ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ:その他小説( 65 )
『6時間後に君は死ぬ』 予知能力者、運命に挑戦
d0018433_9154079.jpg著者:高野和明 
書名:6時間後に君は死ぬ
発行:講談社
緊迫度:★★★★★

『13階段』の高野氏の連作短編集。

<心理学の大学院生、圭史は特殊な予知能力を持っていた。それは目の前にいる相手の非日常的な未来が見えてしまうという力だった。>

やはりストーリーの運び方が上手いですねぇ。
素材、表題、人物のバックストーリーとかはかなりベタなのに、話の展開が巧み過ぎるので、ついつい引き込まれてしまいました。
作風は違っても、東野圭吾を思い浮かべました。

1.『6時間後に君は死ぬ』:圭史に「6時間後にあなたが死ぬビジョンが見える」と言われてあわてる美緒。
2.『時の魔法使い』:脚本家を目指している未来(みく)は、ふとしたことで子供時代の自分に遭遇する。
3.『恋をしてはいけない日』:交通事故現場に居合わせた未亜は、そこで出会った男性を好きになる。
4.『ドールハウスのダンサー』:美帆はプロのダンサーを目指して練習を続ける。その彼女の運命を以前から知っていた女性がいた。
5.『3時間後に僕は死ぬ』:火災事故に巻き込まれて自分が死ぬ場面が見えた圭史。それは美緒が働くウェディング施設でのことだった。

1.と3.はオチが上手く決まりました。
5.は文字通りカウントダウン・ミステリー。ギリギリまで引っ張るので、とてもハラハラさせられます。運命は変えられるのか、ということに答を出して終了。
2.や4.はなかなか夢が実現しない女性の葛藤が書かれていて興味深く思いました。
全体に、見事な筆運び、という印象で、楽しめました。
[PR]
by bibliophage | 2007-05-19 09:20 | その他小説
『鴨川ホルモー』 ホルモーって何?
d0018433_733121.jpg著者:万城目学 
書名:鴨川ホルモー
発行:産業編集センター
奇想度:★★★★☆

第4回ボイルドエッグス新人賞受賞作。

<2浪の末京大に合格した俺(安倍)は、京大青竜会なるサークルの飲み会に誘われる。そしてそこで出会った早良京子に一目ぼれし、たまたま知り合った高村とともに例会に出席するようになった。あるとき、そのサークルの活動目的が明らかになった。それは4大学対抗の「ホルモー」に参加することなのだ。>

いやぁ、発想の勝利ですね。対抗戦の「ホルモー」という語感も何やら怪しげでよろしい。

途中までは、『太陽の塔』と同じやん、と思っていましたが、ホルモーが何かわかってからが面白い。あるものを操っての戦い。安倍晴明もびっくりでしょうね。

あと、やはり京都は地の利がありますね。京都を舞台にすると、移動しているだけで小説になってくるから凄い。まあこの話は京都以外では成立しないでしょうが。

ちゃんと青春小説(少女漫画的)の形にもなっていてうまく着地します。文章もさらりと読めていいですね。

安倍氏の1人称で書かれていますが、1ヵ所だけメタ的にこちらに語りかけてくるところも印象的でした。
1作目としてはとても完成度が高いと思います。
[PR]
by bibliophage | 2007-03-16 07:34 | その他小説
『フィッシュ・ストーリー』 伊坂節冴えてます
d0018433_0475937.jpg著者:伊坂幸太郎 
書名:フィッシュ・ストーリー
発行:新潮社
ホラ話度:★★★★☆

色々な趣向を持った伊坂氏の短編集。

<20数年前…昔の日本の小説を引用したロックの曲がカーステレオから流れていた。雅史は曲中の無音箇所で、女性の悲鳴を聞く。
現在…システム・エンジニアの麻美が乗った飛行機がハイジャックされた。
30数年前…売れないロックバンドが最後のレコーディングを一発録りでおこなった。
10年後…麻美はネットワークの不審から、国際的なハッキング計画に気づく。(「フィッシュ・ストーリー」)>

どの話も面白かったです。さらっと読めました。

上記表題作では、いくつかのエピソードが細い糸のようにつながって時間的な流れになっていくという、まさに壮大な?フィッシュ・ストーリー(ホラ話)でした。時間を前後させた構成が渋いですね。

他には、その人物がいるだけで動物がなごむ動物園の元飼育係りの話(「動物園のエンジン」)、東北の山村のある風習の謎(「サクリファイス」)、空き巣の今村、その母、同棲相手大西らがかかわっていく話(「ポテチ」)の3編が収録されています。

