ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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カテゴリ:ミステリ-( 50 )
横山秀夫作品 のお気に入り
d0018433_720101.jpgトラキチさんの 横山作品 My Best 3 への投稿記事です。

1. 『第三の時効
三人の強行犯捜査課長、朽木、楠見、村瀬の特長を書き分けてしのぎを削らせるという構想と筆力が凄く、「第三の時効」という 『ナニワ金融道』 を思わせるアイデアに感心しました。

d0018433_7205231.jpg2. 『動機
警察手帳が大量になくなったり、裁判官が居眠りをして窮地に陥ったりという設定が面白い4つの短編集。

3. 『震度0
ネット上の評判は芳しくない警察内部ドロドロ小説。誰も入れないと思われるので逆張りで一票。週間文春最新号に書評あり。
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by bibliophage | 2005-08-18 07:25 | ミステリ-
『震度0』 ドロドロの警察小説
d0018433_875173.jpg著者:横山秀夫 
書名:震度0
発行:朝日新聞社
内部抗争度:★★★★☆

横山氏にしか書けない警察小説の最新刊。

阪神・淡路大地震が起きた日にN県警の警務課長が失踪した。以前の県議選とのからみか、それとも女性問題か。キャリアの本部長・警務部長、ノンキャリアの刑事部長らがお互いの利害・思惑の下、真相解明にしのぎを削る。

完全警察内部小説といってよい内容で、失踪したのが警務課長の不破。関係する主要幹部(巻頭に表あり)が上から順に、
キャリアの椎野本部長・冬木警務部長、準キャリアの堀川警備部長、ノンキャリアの藤巻刑事部長・倉本生安部長・間宮交通部長となっていて、他の登場人物もほとんどが警察関係者です。
部長の中でまともなのは震災被害にかかわる堀川だけで、あとの5人は自分の保身のために、部長会議でも情報を共有せず、少しでも有利な展開になるよう、くっついたり離れたりして争うことになります。
また全員が公舎に住んでおり、妻通しの人間関係もからんで、ドロドロの愛憎劇が繰り広げられます。
このドロドロの評判はあまりよくないようですが、私は嫌いではありませんw。

N県警内部を知り尽くしていないと書けない内容で、部長間の駆け引きがとにかく面白い。優劣が一瞬にして入れ替わり、先の読めない展開をします。現実にはあり得ないでしょうが、キャリア通しで罵倒しあったりもします。

横山氏の作品ではいつもオチで違和感を覚えるのですが、本作ではそれはありませんでした。気になったのは、①震災と事件の関係性と②倉本の設定がちょっとやり過ぎ、の2点です。
個人的には、横山作品の中では 『半落ち』 『ルパンの消息』 よりも気にいっています。
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by bibliophage | 2005-08-10 08:09 | ミステリ-
『タイムスリップ森鴎外』 馬鹿馬鹿しい!…しかし、面白い
d0018433_2053716.jpg著者:鯨統一郎 
書名:タイムスリップ森鴎外
発行:講談社(文庫)
くだらな面白度:★★★★☆

バカミスで有名な覆面作家、鯨氏によるタイムスリップ・ミステリー。

毒を盛られているのか、日に日に衰弱していく森鴎外。渋谷の道玄坂を歩いていた彼は、誰かに押されて転落し、そのまま現代の日本へタイムスリップしてしまう。女子高生に助けられ、徐々に新生活に慣れた鴎外は、自分を殺そうとした犯人をつきとめようとする。

一番の見所はやはり、ギャップに戸惑う鴎外と、それからの変身振りでしょう。女子高生に「モリリン」と呼ばれ、髪を染めて、ラップを歌う鴎外。なかなか笑えます。そこに国文学のトリビアを織りまぜて話が進むので飽きません。
鴎外を含め、17人もの殺人を計画した有名人は誰なのか?こじつけがメチャクチャ馬鹿馬鹿しいのですが、面白いので許します。

