ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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カテゴリ:ミステリ-( 50 )
『不連続殺人事件』 論理的な結末
d0018433_7125212.jpg著者:坂口安吾 
書名:不連続殺人事件
発行:角川書店、双葉社(文庫)
正当推理度:★★★★★ 

太宰治と並ぶ戦後の純文学人気作家で、『白痴』『堕落論』の著者坂口安吾が書いた本格推理小説。エラリー・クイーン張りの読者への挑戦状とともに、犯人当て懸賞金まで出したという自信作。第二回日本推理作家協会賞受賞。

小説家の私は、詩人の歌川一馬からの依頼で、山中の彼の家におもむく。そこには、癖のある文学者:望月、丹後をはじめ、一馬夫人あやかとその昔の愛人、女流作家、女優、一馬の父多門とその妾、など多くの人々が集まってきていた。
山荘に客が全員そろった後、はたして次々と人が殺されていく。
そのいくつもの殺人事件は、同一犯による連続したものなのか?それとも不連続なのか?私の弟子である巨勢博士が真犯人を推理する。


江戸川乱歩が指摘したように、最初に登場人物がうじゃうじゃでてきて、かなり混乱します。しかし、さすがに安吾先生、文章が読みやすくて、読み進むうちに整理されてきます。
途中でなんとか犯人だけはわかりました。それだけ論理的でフェアな作品と言えると思います。

映画(1977年)についてはこちら。

坂口安吾作品では、ナンセンス文の極地である『風博士』も気に入っています。
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by bibliophage | 2005-05-23 07:11 | ミステリ-
『二人道成寺』 歌舞伎ミステリー
d0018433_23482361.jpg著者:近藤史恵 
書名:二人道成寺
発行:文芸春秋
脱力度:★★★☆☆ 

時々歌舞伎を見にいきます。片岡仁左衛門の殺陣がカッコイイと思います。襲名披露パリ公演での市川団十郎のフランス語での口上は見事でした。

近藤史恵氏は『凍える島』で1993年鮎川哲也賞を受賞してデビュー。趣味の歌舞伎を題材にしたミステリーでは、『ねむりねずみ』『ガーデン』『桜姫』に続いてこれが4作目。

名門出の人気女方役者 岩井芙蓉。三ヶ月前、彼の自宅が火事になり、一酸化炭素中毒になった妻の美咲は今でも昏睡状態のままだ。この火事はなぜ起きたのか?
芙蓉のライバルの女方 中村国蔵。美咲は以前「好きな人に会ってきた」と手紙に書いていたがそれは国蔵との道ならぬ恋のことなのか?
下っ端の女方役者=子菊と芙蓉の番頭=実を狂言回しにして、探偵今泉文吾が真相解明に乗り出す。


・今泉探偵の存在感のなさが際立ちます。作者は「動かない」探偵を目指した、と(確かHP(=閉鎖中) に)書いていましたが、全くその言葉通りです。
・ 第一刷では「中村芙蓉」と堂々の誤植アリ。
・ 入院中の美咲の所へ見舞いに行く場面は描写も変で、ミステリーとしても必要性がない。
etcと突っ込み所がたくさんあります。
しかし、全体に会話が多くて読みやすい文章で、歌舞伎界の決まりなどがわかりやすく書かれているのは好感が持てます。役者がいつもどんな稽古をしているのか、役者の妻は社交的でないと勤まらない(三田寛子は?)、など。
また、オチは確かに意外性はあります(拍子抜けもするが…)。

この本の場合、肩の力を抜いて、歌舞伎観賞をするという態度で読むのが、おそらく一番良いのでしょう。
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by bibliophage | 2005-05-18 23:49 | ミステリ-
『慟哭』 『葉桜…』 どんでん返しの優劣
d0018433_1425553.jpg著者:貫井徳郎 
書名:慟哭
発行:東京創元社
世界反転度:★★★★☆ 

貫井作品として最初に『殺人症候群』を読んだのですが、これは陰惨極まりなく、細かいアラが気になったので別の作品になかなか進めませんでした。しかし、『慟哭』が文庫になって非常に売れていること、netでもそのオチが常に評判になっていることから読んでみました。