「動物園のエンジン」は三崎亜記氏の短編を思い起こしました。って、こちらの方が先でしたね(2001年)。
4編の中ではミステリー仕立ての「サクリファイス」が最も良かった。‘おこもり様’の謎のせいで先へ先へとページをめくらされます。ここに出てくる黒澤は例によって「ポテチ」の登場人物でもあるようですね。
「ポテチ」は、会話のユーモアが素敵でした。特に大西のつっこみ。

伊坂氏の文章の上手さ、ストーリー作りの見事さを再認識しました。
[PR]
by bibliophage | 2007-02-25 00:48 | その他小説
『ブレイクスルー・トライアル』 「このミス…」2007大賞受賞
d0018433_1303783.jpg著者:伊園旬 
書名:ブレイクスルー・トライアル
発行:宝島社
画期的度:★★★☆☆

昨年の「チーム・バチスタの栄光」に続く第5回大賞受賞作品。

<大学時代の友人である門脇と丹羽は、IT企業セキュア・ミレニアム社が主催する公開侵入実験コンテストに参加することを決める。研究所の最新セキュリティを突破するトライアルで、賞金は1億円。彼ら以外にも、強盗団の連中がエントリーして、会場はとんでもない状態に陥っていった。>

話題作を続出させる「このミス」大賞。
期待して読みましたが、今回はもう一つでした。

題材は興味深く、キャラも面白いのですが、何せ前半が読みにくい。説明が多くて、テンポが悪く、もう少しで挫折するところでした。
実際のトライアルの描写である後半が面白いだけに、惜しまれるところです。

主人公の門脇が元ミレニアム社の社員だったりするのも違和感が強い。
また、技術者として強盗チームに協力する<蛙>の存在が面白いのに、ここで生じるはずの摩擦が書かれず、いつの間にか消えてしまう。
第3の参加チームの存在感が乏しい。…あげていくと気になる点が多数です。

これから読まれる方は、1.2章は流して、緊迫感のある3章を楽しむのが吉と思います。
[PR]
by bibliophage | 2007-01-20 01:32 | その他小説
『となり町戦争』 2007年2月映画公開
d0018433_23123273.jpg著者:三崎亜記 
書名:となり町戦争
発行:集英社(文庫)
着想度:★★★★☆

小説すばる新人賞のデビュー作、かつ直木賞候補だった作品、早くも文庫化。

<自分の住む舞坂町がとなり町と戦争を始める。広報でそれを知った僕に、偵察業務従事の辞令が届いた。どこで戦闘が起きているのかもわからないのに、発表される戦死者数は増え続けている。次に、となり町に潜入し、役所の香西さんと夫婦として住むという任務が与えられた。それまで戦争の影もみえなかったある夜、電話が鳴って事態は急転した。>


とにかく、発想が凄いですねぇ。お隣の町との戦争。しかも何が戦争なのか全くわからない。

最初の方は、筒井康隆ならこの辺で事件が起きるのに…、とか、これって短編のネタを長編に引き伸ばしてるんじゃないのか…、などとぶつぶつ言いながら読んでいました。
しかし、その淡々と流れるところを我慢して読むと、驚くべき展開が…。
振り返ると、あの淡々が曲者で、作者の意図するところだったとわかりました。

さらに、この作品は文章がとても美しい。特に風景の描写がきめ細かくてきれい。
またユーモアも秀逸。「性的な欲求処理に関する業務」は笑えました。

文庫版のための「別章」も面白かった。説明会で質問していたマジメな彼が誰かわかります。

短編集 『バスジャック』 もとても良かったし、この作者からは目が離せないですね。
[PR]
by bibliophage | 2006-12-21 23:16 | その他小説
『墨攻』 スーパー傭兵、革離
d0018433_1012325.jpg著者:酒見賢一 
書名:墨攻
発行:新潮社(文庫)
専守防衛度:★★★★☆

「後宮小説」の酒見氏の92年の作品。漫画化に続いて映画化。

<中国の戦国時代。博愛主義の思想家墨子が作った宗教・軍事的結社墨家。趙に攻め込まれている小国の梁へ、墨家から派遣されてやってきた革離。彼はたった一人、不眠不休で人々を指揮し、城の防衛に全精力を傾ける。>