時間の経過につれて歴史が変わり、鴎外の作品が徐々に無くなっていくというSF設定も興味深いところでした。

以前の作品で『とんち探偵・一休さん 金閣寺に密室(ひそかむろ)』というのがありますが、これを「ひそかむろ」と読ませるところに鯨氏の諧謔のセンスを強く感じます。
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by bibliophage | 2005-07-27 20:53 | ミステリ-
『鏡の中は日曜日』 D難度の本格
d0018433_7575448.jpg著者:殊能将之 
書名:鏡の中は日曜日
発行:講談社(文庫)
アンチミステリ度:★★★★☆

メフィスト賞『ハサミ男』でミステリーファンをあっと言わせた殊能氏による本格派の変化球。

14年前、鎌倉の梵貝荘で起きた殺人事件。これは,名探偵の水城優臣が解決し、助手・作家の鮎井郁介が小説として発表していた。その事件の再調査を依頼された探偵、石動戯作は、当時の関係者たちを訪問する。その中には、現在痴呆症に陥っている人物が含まれていた。それは誰か?そこでもう一つの殺人が起きる。殺されたのは誰なのか?真相はどうなっているのか?

本格推理を知り尽くした作者が、そこに何重もの仕掛けを加えて作り上げた作品。ここまでくると、もう感嘆するしかないという感じです。
まずストーリー・イン・ストーリーとして、館物の本格推理「梵貝荘事件」があります。これはほら貝型の不思議な館と、殺人のトリック、仏文学をからめたこじつけの(笑)推理と、本格のステレオタイプの構成をしています。
以下はかすかにネタバレです。
この事件の関係者として、痴呆症の人物とその介護者がからみ、一種の叙述トリックが用いられます。作者としては、「痴呆」と「地方」の二つのミスディレクションをしかけています(ということにしておきます(笑))。
さらに、最後で水城探偵についてもう一段捻ってきます。(新月面宙返りみたいです。)
もうフェアとかアンフェアの段階を超越した作品で、堂々たるアンチミステリーといえるのではないかと思います。
作中人物に「フェミニスト・サイコスリラーで人間の心の闇を描ききった俊英」という表現があるのが笑えました。

水城探偵の出てくる番外編 『樒/榁』 も収録されています。
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by bibliophage | 2005-07-21 07:58 | ミステリ-
『グレイヴディッガー』 スーパー・ノンストップ・サスペンス
d0018433_17294765.jpg著者:高野和明 
書名:グレイヴディッガー
発行:講談社(文庫)
ハラハラ度:★★★★★

『13階段』で江戸川乱歩賞を受賞した高野氏によるサスペンス小説。

32歳の悪党、八神俊彦は今までの罪滅ぼしにと骨髄ドナーに登録し、入院する予定になっていた。その彼の前で、中世の魔女狩りを真似た殺人事件が起きた。見知らぬ男たちに追われることになった八神は、入院予定の病院を目指して東京の北から南へと必死で逃げる。一方、猟奇的殺人事件は連続し、被害者は全員、別の事件の目撃者だったことが判明する。謎の男たち、警察、そして殺人鬼の3者に追われる八神は、果たして逃げ切ってドナーの役目を果たせるのか?

『13階段』も面白かったですが、個人的にはこちらの方が出来がいいと思います。

主人公八神の逃走劇が半端でない迫力で、船・車・線路・川・雑踏・モノレールと目まぐるしく舞台が変わり、映画のような印象です。中世の魔女狩りの方法を模した殺人事件と殺人鬼:墓掘り人の不気味さが秀逸です。またその正体も意外性があり、背後に隠れた真相も興味深いものでした。骨髄移植や警察内部の問題をからめた構成も上手いと思いました。

最後の巨悪の末路はご愛嬌ですが、OKでしょう。

解説を読むと、墓掘り人伝承と逃走路のロケ取材の件で驚きました。
なかなか読むのを中断できない作品でした。
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by bibliophage | 2005-07-03 17:34 | ミステリ-
『クラインの壺』 SFとミステリーの融合
d0018433_21202529.jpg著者:岡嶋二人 
書名:クラインの壺
発行:講談社(文庫)
仮想現実度:★★★★★ 

