ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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カテゴリ:ミステリ-( 50 )
『マッチメイク』 プロレスミステリー
d0018433_6273816.jpg著者:不知火京介 
書名:マッチメイク
発行:講談社(文庫)
ギミック度:★★★★☆

第46回(2003年)乱歩賞受賞作。

「新大阪プロレスに入門した山田聡。ある夜、総帥のダリウス佐々木がタイガー・ガンジーとの流血試合後に死亡した。著書に遺書めいたことを書いていた佐々木は自殺したのか?その後、この事件を調べようとした別のレスラーもトレーニング中に亡くなった。山田は同期の本庄とともに真相を探る。」

不知火氏はミステリー新人賞でいつも最終選考に残っていた実力者で、ついに乱歩賞か、と受賞当時思いました。
受賞・出版当時の評判はもう一つだったようですが、今回文庫化されたものを読んでみたらなかなか面白かったです。

マッチメイク」とは、試合の筋書きを考えること。ショーとしてのプロレスの最も重要なポイントで、これが真相とからんできます。なかなかいいタイトルだと思いました。

主人公の山田、同期の本庄、山田を鍛える前座レスラー丹下、この3人は良いとして、他にいろいろ出てくるレスラーのキャラが少しわかりにくい感じはしました。それで、犯人を考えにくいという点が、ミステリーとしてはひっかかるかもしれません。

しかし、プロレス界の隠語の話やレスラーのトレーニングの内容などが詳しく書かれているのも、興味深い点です。流血におけるレフェリーの役割には唖然としました。

文庫463ページと長めですが、リーダビリティーは高くすらすらと読めました。プロレスアレルギーがなければ、読んでみる価値はあると思います。新奇性という点では同時受賞の「翳り行く夏」よりも高そうです。

2作目の歌舞伎ミステリー「女形」も力作でした。次作にも期待します。
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by bibliophage | 2006-08-30 06:37 | ミステリ-
『赤い指』 東野氏にしては…
d0018433_261720.jpg著者:東野圭吾 
書名:赤い指
発行:講談社
書き下ろし度:★★★☆☆

直木賞受賞後第1作となる長編書き下ろし…だそうです。

<中年サラリーマン松原昭夫は妻、中学生の息子、痴呆症の母と4人暮らし。妻と母の関係、ゲームオタクの息子など家庭の悩みは尽きない。そんなある日、妻の電話で早めに帰宅した昭夫を待っていたのは、少女の死体だった。>

今まで東野作品を読んでハズレたと思ったことはありません。で、この作品も面白いことは確かなのですが、少なくとも私にとって当りとはいえませんでした。
巻末を見ると「1999年「小説現代」に載った作品を元に書き下ろした」とのことです。イマイチなのはその辺の事情がからんでいるのか?

容疑者X…」と同じく犯人が前半でわかる倒序形式です。コロンボ役が所轄の加賀刑事。その引き立て役が甥である捜査1課の松宮。
さすがに東野氏だけあってリーダビリティーは高く、事件が起きるとあっという間に物語に引き込まれました。
赤い指」とは、化粧遊びで口紅がついた痴呆老人の指先のこと。痴呆と殺人事件がいったいどうからむのか?

う~む。ステレオタイプな人物、松原家の周りだけという小さな展開、中途半端なヒューマニズム、などがひっかかりました。最後に「赤い指」がらみで大技をかけてきますが、すっぽ抜けの印象。着想はさすがと思わせますが、全体的にはTVの2時間ドラマ風でした。

この作品に、いつもの東野氏のキレは期待し過ぎない方が良いかもしれません。
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by bibliophage | 2006-08-12 02:08 | ミステリ-
『無痛』 メディカル・ノワール
d0018433_1194284.jpg著者:久坂部羊 
書名:無痛
発行:幻冬社
暗黒度:★★★★☆

大阪大出身の医師・作家久坂部氏の三作目。
覆面作家かと思っていたら写真が載っているblogがありました。

<神戸の閑静な住宅街で、一家4人を襲った凄惨な殺人事件が起きた。その近くで粗末な診療所を営む為頼と、先端医療の病院の院長で天才外科医の白神。二人の対照的な医師に共通する点は、患者を診るだけで余命がわかる力だった。臨床心理士の菜見子、その元夫でストーカー行為を続ける佐田、そして白神の患者で痛覚が先天的に欠如した伊原。彼らの間の複雑な関係によって、新たな事件が発生していった。>

