ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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カテゴリ:ミステリ-( 50 )
『誰のための綾織』 Part2 無断引用?はたまた剽窃?
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(今回の盗作疑惑事件の経過)
1. 1973~81年 三原順氏「はみだしっ子」シリーズ「花とゆめ」に連載。
2. 1995年 三原氏 病没。

3. 2005年5月 飛鳥部勝則氏『誰のための綾織』原書房より出版。

4. 7月2日 blog 「万華鏡日記」にて「引用疑惑」についての記事。
これがnet上では初めての指摘と考えられている。

5. 9月25日 上記とは別に「類似点」に気づいた某氏が出版社にメール。
6. 10月22日 某氏、net上に「類似点」を公開

7. 11月7日 原書房、絶版のお知らせ。
8. 11月8日 ニュースに流れる。
(飛鳥部勝則さんの小説「漫画と類似」 絶版・回収に)asahi.com
原書房(東京都新宿区)は7日夜、同社が今年出版した飛鳥部勝則さんの小説「誰のための綾織(あやおり)」の中に、故・三原順さんの漫画「はみだしっ子」(白泉社)に類似した表現が十数カ所あったとして、「誰のため~」の絶版・回収を決め、同社のホームページにおわびを掲載した。
9月に、読者からとみられる指摘のメールが同社に届き、社内で調査し、飛鳥部さんにも確認した。ホームページには「素材カードに該当部分が紛れ込んでしまった」との著者の見解を載せた上で、「『許可を得ずに一部表記を引用した』と判断した」としている。

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この記事では「万華鏡日記」さんの指摘箇所のうちのいくつかを、右「はみだしっ子」左「~綾織」の対比で示します。

こういった「類似」が10数箇所以上。細かい表現を変えてはいますが、これはもう明らかですね。「素材カード」云々の言い訳も虚しい…。さらに最近、本人の無反省なコメントがupされたのにはあきれました。

「~綾織」の最初の部分には、作家飛鳥部氏のことばとして、
もう創作意欲など、どこかへ吹き飛んでしまいましたし
の記述がありました。これは非常に象徴的なつぶやきに思えます。
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by bibliophage | 2005-12-13 01:26 | ミステリ-
『誰のための綾織』 Part1 本格の最果て
d0018433_21372671.jpg著者:飛鳥部勝則 
書名:誰のための綾織
発行:原書房
本格度:★★☆☆☆

盗作騒ぎで絶版になったので図書館で借りました。

編集者が作家の飛鳥部と話をしている。そこから教え子の書いた作品「蛭女」の話に入っていく…。
「私(鹿取モネ)は高校の友人(由香里、智子)や教師とともに誘拐され、小島に連れてこられた。その島には、以前自殺した同級生(瞳)の父親と兄がいた。そして連続殺人が起きるが、犯人はいったい誰なのか?」

最初の会話の部分でミステリーの禁じ手の話になり、それが伏線?にもなっています。
それにしても、ここまでやらないと新味がでないとなると、本格も行き着くところまで行ってしまったのだなあ、と思います。

作中作の「蛭女」は、おどろおどろしさやスプラッター部分に見るべき点があり、また飛鳥部氏の文章は非常に読みやすいと思いました。

しかし、このオチは大概の読者が「何じゃそりゃ」と思うでしょうし、ひょっとすると壁に投げつける人もいるかもしれません。最初から最後までミスリードとも言え、カタルシスは得られないのではないかと危惧します。

ちなみに「綾織」は「文章を紡ぐ」の意味で、タイトルも伏線の一環と考えられます。

なお盗作疑惑の部分はあらすじと密接には関係しません。それに関してはPart2で。
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by bibliophage | 2005-12-11 21:41 | ミステリ-
『このミス2006』 東野圭吾!
d0018433_23545940.jpg書名:このミステリーがすごい2006年版
発行:宝島社

シーズン恒例、宝島社の2005年出版ミステリーベスト10が発表されました。










(国内編)
1. 容疑者Xの献身東野圭吾 ←ぶっちぎりの首位でした!
2. 扉は閉ざされたまま:石持浅海
3. 震度O:横山秀夫
4. 愚か者死すべし:原尞
5. 神様ゲーム:麻耶雄嵩
6. シリウスの道:藤原伊織
7. ベルカ、吠えないのか?:古川日出男
8. 犬はどこだ:米澤穂信
島崎警部のアリバイ事件簿:天城一
10. うたう警官:佐々木譲
最後の願い:光原百合