面白かったです。
謎に包まれた存在の墨子に興味を持ち、少ない歴史資料から想像力を屈指してこの話を考え出した酒見氏の小説家としての力量にまず感心しました。

敵の攻撃に対し、色々な手を使って守ります。土を盛って高台を作れば、より高くから弓や石をあびせる。トンネルを掘ってくれば、こちらからもトンネルを作って迎え撃つ。

この辺りの攻防をほとんど一人でやり抜くところが、ゲーム的な感覚で受けて、漫画化された上に、今回アンディ・ラウ主演で映画化(2007年2月公開)されるに至ったのではないかと思います。

劇的な結末は極めて伝統的な形で、伏線がよく効いていました。

解説はためになりましたが、作者あとがきは何でしょう、あれは?

映画も是非観てみたいと思いました。 → 映画公式サイト
あ、その前に作者の「泣き虫弱虫諸葛孔明」も読まなくては…。
[PR]
by bibliophage | 2006-12-09 07:36 | その他小説
『グレート・ギャツビー』 華麗なる翻訳文
d0018433_21393346.jpg著者:スコット・フィッツジェラルド、村上春樹訳 
書名:グレート・ギャツビー
発行:中央公論新社
流麗度:★★★★★

村上春樹氏が20年間目標とした小説を遂に翻訳。

<ニックはニューヨーク郊外ウェスト・エッグの小さな家に住んでいた。その隣には謎の億万長者であるギャツビー氏の邸宅があり、そこでは毎週末、豪華なパーティーが催されていた。ある日、ニックはそのパーティーに招待され、ギャツビーと出会う。そして後日、女友達であるジョーダンを通して、ギャツビーからある頼みごとを持ちかけられる。>

素晴らしい…。
文章の美しさ、悲しいストーリー、訳の巧みさ、村上氏の思い入れの深さ。
本文とあとがきを通して、何度も感激してしまいました。

村上氏はあとがきで、
「もし『グレート・ギャツビー』という作品に巡り会わなかったら、僕はたぶん今とは違う小説を書いていたのではあるまいか…」
「…僕はこの『グレート・ギャツビー』という小説を翻訳することを最終的な目標にし…これまでの翻訳家としての道を歩んできたようなものである。」

というように、その熱き思いを語っています。

本文で特に美しいと思った場面。
・ p171 ギャツビーが色とりどりなシャツを投げ放つ箇所。
・ p272 デイジーのきらびやかな社交の世界。
・ p291-2 ギャツビーを乗せた浮きマットがプールを漂う様子。

村上氏の本書翻訳における2大方針:「現代の物語にする」「文章のリズムを生かす」。
確かに、古臭さは全く感じませんでしたし、流れるように読めてほとんどひっかかりませんでした。You passed!
面白かった訳語。p63「エクトプラズムのようにぼんやり浮遊している…」。
何度かでてくる「あほらしい○○」という表現。
p78 「ケータリング業者から軍団が…」。

ストーリー的には、(ちょっと得体の知れぬ)財産家であるギャツビーのかなわぬ純愛、という所がいいですね。最後デイジーをかばうところは騎士道精神風です。
また、愛する人の帰りを待てずに他の人と結婚する女性という設定からは、『金色夜叉』をちらりと思い浮かべました。

春樹ファンは必読でしょう。彼の作品における文章の美しさが、翻訳者としての並々ならぬ実力の上に存在していることがよ~くわかりました。読む順としては、まずあとがきを、それから本文を、そしてもう一度あとがきを。

今回の訳を読んで、この美しい物語を心から愉しむことができましたし、村上氏がずっと宝物のようにいつくしんできたという理由がよく理解できました。
とにかく、おすすめです、オールド・スポート
[PR]
by bibliophage | 2006-12-02 21:44 | その他小説
『真夜中のマーチ』 奥田版「陽気なギャング」
d0018433_817446.jpg著者:奥田英朗 
書名:真夜中のマーチ
発行:集英社(文庫)
ドタバタ度:★★★☆☆

「空中ブランコ」の奥田氏によるコミカル・クライムノベル。

<ヨコケンは自社主催のお見合いパーティーで、ミタゾウに会った。彼を三田財閥の御曹司と勘違いしたヨコケンは、美女を使って篭絡しようとする。一方、組員のフルテツに脅されて借りさせられたマンションでは、賭場が開かれていた。その上客である画商白鳥は、賭け仲間から絵画への10億円の出資金を集めていた。白鳥を憎むその娘クロチェはその金を奪おうとして、ヨコケン、ミタゾウとともに計画を練る。>

