ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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カテゴリ:その他小説( 65 )
『太陽の塔』 妄想青春小説
d0018433_1434151.jpg著者:森見登美彦 
書名:太陽の塔
発行:新潮社(文庫)
脳内風景度:★★★★☆

以前より気になっていた作品。第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞。文庫化したので早速購入しました。

<京大休学中の5回生である私は、すし屋のアルバイトをしながら、寂しい下宿生活を送っている。趣味は、かつて付き合っていた後輩の水尾さんの行動を観察すること。私は、同じく彼女のいないわびしい友人たちと鍋をかこみ、憎悪するクリスマス・イブを撲滅すべく行動の計画を練る。>

結構面白い作品でした。
屈折したぱっとしない青年の独白が延々と続きます。独善的な言い回しが、ある意味知的で、ユーモアがあり、クスクスと笑えます。これは好き嫌いの分かれそうな点で、最初の数ページで投げ出す人がいるかも知れません。
このまま続くとさすがに煮詰まってきそうだな、と思うと小さな事件が起きて話が転がっていき、飽きが来ないように構成されています。
まあ、所詮個人の妄想を描いたような小説なので、ダイナミックな展開を期待することはできませんが…。

水尾さんのことが詳しく書かれていないので、彼女がなぜ「太陽の塔」を気に入り、招き猫の置き物を嫌ったかはよくわかりません。叡山電車に乗っていくうちに彼女の心象風景の中に入っていく、という箇所はシュールでした。

道路・場所の描写をするだけで話になるのは京都のいい点です。祇園、四条河原町、叡山電車沿線、下鴨、北白川…。

主人公の愛(自転)車「まなみ号」の由来?である本上まなみさんの解説もなかなか味があります。
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by bibliophage | 2006-07-08 01:45 | その他小説
『陽気なギャングの日常と襲撃』 ギャング失速
d0018433_21594592.jpg著者:伊坂幸太郎 
書名:陽気なギャングの日常と襲撃
発行:祥伝社
カタルシス度:★★★☆☆

銀行強盗の四人組シリーズ2作目。

<公務員の成瀬、喫茶店主響野、スリの久遠、車泥棒雪子。銀行強盗の四人組がまたまた色々な事件に巻き込まれる。屋上の人質、幻の女、誘い主不明のチケット、借金まみれの男。これらが微妙につながりつつ、社長令嬢誘拐事件へと進展していく。>

伊坂作品なら手放しでほめるファンの方は多いでしょうが、この作品はどうか?

4人のキャラクターが立っていて、特に響野と久遠の皮肉な会話バトルは相変わらず面白い。
多くの伏線が配されていて、気の利いたことわざの使い方が軽妙です。第1章はなかなか良いペースで進み、期待が高まります。
ですが、第2章以下段々とテンポが悪くなっていきます。
会話が笑えない漫才のようになり、展開が無理やりの予定調和風になっていきます。

この理由は著者あとがきに書かれているように、最初の4短編を無理につなげて、話を追加して長編にしたからだと思われます。出版社の意向に従わざるを得なかったのでしょうか?少なくとも第1作のダイナミックな疾走感はないと感じました。

珍しく厳しい批評となっていた「活字中毒日記!」さんの記事に思わずうなづいてしまいました。

で、「幻の女」はいったいどうなったのでしょうか??
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by bibliophage | 2006-05-17 22:02 | その他小説
『リアルワールド』 女子高生の世界
d0018433_9332568.jpg著者:桐野夏生 
書名:リアルワールド
発行:集英社(文庫)
現実度:★★★★★

<高校三年のトシちゃん(十四子)の隣に住む同じ年の少年ミミズ。ある日、彼は母親を殺して逃走した。携帯や自転車を奪われたことから、ミミズの遁走を手助けするハメになったトシちゃんと三人の少女(テラウチ、ユウザン、キラリン)。その後、事件は思いがけない展開に陥っていく。>


面白かったです。
少女4人の性格・行動の描き分けから、そのバックストーリーまでとてもリアルです。会話も舞城ばりのスピード感があります。ストーリーが最後に急転しますが、その流れも納得できるものでした。

高校生の少女と少年の苦悩・リビドーなどの描写はとにかく見事でした。
が、それに比して、最後に出てくるキラリンの元カレ(大学生)の手紙って、これは何??
結末を和らげようとする配慮なのか。ここだけがひっかかりました。

巻末の斎藤環氏による桐野作品の解説は、とても参考になりました。
キーは「4人の女」か…。
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by bibliophage | 2006-04-29 09:36 | その他小説
『ガール』 30代女性への賛歌
d0018433_1165094.jpg著者:奥田英朗 
書名:ガール
発行:講談社
爽快度:★★★★★ 