以下既読書
12. 死神の精度:伊坂幸太郎 … 19. 弥勒の掌:我孫子武丸 …
21位以下
   天使のナイフ:薬丸岳 魔王:伊坂幸太郎
   九月が永遠に続けば:沼田まほかる ルパンの消息:横山秀夫 …
 
帰りに書店に寄って、20位 少女には向かない職業:桜庭一樹 を購入しました。
17位 モーダルな事象:奥泉光 は読みたいのですが分厚過ぎて断念。
あとは2位の 扉は… と同点12位の 痙攣的:鳥飼否宇 を読んでみたいと思います。
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by bibliophage | 2005-12-09 23:57 | ミステリ-
『鎮火報』 情報としては面白い
d0018433_0201496.jpg著者:日明恩(たちもりめぐみ) 
書名:鎮火報
発行:講談社
くすぶり度:★★★☆☆

『それでも、警官は微笑う』で第25回メフィスト賞を受賞した日明氏の作品。

不法滞在外国人のアパートばかりを襲う不審な火事。新米消防士の大山雄大は、知り合いの資産家、守らの力を借りて犯人を追う。

消防士の仕事・日常生活が細かくわかるというユニークさがあり、キャラクターも立っています。
雄大:主人公。不良あがりでいい加減だが、熱血漢です。
守:中年の謎の金持ち。盗聴などの情報収集力あり。
仁藤:雄大の幼なじみにして先輩消防士。マジメで自他ともに対し厳しい。

設定は結構面白いのですが、いかんせんリーダビリティが低い。雄大の一人称で、不良っぽさを強調するためのふざけた物言いや、多用される体言止めがうるさい印象です。最初の部分で慣れるまでは、何回か挫折しそうになりました。ノベルス版で分厚いし…。

真犯人とその動機については、あまりぱっとしない感じがしました。ミステリーというよりエンターテインメント情報小説という方が正しいでしょう。外国人の問題についてはよくかかれていると思いました。ニャン救:ネコを救う仕事、というものもあるのには笑いました。

続編を意識して守についての謎がそのままになっているのも、(私にとっては)ネガティブでした。シリーズ新刊『埋み火』が出ていますが、現在のところまだ食指が進みません。
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by bibliophage | 2005-11-24 00:44 | ミステリ-
『女形(おんながた)』 乱歩賞作家 X 歌舞伎 
d0018433_23462177.jpg著者:不知火京介 
書名:女形
発行:講談社
伝統芸能度:★★★★☆ 

『マッチメイク』で2003年乱歩賞を受賞した不知火氏の長編2作目。

歌舞伎役者、茗荷屋の松之助、松次郎親子が同じ日の舞台中に死亡した。自殺なのか、事件なのか。桔梗屋 半四郎の弟子である大部屋役者、堀内すみれは残されたメモからその真相を推理する。


受賞作の評判はもうひとつだったようですが、これは相当な力作です。
歌舞伎の演目の内容、役者の生活、京都の風景などがこと細かく描写されており、感心しました。著者の歌舞伎に対する知識はハンパではありません。

内容的には、ある医学的欠陥と血液型の謎、それに歌舞伎の芸や血筋をからませた筋書きで、本格度は高くありませんが、興味深く読ませます。すみれの兄弟子やんま、梨園の問題児山中信十郎、米国人役者青松などの登場人物も魅力的です。
比喩が歌舞伎の言葉から取られているのも新鮮でした。例:こめかみに筋隈のような太い血管を浮かび上がらせ…、兄さんの顔が鳴上上人みたいになったので…。

ただ、歌舞伎役者の家系図を入れた方が明らかにわかりやすいでしょう。血液型の話は図を自分で書かないとよく理解できないハズです。

本作が一般受けするかどうかはわかりませんが、歌舞伎に少しでも興味がある人はきっと楽しめると思います。
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by bibliophage | 2005-10-22 23:49 | ミステリ-
『容疑者Xの献身』 オタクの深情け
d0018433_80917.jpg著者:東野圭吾 
書名:容疑者Xの献身
発行:文芸春秋
叙述度:★★★★★

