ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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カテゴリ:ホラー/SF( 6 )
『独白するユニバーサル横メルカトル』 地図の独り言
d0018433_1403075.jpg著者:平山夢明 
書名:独白するユニバーサル横メルカトル
発行:光文社
衝撃度:★★★★★

「このミス2007」第1位に選ばれた短編集。

<・私は国土地理院発行の地図帳。タクシー運転手の先代に愛用され、その特別な「使命」にまでも密かに協力してまいりました。(表題作)
・ジャングルの中、覚醒剤の生産地へ一攫千金を狙ってやってきたヒロとドブロク。しかし原住民に捕まって、檻の中で絶体絶命の状況に。(「すまじき熱帯」)>

久しぶりに強烈無比な作品に出会いました。
はっきり言って気持ち悪くて、エグい!いったいこれのどこがミステリーなんだ!?

しかしそのキモさの中に、どうしても惹かれてしまう部分があります。
それは、地図が独白するという奇想であったり、人食いの怪物が持つ知性であったり(「Ωの聖餐」)、原住民の会話が変な日本語に聞こえるといったユーモアであったりするのです。

そういったギリギリのところで成立している短編集です。なので、多くの人(特に女性)にとっては生理的に耐えられない可能性があると思われます。
特に、「Ωの聖餐」「すまじき熱帯」「怪物のような顔の…」の3編は凄まじいので、要注意。

本の表紙もかなりインパクトがありますが、まさにこんな感じの内容。ライトノベルの対極に存在するようなダーク&ヘビーノベルです。これから読まれる方はKOされないように、ヘッドギアをつけてどうぞ。
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by bibliophage | 2006-12-28 01:48 | ホラー/SF
『パプリカ』 幻夢大戦
d0018433_0284499.jpg著者:筒井康隆 
書名:パプリカ
発行:新潮社(文庫)
迫力イメージ度:★★★★★

アニメ映画、ただ今公開中。

<精神医学研究所に勤める時田と美人セラピスト千葉。2人は、精神治療用機器を用いた分裂病治療の功績でノーベル賞候補にあげられていた。一方、副理事長の乾とその手下小山内は2人のことをねたむ。ある日、時田の開発した新しい治療機器「DCミニ」が盗まれた。それには夢と現実世界を混然とさせる危険な力が付随していた。千葉は美少女夢探偵「パプリカ」に姿を変え、乾の邪悪な企みに立ち向かう。>

これは面白いですねぇ。
てんかん協会との事件で断筆宣言する直前の作品とあって、分裂病の妄想の話などが全開で圧倒的なパワーで迫ってきます。
精神分析的世界観を借りたサイバースペースでの戦いがメインテーマになっています。

乾がどんどん悪性変異を重ねていって怪物化し、夢と現実がつながるようになって、妄想や魔物が出現するところはかなり不気味です。たくさんの日本人形が無表情に笑いながらふらふら歩いたり…。

また、美人研究者千葉と少女の姿のパプリカ、この2人(1人)のセックスアピールが強力です。アニメ映画でどこまで許されることやら…。

最後は夢世界での大戦にもつれこみます。そのドタバタぶりも筒井氏らしいし、イメージ描写能力も素晴らしいの一言です。

これは是非、アニメーションのパプリカに会いに映画館に行かなくては・・・。
→ 映画公式サイト
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by bibliophage | 2006-12-12 00:34 | ホラー/SF
『姉飼』 夏はホラー
d0018433_016273.jpg著者:遠藤徹 
書名:姉飼
発行:角川書店
異形度:★★★★☆

第10回ホラー小説大賞受賞の問題作。

「ずっと姉が欲しかった。姉を飼うのが夢だった。
脂祭りの夜、出店で串刺しにされてぎゃあぎゃあ泣き喚いていた姉ら。…」

(「姉飼」)

なぜかずっと積読でしたが、季節柄読んでみました。

出だしの2行からして上記↑のようですから、自信を持って薦められるシロモノではありませんw。
同志社大助教授でサブカルチャーに詳しい著者の渾身の作品。
かの直木賞作家朱川湊人氏の「白い部屋で月の歌を」も最終候補で、いつもハイレベルの争いになるホラー小説大賞でも特に力作ぞろいの回だったようです。

<子供時代に夜店で「姉」に惹き付けられた主人公は、中卒後、高価なそれを手に入れるために必死で働く。そんな彼の元に4体目の「姉」が届いた…。>

生理的嫌悪感をいだかせるような描写が続く中に、独特のユーモアや話のオチがはさまれており、すらすらと読めてしまいます。民間伝承モノ風のキワモノ新感覚ホラーという感じです。

他に「キューブ・ガールズ」:ウェブ時代のダッチワイフ?
ジャングル・ジム」:人間性あふれる?性格だったジャングル・ジムの変容、
妹の島」:果樹園で覆われた離れ島での惨劇、
の3編が収録されており、どれもアイロニカルで奇天烈な物語でした。

著者2作目の「弁頭屋」も面白かったので、次回作も大いに期待します。
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by bibliophage | 2006-08-01 00:14 | ホラー/SF
『陰陽師 付喪神ノ巻』 蘆屋道満先生登場
d0018433_1535757.jpg著者:夢枕漠 
書名:陰陽師 付喪神ノ巻
発行:文芸春秋(文庫)
癒し度:★★★★☆