働く30代女性を描く短編集。

ヒロくん」: 不動産会社に勤める聖子に課長の辞令が下りた。部下に年上の男性が入っている…。
マンション」: 大手生保勤務のゆかり。親友のめぐみがマンションを買ったと聞いて焦る。
ガール」: 由紀子は広告代理店に勤めているが、最近32歳の年令が気になりだした。
ワーキング・マザー」: シングル・マザーの孝子は希望が通って営業部に復帰することになった。
ひと回り」: 営業部の容子の下に新人が入ってきた。しかも、22歳の超イケメンだ。

いや、これは面白い…、伊良部より何倍も。

だまっていてもみんながちやほやしてくれた20代。その時期を過ぎた働き盛りの30代女性の会社での悩み。それを見事に描き出して、彼女たちにエールを送る、そんな素敵な短編が並んでいます。
こんなに上手く女性を描ける男性作家はいないでしょう。

ただ、実際の女性の目からこの本をみたらどうなのか?感想が聞きたいところです。
「現実には、この小説の中の女性たちのようには、(言いたくても)言えない」ものなのかも知れませんが…。
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by bibliophage | 2006-04-19 11:10 | その他小説
『町長選挙』 伊良部、離島で活躍
d0018433_8191761.jpg著者:奥田英朗 
書名:町長選挙
発行:文芸春秋
傍若無人度:★★★★☆

精神科医伊良部シリーズ短編集第3弾。

<東京都に属する離れ小島、千寿島。ここでは、4年に一度の選挙が、島を二分しておこなわれていた。両陣営の間で悩む派遣公務員の良平。そこに伊良部が赴任し、特養老人ホームがからむ接待攻勢が起きて、事態はさらに混乱していくのだった。(町長選挙)>

表題作の他に、「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」の3作を収録。
この3つはモロに実在の人物のもじり。特に前二つは某元新聞社オーナーと某元カリスマIT社長の言行そのままです。さすがにこれは作家として、どうなのか?。面白いから許しますが…。「カリスマ稼業」は女優の強迫的なダイエットの描き方がさすがに上手いなぁと感心しました。

1作目の『イン・ザ・プール』と比べると伊良部の影が薄いし、上品になったんだと思っていると「町長選挙」で大爆発。接待で食いまくるし、袖の下は受け取るし…。老人・過疎問題までからめて、これは力作です。選挙はどうなるのか、と思っていると…なるほど上手い終わり方でした。

本の表紙もとてもきれいです。
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by bibliophage | 2006-04-17 08:23 | その他小説
『終末のフール』 設定のシュール
d0018433_10163668.jpg著者:伊坂幸太郎 
書名:終末のフール
発行:集英社
世紀末度:★★★★☆ 

小説すばるに掲載された伊坂氏の連作短編集。「小惑星の衝突によって地球が3年後には破滅することがわかっている」というSF風な設定。

1「終末のフール」:  香取夫妻は長男和也を自殺で亡くしている。その時家を飛び出した娘の康子が今回10年振りに帰ってくる。
2.「太陽のシール」:  決断力のない僕、桜庭富士夫。あと3年の今になって、妻の美咲が妊娠した。さて、産むべきか、どうなのか?
3.「籠城のビール」:  辛口のアナウンサーだった杉田の家に、二人の男が闖入した。マスコミのせいで自殺した家族の復讐のためだという。
4.「冬眠のガール」:  おっとりした性格の田口美智の両親は4年前に自殺した。父の残した莫大な本を読み終わった美智は、「恋人を見つけること」を新しい目標にする。
5.「鋼鉄のウール」:  16歳のぼくは、引きこもりの父と不安症の母と暮らしている。ぼくはキックボクサー苗場にあこがれ、彼の所属しているジムに通う。
6.「天体のヨール」:  最愛の妻千鶴を失い自殺しようとする矢部。そこに大学時代の友人で天文オタクの二ノ宮から電話がかかる。
7.「演劇のオール」:  わたし(倫理子)は、町内に残された人々と擬似家族のような生活をしている。母:早乙女さん、妹:亜美、子:勇也+優希、と彼氏一郎、それに犬。
8.「深海のポール」:  ビデオ店長の渡部は妻華子、娘未来、頑固親父と4人暮らし。華子は宗教の集会にでかけ、父親はマンション屋上に櫓を建設中。