またもや衝撃作登場。
私はこういうのも好きですが、一般的にオススメかは疑問w。
同じ医師作家でも『チーム・バチスタ…』の海堂氏なら、久坂部氏は明らかに。この作品からも、オドロオドロしさが立ち昇ってきます。
途中に「カタルシス」を通り越してしまうエグい場面が登場しますので、要注意。この辺が作者の真骨頂でもあるのですが…。

為頼と白神。二人の医師の超診断力はなかなか面白い発想なので、その力比べになるのかと思うと、さにあらず。
最大のインパクトは無痛症のキャラ伊原でした。ちょっと『脳男』を思い起こしました。忘れられない名文句…「時間です」。

医学ミステリーとして、保険の混合診療の問題や刑法39条の心身喪失の問題なども作品中に取り上げています。特に後者は、メインプロットの一つ。
しかし、「生来犯罪者説」や「犯罪者に共通する外見的特徴」はさすがにアウト・オブ・デートで、小説とは言え、かなりつっこまれそうな所だと思われます。
triviaとして、「為頼は亡き妻のガンをなんでもっと早期に見つけられなかったんじゃ!」と書いておきます。超診断力の限界なのか?

厚い本(508ページ)ですが、すらすらと読めました。リーダビリティの高さはさすがです。最後が to be continued になっており、ターミネーターは帰って来そうです。怖っ…。
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by bibliophage | 2006-05-22 01:23 | ミステリ-
『月の扉』 月の扉は閉ざされたまんま
d0018433_2029740.jpg著者:石持浅海 
書名:月の扉
発行:光文社(文庫)
幻想度:★★★☆☆

扉は閉ざされたまま』の石持氏の2003年作品が文庫化。「このミス」8位。

<沖縄で子供を癒すキャンプを主催する石嶺。彼を師匠と仰ぐ柿崎、真壁、と村上聡美。ある日、石嶺が無実の罪で逮捕された。その救出のためにハイジャックを決行した3人。しかし、機内では予期せぬ殺人事件が起きる。>

『扉は…』がいたく面白かったので、迷うことなく購入。

まず、「師匠を救うために、ハイジャック」…この発想がぶっ飛んでいます。もちろん、ある理由で時間的切迫があったからこそなのですが…。この辺は、意外にも読んでいて違和感なく進めました。作者の語り口がうまいからでしょう。
次に、「ハイジャックの機内で別の事件」。これも意外性が面白い。乗客の中から名探偵役が出るのもユニークで、その論理性は『扉は…』に通じるものがありました。その死体の利用法は想定通りでした。
この本格推理とパニックものを合体させた発想と手腕はさすがと思いました。

が、ちょっと気になる点が散見。
石嶺の逮捕理由、機内での殺人事件のオチ、ラストのドタバタ、などがそうです。
本格推理というのはよく考えると不自然で馬鹿馬鹿しいものなので、いかに他の点でそれをカバーしきれるかということがポイントと思います。
その点、この作品は、読後にその馬鹿らしさが完全には払拭できませんでした。

ということで、『扉は…』に至るまでの習作という印象でした。
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by bibliophage | 2006-05-03 20:34 | ミステリ-
『K・Nの悲劇』 タイムリミット・幽霊・サスペンス
d0018433_23563697.jpg著者:高野和明 
書名: K・Nの悲劇
発行:講談社(文庫)
娯楽度:★★★★☆

「13階段」の高野氏の三作目。

夏樹果波は幸せの絶頂にあった。フリーライターの夫の本がベストセラーになり、高級マンションに引っ越すことになったからだ。しかし、ここで果波は妊娠してしまう。夫の修平は、経済的理由から中絶を望んだ。するとその後から、果波にもう一人の人格が現れてそれを拒むようになった。これは精神疾患か、それとも憑依現象か?修平はその解明を、精神科医の磯貝に依頼した。

相変わらずリーダビリティが高くて、なかなか読む手が止まりません。
ポイントは、果波の状態は病気か霊障か、その一点です。純粋な精神疾患とする磯貝の意見と、霊のしわざだと思う自分の考えの間で、修平が右往左往するところが一番面白いところでしょう。
霊をビデオに収めようとしたり、真っ暗な神社の中を真夜中に歩いていったりするところは、かなり怖いです。