夢枕氏の人気シリーズの3作目。

<安部晴明と源博雅の2人は、鬼のしわざによるいくつもの京の怪奇現象に遭遇する。管狐(くだぎつね)、生成(なまなり)、壬生忠見の霊、神泉苑の池の主など。そして、晴明のライバル、蘆屋道満も登場してくる。>

ここまでくるとこのシリーズも癒し効果が生じてきて、水戸黄門のようなワンパターンが何ともいえない心地よさを与えてくれますw。
中沢新一氏の解説にもあるように、晴明と博雅のコンビが絶妙であり、霊世界と現実が上手く交錯することで、新しい魅力を持った物語が作られています。
そのせいか、スプラッタ描写もある割には、あっさりと話が読めてしまいます。

「瓜仙人」「鉄輪」「這う鬼」「迷神」「ものや思ふと…」「打臥の巫女」「血吸い女房」の6編。
この中では、村上天皇の歌合せを題にした 「ものや思ふと…」 が圧巻でした。歌の優劣で敗れたショックで死んだ壬生忠見。なぜ彼は負けたのか?ミステリー仕立てになっているのも興味深い点でした。

陰陽師蘆屋道満先生が2作に顔を出します。この後、晴明の邪魔をする存在になっていくのでしょうね。
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by bibliophage | 2006-06-10 15:37 | ホラー/SF
『脳髄工場』 相変わらずの奇妙さ
d0018433_11175028.jpg著者:小林泰三 
書名:脳髄工場
発行:角川書店(文庫)
不確定性度:★★★☆☆

第2回ホラー大賞短編賞 『玩具修理者』 の小林氏の最新短編集。

1.「脳髄工場」: 近未来。最初は犯罪者の矯正のために装着が義務付けられていた「人工脳髄」だったが、社会の均衡と安定を保つために一般の人たちもほとんどがそれを頭につけるようになっていた。
2.「友達」: 小心者で苛められっ子の僕。あこがれの鮎川みちに好かれるために、僕は強い別人格である「ドッペル」を心の中に作り始めた。
他に「停留所まで」「同窓会」「鏡の国」「声」「C市」「アルデバランから来た男」「綺麗な子」「写真」「タルトはいかが?」の計11編。 

全編モノクロームの雰囲気を持つ小林ワールドが広がっています。
1.の表題作は、発想としては目新しくはないですが、人工脳髄を装着するのが散髪屋の親父の仕事だったりするところが面白い。坊主刈りされた頭に「脳髄」を力任せに押し込む、血と脳漿が飛び散る、といった描写がユニークでした。

小林氏の短編は、必ずシャープなオチが用意されているところに感心させられます。その主なパターンは、「主客の転倒」。「停留所まで」「同窓会」などがそれに該当します。

ホラーの他にSF的な作品:「C市」「アルデバラン…」etcも含まれており、小林氏は 『海を見る人』 で98年のSFマガジン読者賞を受けています。

また、量子力学の「観測問題」の話が2ヶ所に出てくるところが、工学部出身の小林氏らしいと思いました。

個人的にはなかなか楽しめましたが、全体を通して、ちょっとセンスが古いという印象を受けるかもしれません。(「C市」は斜め読みするのがよさそうです。)

小林氏HP
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by bibliophage | 2006-03-18 11:20 | ホラー/SF
『復讐執行人』 B級犯罪小説etcの人気作家
d0018433_885724.jpg著者:大石圭 
書名:復讐執行人
発行:角川書店(文庫)
カタルシス度:★★★☆☆

呪怨』 の原作者、大石氏による最新書きおろし。

33才の香月健太は家電メーカーのサービスエンジニア。仕事も見た目も平凡な健太だったが、美人の妻と二人の娘との生活は幸せそのものだった。しかし、ある夜家に忍び込んだ男によって家族は殺されてしまう。長い入院を終え、男に復讐することを人生の目的にする健太。そんなある日、また同一犯による殺人事件が起きた。

大石氏の作品で読んだものは 『殺人勤務医』 に続いて二作目です。特徴は、やはり残酷な場面の描写が際立っている点で、本作でも「世田谷一家惨殺事件」を思わせる香月家の事件の場面が容赦なく描かれています。また、男が犯行に至るまでの準備の周到さや、その引きこもり具合の描写なども、詳しく書かれています。ただし、今回の作品では期待されるカタルシスが最後まで得られません。それは、犯人が誰なのかという謎とからむせいもありますが、中途半端な印象を受けました。

後書きでも書かれているように、d0018433_8125648.jpg作者は「凶悪事件の加害者の主観で描く」という作品により認められてきたわけですが、今回「被害者の立場から書いてみようとした」とのことでした。しかし作者の特質からすると、「前代未聞の復讐劇」にした方がよかったのではないか、とも思いました。

『呪怨』以外に『オールド・ボーイ』の原作者でもある大石氏は、かなりのヒットメーカーです。この後、アンダーグラウンドからより日の当たる場所へ出てくるのか、興味があります。

あ、瀬尾まいこさんが好みという方などは間違っても読まないでくださいw。
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by bibliophage | 2005-08-02 08:24 | ホラー/SF