何を書いてもはずさない東野氏の新刊は、物理学者VS数学者の知恵比べ。

金をせびりにきた昔の夫を殺してしまった母と娘。母の方に好意を持っていた隣人、数学教師の石神はそれを知り、死体処理と事件の隠匿を図る。石神の大学時代の友人、物理学者の湯川は、その事件の裏に隠された真相を推理する。


相変わらずページをめくらせる手腕がすごく、時間を忘れて読んでしまいました。
犯人がわかっていてそれを追い詰める倒叙の形式で、湯川博士がまさに刑事コロンボの役割です。元夫の描写を読んでいると、殺されてしかるべきひどい奴だな、と思えるし、母親が昔の知り合いの男性とデートしたりすると、よくそんなことができるな、と腹が立ってくる、という具合でいつのまにか感情移入してしまいます。

石神のしくんだ母と娘のアリバイ工作について考えていると、完全にこちらまでだまされてしまいました。一種の叙述トリックともいえるでしょう。

そのトリックとからむ真相についてですが、「やはりそこまではやらないだろう」というのが一点。それと、「与えられた資料だけからは、(物理的に)湯川博士は真相に到達し得ないだろう」、というのが一点。以上が若干引っかかったポイントです。後期クイーン問題みたいな話なので、言うだけヤボかもしれません。

真相がすごくて完全に想定外だったので、やられた感は相当強かったです。
『白夜行』 『超・殺人事件』 についで、(今のところ)三番目に気に入った東野作品でした。
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by bibliophage | 2005-10-19 08:07 | ミステリ-
東野圭吾 作品 のお気に入り
トラキチさんの 東野作品 My Best 3(延長されたしめきりの直前!)への投稿記事です。

d0018433_03550.jpg1. 『白夜行
はじめて読んだ東野作品でした。トラウマを抱えた少年と少女による犯罪。
緊迫感に満ち満ちた展開とそれにぴったりなクールな文章。最後までノンストップで読みました。着ぐるみの格好での最期はちょっと哀れだったなぁ。
この作品の直後に内田康夫氏の『遺骨』を読もうとしたら、あまりにもヌル過ぎて序盤で投げ捨てた記憶があります。
この投票でもやはり堂々の1位ですか…当然でしょうね。

d0018433_032075.jpg2. 『超・殺人事件
知的ゲームの作品集としてこれもとても気にいっています。特に「超犯人当て殺人事件」に感動。作中作の犯人を推理させられる編集者たち。その叙述トリックもびっくりしたし、メタ構造にも驚いた。「超読書機械殺人事件」も面白かった。この作品中の自動書評機械、ショヒョックスについて、評論家が皆、判で押したように「私もこんな機械が欲しい」という感想を書いていたのが情けなかった。

3. 1&2に比してこれはというものが浮かびません。
  というか何をよんでもはずれナシなのですが…。

今までに『パラレルワールドラブストーリー』 『名探偵の掟』 『怪笑小説』 『秘密』 『片想い』 『さまよう刃』などを読みました。
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by bibliophage | 2005-10-13 00:06 | ミステリ-
『白い部屋で月の歌を』 イメージが斬新なホラー
d0018433_941795.jpg著者:朱川湊人 
書名:白い部屋で月の歌を
発行:角川書店(文庫)
不思議イメージ度:★★★★★

直木賞を受賞した朱川氏のホラー短編集。表題作は第10回日本ホラー小説大賞短編賞。

私たちの仕事は除霊。先生が地場についた霊をはがして、私の心の中の「白い部屋」へと連れて来る。そのあと、そこから「鉗子」で引っ張り出して位牌や石の中に封じ込めるのだ。でも私は自分の過去についてはよく覚えていない…。(『白い部屋で…』)

東京から地方の山の町に引越してきた雅彦と昌子。何も娯楽がないところだったが、そこに住む人々は、なぜか皆とても親切だった。丘の上にはL字型の鉄柱が立っていたが、二人にはその用途がわからない。ある日、一人の老婆が自殺し、遺書として歌が書かれた紙が残されていた。(『鉄柱(クロガネノミハシラ)』)


朱川氏は同時期に、ホラー小説大賞(本作)とオール読物推理新人賞(『フクロウ男』)を受賞しています。後者を読んで、不思議なイメージが浮き上がってくる文章の上手さに驚いた記憶があります。今回本作を読んで、瞬く間の直木賞も、むべなるかなと思いました。