連続幼女誘拐事件を担当するキャリア出の捜査一課長佐伯。捜査は難航し、魔の手は彼の家族にも伸びる。一方、自分の心の虚しさを宗教にのめり込むことで埋めようとする松本。二つの話が交互の章で語られます。

リーダビリティが非常に高く、緊迫感を生む文体です。カルトや黒魔術の記載が詳しく、警察内部の描写が行き届いています。
私自身はレヴューを読みすぎたせいで、最後は想定内になってしまいましたが、先入観がなければぶっ飛ぶオチでしょう。読み戻ると伏線がしっかりしていることに気づきます。トリッキーではありますが、優れたミステリーと言えるでしょう。

d0018433_14312951.jpg同じくどんでん返しで有名な、歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』については、私はイマイチと感じました。伏線は「骨折」でしょうか。あの娼婦はないでしょう~、と突っ込みたくなりました。何で「このミス2004」で1位だったのか理解できません。

オチで驚かせて、ああそうだったのかと納得・感激させるのがミステリーの本道だと考えます。
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by bibliophage | 2005-05-16 14:38 | ミステリ-
『ファントムの夜明け』 見逃しの三振
d0018433_7432347.jpg著者:浦賀和宏 
書名:ファントムの夜明け
発行:幻冬社
ボール落下度:★☆☆☆☆ 

著者は1998年 『記憶の果て』で第5回メフィスト賞を受賞してデビュー。ミステリの範疇にとどまらず、SF的な設定が作品の根幹にある。(以上Wikipedia より)

書店のポップに「衝撃的なラスト」と書かれていたので、読んでみました。

主人公真美は1年前に別れた恋人健吾のことが忘れられない。その健吾が最近失踪してしまった。また真美には幼くして死んだ双子の妹麻紀がいたが、彼女は物体に記録された死者の感情を読み取るサイコメトラーとしての力を持っていた。真美にも最近その力が芽生えつつあった。

サイコメトラーのことがメインに来るまで、話がなかなか進みません。文章もすっきりしません。
…勿論家庭料理の範疇だったが、レストランに出せば十分お金を取れるだろう。中川は…料理に関してはプロフェッショナルだった。」etc
また、設定に関して、「真美は資産家の子として育ったのだが、実は魔女と呼ばれた女性の血を引いた養子である」とか急に出てきてとまどいます。

真美がサイコメトラーとして、殺して埋められた人を掘り返したり、猟奇犯罪者を追い詰めたりするところは、『羊たちの沈黙』みたいで唯一読ませる部分です。

しかし、ラストでフォークボールに備えてしっかりと構えていると、変化の小さなチェンジアップが来て見逃し三振、みたいな終わり方をします。どちらかというとライトノベルの印象で、それならそれでもっと徹底して欲しい感じです。

浦賀和宏ファンサイト
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by bibliophage | 2005-05-08 08:30 | ミステリ-
『ドグラマグラ』 空前絶後のミステリー
d0018433_8271493.jpg著者:夢野久作 
書名:ドグラマグラ
発行:社会思想社、角川書店
幻惑度:★★★★★…∞ 

家畜人ヤプー』『虚無への供物』と並ぶ日本三大奇書の一つ。映画化もされています。

一回読んで驚愕し、二回目を読んで話の構成をノートして、三回目でようやく全貌が理解できました。

気がつくと「わたし」はコンクリート四方の部屋にいた。しかし、自分が何者であるのかわからない。やがて訪れた若林教授によって、「わたし」が九大の精神科の入院患者であり、前任の正木教授が考案した「解放治療」の被実験者であったことを知らされる。その正木博士は一ヶ月前に自殺したという。

・ 正木博士は、先祖の心理が胎児に伝わるという論文「胎児の夢」を書いた。
・ その証明のために「わたし」はある絵巻物を見せられた。
・ それを見た「わたし」の精神は…。


正木博士の実験は「空前の成功にして絶後の失敗」に終わります。この意味は?
正木博士の前任の斎藤教授の死の秘密とは?
正木博士と「わたし」の関係は?