途中からタイムリミット・サスペンスになるところがまた上手い。元映画スタッフだけあって、この人の作品は本当にイメージが浮かんでくる面白さです。
最後がこういう感じで終わるのは、個人的にはあまり好きではありませんが…。

一種のホラー小説を、母性の問題と真面目に絡める、というのもなかなかできることではありません。超一流のエンターテインメント作家だと再認識しました。
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by bibliophage | 2006-02-18 23:58 | ミステリ-
『丑三つ時から夜明けまで』 ゴーストバスター・ミステリー
d0018433_028636.jpg著者:大倉崇裕 
書名:丑三つ時から夜明けまで
発行:光文社
本格度:★★★☆☆

このミス2002、2004にランクインした大倉氏の変化球的ミステリー。

「幽霊は一種のエネルギー体である。…どんな厳重に警備された所でも…入っていける。幽霊の手にかかれば、どの様な不可能犯罪も簡単に犯せてしまう。(本文より)」

いや、アイデアは面白いんですけど…。
5つの短編とも、出だしは本格風の殺人事件が発生。
密室犯罪で解決法がなくて、じゃあ犯人は幽霊だということになり県警捜査五課が召集される。五課の面々は、黒ずくめの警部補に加え、白装束、怪僧、人形を抱いた少女など、霊的能力を持つ異様な人物ばかり。
その後、捜査一課と五課が言い争ってトンチンカンな方向に行きそうなところを、強い霊感を持つ一課所属の主人公が、両課の板ばさみになりつつ、解決の方向に導いていくという構成です。

サクサクと読めるのですが、途中でちょっとワンパターンが辛くなってきます。幽霊の捕獲の道具が、昔の「ゴーストバスターズ」と同じような吸引機というのも古臭い感じ。あと、五課のメンバーのキャラと行動も、七種警部補以外は淡白な印象を受けました。
ただ、大幅に加筆したというだけあって、5つ目の「最後の事件」では、少し趣向が凝らされていました。

このミス2004で14位だった『七度狐』は未読ですが、読むべきなのかどうなのか…。
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by bibliophage | 2006-02-09 00:29 | ミステリ-
『チーム・バチスタの栄光』 驚きの医学ミステリー!
d0018433_945512.jpg著者:海堂尊 
書名:チーム・バチスタの栄光
発行:宝島社
完成度:★★★★★

第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

東城大医学部心臓外科の桐生助教授は心筋症オペの世界的権威。神業をもつ彼が率いるチーム・バチスタは驚異的な成績をあげていた。しかし突然、このチームの手術において連続する死亡事故が起きた。その原因を突き止めるため、病院長の高階は、神経内科の万年講師田口に調査を依頼する。

こ、これは、面白すぎます。
最終選考で、数十秒で満場一致の決定をみた、というのも首肯できます。

手術室という密室で起きた連続死亡という謎の提出から、一気に内容に引き込まれ、田口講師という性格が良く凡庸に見えて、実は鋭いキャラクターが前半の物語を導いてくれます。さらに、途中から出てくる厚生労働省官僚白鳥の強烈な存在感で、あっという間に最後まで引っ張っていきます。

無駄な描写がほとんどない高い密度で、はっとするような比喩もあり、ユーモアもちりばめられています。白鳥の遠慮ない発言に思わず爆笑。彼が医師免許を持っているという設定も、謎解きのところで効いてきます。
さらに、著者が医者でなくては書けない緊迫の手術場面(10章)。それにリスクマネージメント委員会での息詰まるやりとり(13章)が、文句なく素晴らしい。

また、小児例での死亡が起きない理由など、細かい所まで考え抜かれています。振り返れば、ミスリードも巧みになされていました。
白鳥に主役の座を奪われた形の田口にも、最後に大きな見せ場が与えられるところなど、本当に上手いな~、と感心しました。

動機がどうとか、解剖すれば…とかいうケチはこの作品の完成度の前にはtriviaに過ぎないでしょう、…って久々にベタほめになってしまいました。

「このミステリーがすごい!」大賞も、『4日間の奇跡』の映画化など確実にその存在感を増してきていますね。
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by bibliophage | 2006-01-28 09:47 | ミステリ-
『痙攣的』 聞きしに勝るバカミス
d0018433_265321.jpg著者:鳥飼否宇 
書名:痙攣的 モンド氏の逆説
発行:光文社
驚愕度:★★★☆☆

『死神の精度』 と並んで「このミス2006年版」12位!

