:弥勒の掌(て)
発行:文芸春秋
新趣向度:★★★★☆

殺戮にいたる病』の著者 我孫子氏が13年ぶりに書きおろした長編ミステリー。

私立高校の数学教師 辻恭一。以前、教え子の女子生徒と問題を起こして以来、妻との関係は冷えきっていた。ある日帰宅すると、その妻が失踪していた。一方、こわもての刑事 蛯原の妻がラブホテルで殺されるという事件が起きた。この二つの事件には、新興宗教「救いの御手」が関係しているらしい。亡き妻の復讐を誓った蛯原は、辻と協力して犯人を探し出そうとする。

教師の章と刑事の章が交互に進行します。(これが実はくせもので…。)そこに新興宗教がからむという構図は、あるミステリーと瓜二つです。貫井徳郎『慟哭』。我孫子氏は『慟哭』の形式を借りて、全く異なる趣向を用意しました。

最後に二人は「救いの御手」の本部で教祖の「弥勒」と対面し、驚愕の真相が明らかにされます。
・・・びっくりした~。な、何それ~、という感じで、しばし動けず…。
馬鹿馬鹿しいミスリードには、腹は立たずに吹き出しました。そして交互の章をちょっと読み返しました。ふ~む、なるほど…。

巻末に著者インタビューが掲載されていますが、我孫子氏は「人物が描けていない」と言われるのが(その表現も含めて)気にさわるようです。この作品では対照的な二人、辻と蛯原の描写は行き届いていて、文章も読みやすく、その心配はないと思います。

ただ一つだけ問題なのは、この結末はone of themの可能性であって、必然性がない、すなわち伏線がほとんどないのが残念なところです。動機も弱いです。だから、本格ではありませんし、かと言って叙述ミステリーでもないのです。普通のミステリーでは何か書いておくべきところを、我孫子氏はわざとはしょっているのです。
なので、『慟哭』と比べると驚愕の余韻にひたる時間が短く、軽い印象を受けてしまいます。

とは言っても、考えてもみなかった結末で驚かせてくれたので、十分満足しました。新趣向はまずは成功と言えるでしょう。
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by bibliophage | 2005-06-11 09:00 | ミステリ-
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