以上すべての謎が最後に解かれます。『虚無への供物』と違って、話はミステリーとしてもきれいに着地します。

話がメタ構造になっているのと、「わたし」の「離魂病」のために時間がずれるのを気にせずに、途中の「キXガイ外道祭文」という歌を読み飛ばせばOKです。

最大のキーワードは「心理遺伝」。
作者が「十年考え、十年書き直し抜いた」という、まさに空前絶後のミラクル・ミステリーです。
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by bibliophage | 2005-05-05 08:33 | ミステリ-
『星降り山荘の殺人』 カジュアルな本格
d0018433_275659.jpg著者:倉知淳
書名:星降り山荘の殺人
発行:講談社
購入動機:ネット評
本格度:★★★★☆

2chのミステリ板:「やられた!と思った作品」にいつもあげられています。

ミステリ外部の人が読んでも楽しんでもらえる本格作品を目指す(あとがき)」、という著者の試みは成功していると思います。

スターウォッチャーという変な肩書きを持つナルシストの二枚目星園がオカシイです。彼の付き人になってしまった主人公和夫、UFO研究家嵯峨島、女流作家草吹などが雪の山荘に集まって、お約束通り事件が起きます。

この本の評価として、ミスリードがアンフェアと感じるかどうかということに集約されますが、私はOKでした。ここまでやれば天晴れと思いますが…。
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by bibliophage | 2005-04-28 02:13 | ミステリ-
『玩具修理者』 懐かしいような奇妙な話 
d0018433_711429.jpg著者:小林泰三 
書名:玩具修理者
発行:角川書店
購入動機:書店で目について
奇妙度:★★★★★

彼女は昼間いつもサングラスをしている。わたしは、そのわけを尋ねた。彼女はしぶしぶ、子供の時の奇妙な話:何でも直してくれる玩具修理者、について打ち明けてくれた。

理系技術者である小林泰三氏の作品で、1995年の第2回ホラー小説大賞短編賞受賞作。

玩具修理者の名前は‘ようぐそうとほうとふ‘。性別、年令、国籍不明の人物で、人形でも、ラジコンカーでも、死んだネコでも全部バラバラに分解して直してくれる。ある日、彼女は背負っていた弟を落として死なせてしまう。仕方がないので、修理者の所に持っていったのだが…。

今読んでも十分奇妙で不思議な物語です。話の発想が技術者ならではで、修理者の気味悪さが秀逸です。自分の幼少時の悪戯などの懐かしい記憶が喚起されました。話の最後にオチがあってよくできています。

もう一編『酔歩する男』が収録されており、こちらはタイムトラベルの話。
ある日、血沼は見知らぬ男に会った。その男、小竹田は血沼の個人情報をすべて知っており、大学時代の親友だったと言う。二人は一人の女性をめぐって争った…らしい。

タイムトラベルの説明に、ゲーム理論や量子力学まででてきてユニークです。東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』を思い起こさせる部分もあり、こちらもなかなか面白い話でした。
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by bibliophage | 2005-04-20 07:14 | ミステリ-
『九月が永遠に続けば』 一流の文章、一流のサスペンス…一流半のミステリー
d0018433_163429.jpg著者:沼田まほかる
書名:九月が永遠に続けば
発行:新潮社
購入動機:書評
納得度:★★★☆☆

第5回ホラーサスペンス大賞受賞作で、ダ・カーポの書評でもベタ誉めでした。期待が高まります。

41歳の水沢佐知子は、8年前に精神科医の安西雄一郎と離婚して、高校生の文彦と二人で暮らしている。その文彦がある夜、ゴミを出しに行ったまま失踪した。そして翌日には、佐知子が関係を持っていた16歳年下の犀田が線路に転落死する。
雄一郎は亜沙美という元患者と再婚していたが、彼女は昔の暴行事件で精神を病み、その時妊娠した冬子という子供を産んでいた。その冬子は高校生になっていて、犀田ともつきあいがあった。

設定がややこしいのですが、沼田氏の文章がうまいのですらすらと読めてしまいます。佐知子の一人称で話が進むので、サスペンス感が強く出て、次の展開への期待が続きます。

文彦は生きているのか?犀田はなぜ転落したのか?