徳山諄一+井上泉=岡嶋二人、名義での最後の作品。あとがきによれば、この作品はほとんど井上(夢人:改名)氏一人によるもののようです。1989年新潮社より刊行。

上杉彰彦の書いたシナリオ『ブレイン・シンドローム』がイプシロン社によってゲーム化された。驚くべきことにそのハード:クラインの壺は、ゲームの内容を五感を通して体験させる、バーチャルリアリティーを完璧に実現したものだった。ゲームの最終テストに被験者として参加することになった彰彦は、次第に自分の周りの現実にズレが生じていることに気づき始める。

この作品は、ミステリー的な展開を持ったカジュアルなSFという感じです。バーチャルリアリティーがまだまだ進んでいない現在において、この作品の内容はいまだにインパクトがあります。しかもこれが15年以上前に書かれていたことに驚愕しました。プロットのセンスが素晴らしい。文章もとても読みやすく、展開が自然なのですらすらと読み進めます。

クラインの壺とはメビウスの輪の四次元版で、内側と外側の世界がねじれてつながった図形を示す用語のこと。   
この作品におけるゲームも、まさにバーチャルとリアルを行き来するもので、その境目が徐々に渾然としてきます。その混乱の果てに彰彦が至った決断とは?

これは『オルファクトグラム』も読まなくてはいけないな、と思いました。

井上夢人氏HP  
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by bibliophage | 2005-06-15 21:25 | ミステリ-
『弥勒の掌』 どんでん返し炸裂!?
d0018433_8532071.jpg著者:我孫子武丸 
書名:弥勒の掌(て)
発行:文芸春秋
新趣向度:★★★★☆

殺戮にいたる病』の著者 我孫子氏が13年ぶりに書きおろした長編ミステリー。

私立高校の数学教師 辻恭一。以前、教え子の女子生徒と問題を起こして以来、妻との関係は冷えきっていた。ある日帰宅すると、その妻が失踪していた。一方、こわもての刑事 蛯原の妻がラブホテルで殺されるという事件が起きた。この二つの事件には、新興宗教「救いの御手」が関係しているらしい。亡き妻の復讐を誓った蛯原は、辻と協力して犯人を探し出そうとする。

教師の章と刑事の章が交互に進行します。(これが実はくせもので…。)そこに新興宗教がからむという構図は、あるミステリーと瓜二つです。貫井徳郎『慟哭』。我孫子氏は『慟哭』の形式を借りて、全く異なる趣向を用意しました。

最後に二人は「救いの御手」の本部で教祖の「弥勒」と対面し、驚愕の真相が明らかにされます。
・・・びっくりした~。な、何それ~、という感じで、しばし動けず…。
馬鹿馬鹿しいミスリードには、腹は立たずに吹き出しました。そして交互の章をちょっと読み返しました。ふ~む、なるほど…。

巻末に著者インタビューが掲載されていますが、我孫子氏は「人物が描けていない」と言われるのが(その表現も含めて)気にさわるようです。この作品では対照的な二人、辻と蛯原の描写は行き届いていて、文章も読みやすく、その心配はないと思います。

ただ一つだけ問題なのは、この結末はone of themの可能性であって、必然性がない、すなわち伏線がほとんどないのが残念なところです。動機も弱いです。だから、本格ではありませんし、かと言って叙述ミステリーでもないのです。普通のミステリーでは何か書いておくべきところを、我孫子氏はわざとはしょっているのです。
なので、『慟哭』と比べると驚愕の余韻にひたる時間が短く、軽い印象を受けてしまいます。

とは言っても、考えてもみなかった結末で驚かせてくれたので、十分満足しました。新趣向はまずは成功と言えるでしょう。
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by bibliophage | 2005-06-11 09:00 | ミステリ-
『ルパンの消息』 華麗なる蛇足
d0018433_1159572.jpg著者:横山秀夫 
書名:ルパンの消息
発行:光文社
隠し玉度:★★★☆☆

直木賞決別宣言をしたベストセラー作家横山氏の「幻の処女作」。1991年サントリーミステリー大賞佳作。

15年前、美人教師 嶺舞子が飛び降り自殺した。それが実は他殺であるというタレ込みが所轄署に入ってきた。深夜の死亡推定時刻頃、男子生徒3人が「ルパン作戦」と称して学校に忍び込んでいたという。時効まで、あと24時間。本庁捜査一課の溝呂木は被疑者を落とせるのか?