あと3年で地球が滅亡。この設定で、社会パニックの時期を描くのではなく、その時期を過ぎた一種諦念の世の中で暮らす人々を題材にしています。この点がユニークです。

8つの短編には、色々な人々が相互乗り入れしていて、メモを取りながら進めないと混乱するところがあります。この辺もたくみに計算されている感じ。ひとつひとつの物語の作り方はやはり上手いなぁと感心します。

全体的には、話が淡々と流れるものが多く、正直、面白いのかどうか私には判断できませんでした。伏線、キレ、オチといった要素からは、3.「籠城のビール」6.「天体のヨール」が、個人的な好みでした。

8.「深海のポール」の内容からみるとこの8編で完結の様子ですが、「じたばたして、足掻いて、もがいて。生き残るのってそういうのだよ、きっとさ」というのがメッセージなのでしょうか。
あと気になるのが、4.「冬眠のガール」の最後に「広い家の庭に倒れている男」というのが出てくるのですが、これって誰??
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by bibliophage | 2006-04-02 10:24 | その他小説
『イン・ザ・プール』 ちょっとズサンな医学コメディ
d0018433_032613.jpg著者: 奥田英朗 
書名:イン・ザ・プール
発行:文芸春秋(文庫)
お笑い度:★★★☆☆

精神科医伊良部シリーズの初回短編集。

1. 「イン・ザ・プール」: 体調不良の解消にと水泳を始めた和雄だったが、いつしか泳がなくては気がすまない中毒状態になっていた。
2. 「勃ちっぱなし」: 下腹部を強打して以来、哲也は持続的に勃起した状態に悩まされていた。
3. 「コンパニオン」: イベント・コンパニオンの広美は、最近誰かに後をつけられているという恐怖感から、心身ともに調子を崩していた。
4. 「フレンズ」: 高2の雄太は携帯を四六時中手放せない。いつ誰から遊びの誘いが入るかわからないからだ。
5. 「いてもたっても」: 生真面目なルポライター義雄は、火元の確認が気になって、仕事にも支障をきたすようになってしまっていた。

いや、面白いのは認めますけど、細部がいい加減ですねぇ、この作品は。

たいがいの粗筋は、「強迫観念や何かの中毒になっている人が、太った中年医師・伊良部と面談を重ねるうちに、あまりにメチャクチャな彼の行動に呆れ、逆に優越感をもったり、吹っ切れたりすることで、自分を取り戻していく」というものと思います。

ズサンなところというと、第1話に出てくる、「あいつら(=内科医師)、もしも機能性の疾患だと怖いもんだから、なかなか下(=地下の精神科)に回そうとしない…」の部分、「機能性」は「器質性」の間違いだと思われます。心身症は「機能性」の疾患が多いハズなので、下に回すのが普通。
また、「痛みを緩和する抗生物質を打つ」というのは、さすがにあり得ないでしょう。
第2話、持続性の勃起は血栓症か何かで起きるシリアスなものと聞いたことがあり、心因とか打撲で起きる・治るといったしろものでないのでは…。
やはり、医療関係者にチェックしてもらわないと、笑うところで笑えないことになりますので…。

とはいえ、伊良部のキャラクターに慣れてくると、なかなか面白いです。特に第3話のオーディションの場面、プッツンした広美と伊良部が係員に詰め寄る場面は最高に可笑しい。初診で話も聞かずにいきなり「注射しましょう」というのも笑いました。コメディと割り切れば、楽しめます。

しかし、この続編が直木賞とはちょっと想像しづらいな、というのが正直な感想でした。とにかく、『空中ブランコ』も読んでみようかと思っています。
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by bibliophage | 2006-03-12 00:09 | その他小説
『熊の場所』 煙か土か村上春樹
d0018433_6295515.jpg著者:舞城王太郎 
書名:熊の場所
発行:講談社(文庫)
猛進度:★★★★☆

『阿修羅ガール』で三島賞を受けた舞城氏の短編集。

1.「熊の場所」: 小学生の僕は「まー君」が猫を殺しているのを知ってしまった。その恐怖に打ち勝つために、僕は彼と友達になった。この村では、次に犬がいなくなり、ついに人間まで行方不明になった。
2.「バット男」: バットをやたらに振り回しては、逆にみんなにいじめられているいかれた男。僕の同級の亜紗子はその「バット男」とやったらしい。彼女はバスケ狂いの大賀が大好きで、彼の気を惹きたいがために他の男と仲良くしてしまうのだった。
3.「ピコーン!」: 哲也と私は暴走族の仲間。哲也はケンカっぱやいけど、セックスは最高。でもIQの高い私は、この状況から脱出しようと大検の勉強をする。哲也にもきちんと働いて欲しい私は、彼に頼まれるままに唇で奉仕する。