『白い部屋で…』 『鉄柱』 とも設定はよくあるパターンです。前者は地縛霊を取り除く話。後者は一見平凡な地方の町に隠される謎について。しかし朱川氏のイメージの発想と描写力がすぐれているので、表紙にも書かれているような「白い部屋」から「鉗子」で霊を抜き出すとか、丘の上にそびえる鉄柱などの絵が目の前に浮かんでくるようです。さらに冒頭から出された謎:「私は何者なのか?」「鉄柱の用途は?」、があるため、先が知りたくて読み進んでしまいます。この作者の本質は、やはりこういった霊とか因習とかがからむ少し不思議な世界観の物語なのだと再認識しました。
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by bibliophage | 2005-09-17 09:06 | ミステリ-
『天使のナイフ』 けなすのが難しいハイレベルの作品
d0018433_19204057.jpg著者:薬丸岳 
書名:天使のナイフ
発行:講談社
綿密度:★★★★☆

第51回江戸川乱歩賞受賞作。著者は脚本家。

4年前妻を殺したのは3人の中学生だった。桧山は少年法に守られた彼らを憎み続ける。そんなある日、桧山の職場の近くで加害者の1人が殺害された。嫌疑を受ける桧山。続いてもう一人が、混雑した駅の桧山の近くで線路に突き落とされた。犯人は誰なのか?調べを続ける桧山の前に、妻の事件の隠された真相が徐々に明らかになってくる。

緻密にプロットが作られていて、それが無理なくつながっていて、文章も上手い。これは最終審査で満場一致で選ばれるのもうなずけます。こんな作品と比べられた他の候補者は不運だったというしかありません。

選考委員のあとがきにも書かれていますが、少年犯罪の問題だけでなく、贖罪にまで踏み込んでしっかり書かれているところが凄い点です。ある意味、東野圭吾の『さまよう刃』を超えています。普通は被害者の苦しみとその復讐を主点に、カタルシスを追及する形になるところですが、プロットが三段階くらいになっているので、それで終わらない工夫が施されています。

しかしさすがに東野圭吾の作品の方が面白いのは、本作はけれん味がないというか、真面目すぎるというか、そこまでは求めすぎだと思いますが…。
乱歩賞受賞作で読んだものでは、個人的には 『Twelve Y.O.』 『脳男』 『滅びのモノクローム』よりは明らかに上の作品だと思います。
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by bibliophage | 2005-09-03 19:24 | ミステリ-
『誰か somebody』 誰にでも失敗作はある…
d0018433_2181690.jpg著者:宮部みゆき 
書名:誰か somebody
発行:光文社
緊迫度:★★☆☆☆

国民的作家宮部みゆき氏の2003年作品がノベルス版で登場。

今多コンツェルン会長の専属運転手梶田は自転車に轢き逃げされ、頭部打撲で死亡した。その二人の娘は、犯人を捕まえるにはどうすればよいか色々と考える。今多会長は、義理の息子である杉村に相談に乗るように依頼した。杉村が梶田の過去を調べていくと、隠されていた事実が浮かび上がってきた…。

書店に平積みにされていた新刊の中で、この本の減りが一番目立っていました。やはり人気ですね、宮部みゆき。

今多会長の娘婿、逆玉に乗った杉村が探偵役ですが、これが根っからの善人で、前半は彼のペースで話が淡々と進みます。宮部氏得意の几帳面な説明調なのですが、話に緊迫感がないので、やたらとノリが悪い感じ。文章はすらすら読めるので、ページは進むのですが、展開が小さいというか、あまり事件が起きないというかで、後半もそのまま進んでしまいます。
さすがに最後にオチがあり、伏線をたどればなるほどそうなのね、と思うのですが技がショボイ印象で、びっくりしません。
各人物の背景などはよく考えられているとは思いましたが…。

期待して買ったら外れると思います。『RPG』も私はイマイチと感じましたが、あれに近い印象。淡々と進んで「家族とは何か」を考えさせられる、みたいなのが好きな方は楽しめるかもしれません。私はダメでした。探偵役が原因かなぁ…。
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by bibliophage | 2005-08-27 21:10 | ミステリ-