当時すでに文体が完成していて、横山氏でなければ書けないような細かい警察内部の描写:取調べの様子、手柄争い、記者との関係etcが緊張感あふれる筆致で迫ってきます。得意の時効がらみのタイムリミットサスペンスで、さらに引き込まれます。
ツッパリ高校生3人の会話なども金城一紀ばりのノリのよさです。
プロットが綿密に構築されていて、展開がなかなか読めません。

要するに、完璧に面白いです...謎解きに入るまでは。
最後、物証よりも情実であっという間に解決にもっていくのが、イマイチすっきりしないところです。確かに、ロッカーのポイントに気づかなかったのは、やられたと思いましたが、真相解明はTVドラマ風な印象を受けます。
また、どんでん返しを入れたいのもわかりますが、真犯人はやっぱり蛇足でしょう。これじゃ「ルパン三世」です。起訴は無理。

とはいえ、ペーパーバックスなら明らかにお得な内容だと思います。本格とは言えませんが、エンターテインメントの巨匠ですね。
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by bibliophage | 2005-06-07 12:02 | ミステリ-
『仮題・中学殺人事件』 読者が犯人!?
d0018433_934922.jpg著者:辻真先 
書名:仮題・中学殺人事件
発行:東京創元社(文庫)
意外犯人度:★★★★☆ 

TV演出家→アニメ脚本家→小説家と転身した辻氏の長編ミステリーデビュー作。初出1972年。2004年に文庫が復刊されました。

この作品の最大のポイントは「犯人は読者(きみ)だ!」と書き出しで宣言していることです。『アクロイド殺し』もびっくり!ですね。
純粋にこれを成り立たせるには、どこかで物語のワクを破るメタ構造になっていなければなりません。この作品ではどうなのかは、最後にわかります。

平易にかかれたジュブナイル小説とは言え、物語の構造は凝っています。
美人のキリコとずんぐりした薩次、二人の中学生が殺人事件の犯人を推理します。
1. 女流漫画の原作者が殺された…時刻表トリック
2. 中学校のトイレでガリ勉女子が殺された…密室トリック
ここまでが実はストーリー・イン・ストーリーで、中学生推理作家:桂真佐喜の作品であるという設定になっています。
桂君がこれを書いたのは、ある人物にこれを読ませたかったから…。


脚本家ならではの読みやすさで、古さも感じさせません。キリコ・薩次シリーズは計6作出ています。
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by bibliophage | 2005-05-28 09:37 | ミステリ-
『孤虫症』 実家に寄生虫…
d0018433_644998.jpg著者:真梨幸子 
書名:孤虫症
発行:講談社
つつがあり度:★★★★☆ 

第32回メフィスト賞を受賞した寄生虫サスペンス小説。

36歳の私は高層マンションに住み、大手電器会社勤務の夫、成績優秀な娘と暮らしている。幸せな生活を送っているように見える私には秘密がある。別に借りたアパートで週三回、違う三人の男と寝ているのだ。
私は最近、下腹部の痛みが気になっている。そんなある日、トイレで何かが排出された…。


なかなか恐い話です。「私」の周りの人間が次々と亡くなっていきます。
帯を見ると、携帯サイトで配信されていたとのこと。翌日も読みたくなるように、細かい話のヤマがつながっている感じです。
寄生虫の生理的な恐さとともに、人間の恐さもじわじわと描いてクライマックスの謎解きに至ります。最後の部分で、ある女流作家の作品が思い起こされます。
謎解きと言っても、決して「本格」ではありません。むしろ1章はアンチミステリーというか、なんというか…。

Sex描写が今までの女流と違って、具体的で粘着性のある文章です。おそらく作者は、本文に出てくるような女性専用の某賞にも応募歴があるのでは、と思わせます。また、この粘着描写が、本筋とも効果的にからんできます。

最後をもっとアウトブレイクにする手もあったように思いますが、渋く論文で終わるこの形もシンプルで良いと感じました。魅力的な作品だと思います。
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by bibliophage | 2005-05-26 06:47 | ミステリ-