相変わらず、1文の長い特異な文体が、機関銃のようなリズムで、炸裂していきます。サーフィンをするようにこの文章にうまく乗れれば、舞城ワールドを堪能することができるでしょう。

私はこの中では表題作「熊の場所」が最も面白く、何やら村上春樹作品をイメージしてしまいました。それは、内容をほのめかしながら進む文章や、「熊を射殺する」という象徴的エピソードを挿入してある構成、のためではないかと思います。井戸の中の描写もあったし…。って、全然似てないかもしれないですが…。
また、男の子が発達の段階で通過する同性愛的な傾向や、性のめざめについての描写が、素晴らしいと思いました。

バット男」は一言で言うと、「ボーダーライン」の女性の話。前半と後半のつながりがイマイチよくわかりませんでした。
ピコーン!」は、4文字言葉が頻出・続出。カラッとした描写なのであまり気にはなりませんが…。推理小説仕立てのところは 『煙か土か食い物』 風で、犯人像は 『阿修羅ガール』 風でした。この作品中に村上春樹の引用あり。

文庫185ページなのでサクッと読めてしまいます。
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by bibliophage | 2006-03-10 06:33 | その他小説
『陽気なギャングが地球を回す』 5月に映画が公開
d0018433_1125666.jpg著者:伊坂幸太郎 
書名:陽気なギャングが地球を回す
発行:祥伝社(文庫)
疾走度:★★★★★

伊坂氏の三作目が文庫化。

銀行強盗の四人組。人の嘘を見抜ける成瀬。演説好きで大ぼら吹きの響野。人よりも動物が大事なスリの久遠。精巧な体内時計を持つ雪子。そんな彼らが大仕事を終えた直後、別の事件に巻き込まれ、成果を横取りされてしまう。彼らはその金を取り戻せるのか?

これは面白いですねえ。
4人のキャラクターが立っていて、皮肉な会話の応酬がユーモアにあふれています。ところどころに謎が配置されて、徐々にそれが解かれていく。また伏線として出てくる変な品々、中から開けられない車やストロボなしで撮れるカメラなど、が最後に効いてくる。裏の裏を読みあう展開と最後のカタルシス感。
文句がつけられないデキの作品だと思いました。

銀行での響野のセリフ、「その通り!あなた方の現実に私たちはほんの少しだけ侵入したのです」が演劇調で最高に渋いと思いました。

同作者の『砂漠』は、読書の達人の間では高い評価を得ていましたが、私にはピンときませんでした。『魔王』辺りから失速しているのでなければいいのですが…。
それはともかく、本作の続編も出るようですし、伊坂氏の新作にはいつも注目しています。
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by bibliophage | 2006-02-25 11:08 | その他小説
『スープ・オペラ』 おいしい小説
d0018433_12504897.jpg著者:阿川佐和子 
書名:スープ・オペラ
発行:新潮社
ソープオペラ度:★★★★☆

エッセイスト阿川氏の長編小説。

主人公ルイは35歳独身。叔母であるトバちゃんとずっと二人暮らしを送っていた。でもある日突然、トバちゃんは彼氏ができて、家を出ることになった。それから一ヶ月、ルイは60台の画家トニーさん、若い編集者康介の二人と出会い、三人による奇妙な共同生活が始まった。

私は、インタビュアーとしての阿川さんの大ファンです。週間文春の対談「この人に会いたい」は必ず読みます。あのインタビューの魅力は、阿川さんの下調べの見事さと人間性の前に、相手の本質があぶり出されていく点だと思います。ちなみに今週は茂木健一郎さんでした。

さて本書ですが、場面場面で料理、特にスープがいろいろと出てきて、とても食欲をそそる内容でした。soap ならぬ soup opera なんて上手いタイトルですね。
主人公が受動的な性格のせいか、話は淡々と流れていく感じですが、トニーさん、康介、タバちゃんなどのキャラクターが面白く、すらすらと読めます。
一番魅力的なのはやはりトニーさんで、生き別れたルイの実の父親なのかという謎もあり、かつ「センセイの鞄」的な雰囲気も漂って、不思議な人物でした。

作品には作者の内面が少なからず反映されると思いますが、性格はいいけれど、ちょっと覚めている感じの主人公ルイはまさに阿川さんのイメージでした。登場人物が、俗物の小説家を含めて、結局は良い人として描かれるという点は、個人的には好みではありませんが、これも作者の世界観を反映しているのでしょう。

ほのぼのと温かい作品が好きな方にはおすすめできると思います。
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by bibliophage | 2006-02-11 12:54 | その他小説