話が進むと、人間関係がさらに複雑であったことがわかってきます。そして最後の方で、意外な展開が二回起こります。

新人ということを考えると相当レベルが高い作品です。選考委員の唯川恵氏の言うように、「文章力で大賞を取った作品」と思います。

しかし、いくつか難点があります。
まず、一週間という短い時間の出来事なので、どうしても展開が大きくならずに、間延びするところがあること。次に、最後の近くで、ある二人の関係が判明するのですが、それが取ってつけたような印象があること。これは伏線が弱いせいだと思います。また、ある人物が犯人として佐知子らに罵倒されるのですが、それがどうにも救いがない感じなこと。

あと明らかなミスとして、文彦にとって犀田は「母親の不倫の相手」、との記述(p202)があります。しかし、二人とも独身なので全く不倫ではありません。
またP295からの10頁は、伝聞内容を三人称で書いていますが、急に会話が入ったりして若干気になるところがあります。わざとこういう書き方の効果をねらっているのかも知れませんが…。

サスペンス大賞としては文句ない作品だと思いますが、オチの整合性にこだわるミステリーファンにはちょっと物足りないかもしれません。
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by bibliophage | 2005-04-14 01:16 | ミステリ-
『さまよう刃』 あだ討ちするは我に有り
d0018433_0232056.jpg著者:東野圭吾 
書名:さまよう刃
発行:朝日新聞社
購入動機:著者のファン
緊迫度:★★★★☆

高校一年生の娘、絵摩が花火大会から帰って来ない。長峰の不安は時計の針を見るたびに大きくなっていく…。
最初から暗い展開の伏線が全開で、読み進むのが躊躇されます。予想通り絵摩は誘拐、陵辱されて殺されます。それから長峰は復讐の鬼となり、会社も辞め、主犯の少年カイジを殺害することだけを人生の目的とします。

被害者の家族としては、少年法で守られた犯人は自分で殺すしかない、という気持ちになることは共感できます。女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人の一人の少年が、その後に起こした暴行事件をみると、少年だからと言って更正を期待するのは間違いである、ことがよくわかります。
被害者の家族が犯人に復讐をするという「あだ討ち」パターンの話はよくみられますが、これは読者がとても感情移入しやすいという点が受けるからでしょう。

長野に隠れているという情報しかないため、長峰のカイジ探しは遅々として進まず、小説も半ばでちょっと間延びする印象です。しかし、長峰に協力してくれるペンションの女性とのエピソードや、暴露週刊誌と人権弁護士のテレビ討論などをはさんで、クライマックスの上野での対決シーンに向けて徐々に盛り上がっていきます。はたして長峰が銃での復讐を遂げられるのか、上野駅の場面は映画のような臨場感で迫ってきます。この辺りは東野圭吾の真骨頂といったところでしょうか。

果たしてどうなるのかと読み進むと、結末は妥当?な所に落ち着きます。東野圭吾の作品の中では平均的なポイント(=かなり面白い)という印象でした。
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by bibliophage | 2005-04-07 00:58 | ミステリ-
久坂部羊『破裂』考
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著者:久坂部羊
書名:破裂
発行:幻冬舎
購入動機:著者のファン
衝撃度:★★★★☆

前作「廃用身」も医学の常識に刃向かう面白い内容でしたが、今度の作品「破裂」はパワーアップしてます。キャッチコピーもすご過ぎます(タイムリー!)。

心臓外科教授をねらう香村と野望を持ったエリート官僚佐久間。二人とも最高に脂ぎってます。それに対して医療過誤を告発する麻酔科医江崎。こちらも結構壊れてます。
著者:久坂部羊氏はさすがに阪大卒の医師だけあって、これほど詳しく大学病院勤務医のことを書いた作品はないと思います。医者の失敗を集めた「痛恨の症例」のエピソードも実例からとったに違いありません。

全体にサスペンスがかっていてとても面白く一気に読めました。医学情報小説としては、最高のものと言えるでしょう。
手術室の記載がとても詳しいことからドクター久坂部は外科系出身で、現役ならば眼科耳鼻科などのマイナーな科の所属ではないかと推測しました。老人を切り捨てる、という首尾一貫したテーマ(笑)をお持ちなので、年令も30-40台と想像しました。

いずれにせよ、この作品が素晴らしいことに変わりありません。
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by bibliophage | 2005-04-04 07:01 | ミステリ-