全体的にスピード感があり、会話が面白く、キャラが立っていて、伊坂幸太郎の「陽気なギャング…」を思い浮かべてしまいます。

10億円を狙っているのがクロチェたちだけでなく、フルテツ、中国人詐欺師と3グループがからまる強奪戦になるところが面白い。最後のあたりは展開がハチャメチャで、解説に書かれているようにスラップスティック(ドタバタ)になっているのも興味深かった点でした。

惜しむらくは、ミタゾウのキャラがイマイチつかみきれない点でしょうか。基本的に生マジメな性格でトロいのに、女性好きで、ときに思い切った手に出る。読んでいて、これは逆転の逆転で御曹司なのかと思って、期待していたりもしたのですが…。

「陽気なギャング(1作目)」にはちょっと届かないけれど、悪くない話でした。
[PR]
by bibliophage | 2006-12-01 08:18 | その他小説
『号泣する準備はできていた』 超絶なる感受性
d0018433_15191440.jpg著者:絵國香織 
書名:号泣する準備はできていた
発行:新潮社(文庫)
感覚度:★★★★★

直木賞受賞短編集。

「隆志から朝、電話があった。木がなくて電飾だけのクリスマスツリーの夢を見たと言う。彼とは旅先で出会って、同棲もしていた。だけど別の女性と仲良くなって、半年前に部屋を出て行った。今でも時々連絡があり、私は隆志のことを忘れられずにいる。(表題作)」

女流作家の作品は正直、不得意です。
「センセイの鞄」とか「博士の愛した数式」とか全くダメでした。

しかし、この短編集はとても良かった。
出てくる女性たちがちょっと暗くて、典型的な幸せ状態にはない所が気にいったのかも知れません。この設定で長編を書いてもおかしくないのに、と思うものが短編になっているので、密度が濃いと感じたからかも知れません。

アマゾンのレビューを見ると点数が低いのにちょっとびっくり。ハーレクインが好きで、安定を好むような女性読者には確かに受けないかも知れませんね。

話が余韻をもって終わるところ。決め細やかな情景描写。アンニュイというか、ちょっとさめたような会話。

この本を読んで、著者は並外れた感受性の持ち主なのだな、と感じました。
[PR]
by bibliophage | 2006-11-19 15:20 | その他小説
『アフターダーク』 胎動のささやかな予兆の物語
d0018433_024572.jpg著者:村上春樹 
書名:アフタ-ダーク
発行:講談社(文庫)
表現力度:★★★★☆

(永遠の)ノーベル賞候補、村上氏2004年の作品。

<デニーズの店内で夜を明かそうとしていた浅井マリ。そこに姉のエリの友人高橋が通りがかって声をかける。彼の知り合いのカオルに頼まれて、マリは中国人娼婦の通訳をする。その娼婦に暴力を振るった白川は、夜中のオフィスで一人ソフトウェアのバグを直す。一方、エリは2ヶ月前から、彼女の部屋で死んだように眠ったままだった。>

大いなる物語の序章という感じでした。

相変わらず、会話が洒落ていて、比喩が特別に鋭くて、音楽の話が絶えず流れている、という春樹流世界が堪能できます。

高橋の会話が特に凄くて、例えば
「僕にはいくつか問題があるけど…あくまで内部的な問題だから、そんなにやすやすと人目につかれると困るんだ。とくに夏休みのプールサイドなんかでさ」
などというのは、読んでいて痺れてしまいます。現実にこんな物言いをする男がいたら、きっとモテモテですねw。
さらに、「世界中の電圧がすっと下降してしまった感じ」だとか、「新しい一日がすぐ近くまでやってきているが、古い一日もまだ重い裾を引きずっている」とか、渋い表現があちこちに認められます。自在の表現力でした。

お話としては、マリと高橋の今後、エリは目覚めるのか、白川の運命は、など謎が続出したまま夜が明けて、尻切れになってしまいました。続きはどうなっているのでしょうか?

ちょっと気になったのはコオロギという女性の話が説教臭いこと。また、関西弁を使わせるのはOKですが、「ぶちまけた話、…」という言い回しはしないですね。「ぶっちゃけた話」の関西訳のつもりでしょうが…。

ともあれ、ノーベル文学賞に一番近い日本人であることは間違いありません。受賞する日が待ち遠しいです。
[PR]
by bibliophage | 2006-11-07 23:58 | その他小説