長身を黒装束に包んだサブカルチャー評論家、寒蝉主水(ひぐらしもんど)。彼のいるところには事件が起きる。 1. 80年代に「殺人ライブ」をおこなった伝説のロックバンド「鉄拳」。今、その事件の謎が解き明かされる。(「廃墟と青空」) 2. アートイベント「カーニバル」に参加した4人の芸術家。パーティーの最中に舞踏家の堀賀が死んだ。これは自殺なのか?(「闇の舞踏会」) 3. イリュージョンアーティスト栗須賀が日本海の孤島へジャーナリストたちを招待した。雷を使ったパフォーマンスの後で起きた惨劇とは?(「神の鞭」)。

なんじゃ、こりゃ~。
上記の3つの短編に寒蝉が登場し、アイダアキラという人物も現れます。この3編はすべて本格の味付けがなされていますが、完全に解決しないまま次に進んでいきます。3編とも興味深いストーリーで、特に「神の鞭」が面白い。いったいこれをどういう風にまとめてくるのか、興味津々で次の「電子美学」「人間解体」に進むと、そこに待ち受けていたのは…。

怒らない、イカらない…。1~3の精密な筆致からは想像できなイカ、やっぱりこの展開は…。 『クラインの壷』 を連想させるイカの話になります。
驚天動地のバカミスとでも言うべきか。
かの霞流一の存在が見事に霞むできばえで、問題作という言い方がピッタリ。万人にオススメとは言えませんですねぇw。
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by bibliophage | 2006-01-14 02:09 | ミステリ-
『少女には向かない職業』 小娘ハードボイルド
d0018433_10533033.jpg著者:桜庭一樹 
書名:少女には向かない職業
発行:東京創元社
クール度:★★★★☆

「このミステリーがすごい2006年版」第20位。

中学2年生の大西葵は学校では冗談好きな明るい少女。一方家では、母、アル中の義父と鬱屈した暮らしを送っていた。そんな時、クラスでは目立たない宮乃下静香と友人になる。ある日、静香の考えたいたずらのせいで、人が死ぬハメに。実行犯となってしまった葵に静香はつぶやいた。「あたしも殺したい人がいるから、今度は協力してね」と。

なかなか面白いです。
外面とは異なり、内省的な性格の葵の一人称で、中学生の女の子同士の会話や行動が、とても鮮明に描写されています。葵の気持ちの移り変わりがとても自然に受け止められます。下関の島の風景も、目に浮かぶように描かれていました。
この段階で、ライトノベルではなく「初の一般向け作品」という触れ込みにウソはないと思いました。
後半、静香の告白の後から、何が真実なのかが判然としなくなってきます。「わらの女」の引用で、よけいわからなくなり、一気にクライマックスの巨大迷路の場面へ…。
1件目は殺人というより事故ですが、2件目は立派な事件です。
どうなることかと思ったら、ああ、そういう結末なんですね…。まあ、これも1局というところでしょうか。

特に前半の描写力には感心しました。桜庭氏は少女の気持ちがよくわかるようです。(←あ、すみません、女性作家だったのですね…。)
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by bibliophage | 2006-01-03 10:56 | ミステリ-
『扉は閉ざされたまま』 新しい探偵小説の形
d0018433_9331150.jpg著者:石持浅海 
書名:扉は閉ざされたまま
発行:祥伝社
緊迫度:★★★★★

このミステリーがすごい2006年版、第2位!

大学のサークルの同窓会が成城のペンションで開かれた。集まったのは、伏見、新山、安東、石丸の男4人と五月、礼子、優佳の女3人。盛り上がった会の最中に、密室殺人が起きる。完璧と思われた計画だったが、扉について呈された疑問から歯車が狂い始める。

これは面白い。「このミス」2位納得です。
同1位の 『容疑者Xの献身』 と同じく倒叙形式で、探偵役が犯人を論理的に追い込んでいきます。手に汗握る心理的攻防戦が、二人の間で繰り広げられます。
三人称と犯人の一人称を交互する文体が、緊迫感を盛り上げて、ページをめくらせます。その結果、犯人に感情移入するという不思議なことになってしまいます。

動機については少しナイーブだと思いましたが、それを気にさせない展開の見事さでした。
ラストの閉め方もユニークだと思いました。
新しいテイストの探偵小説の誕生という感じです。
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by bibliophage | 2005-12-21 09:36 | ミステリ-