ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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カテゴリ:その他小説( 65 )
『銀齢の果て』 「バトル・ロワイヤル」老人版
d0018433_1122716.jpg著者:筒井康隆 
書名:銀齢の果て
発行:新潮社
阿鼻叫喚度:★★★★☆

筒井氏18番のスラップスティック。

和菓子屋のご隠居宇谷九一郎(77歳)は、囲碁仲間である正宗忠蔵(78歳)を射殺した。宮脇町5丁目が、厚生労働省による老年人口抑制のための「シルバー・バトル」地域に指定されたからだ。70歳以上で生き残れるのは1人だけ。壮絶なサバイバル・レースが始まった。

わはは。
高齢者問題と高見広春「バトルロワイヤル」を混ぜ合わせてドタバタ小説にするというアイデアが面白いです。

展開が単調になりがちなところを、さすがにいろいろなバリエーションを屈指して話を進めていきます。マンホールに隠れる元コビトプロレスのレスラーとか、猟友会のメンバーの野山をかけめぐる銃撃戦とか、エロ神父が処刑されるとか…。

期日があと二日に迫ると、もう町内は大混乱。焼き討ちはされるわ、動物はかり出されるわ、この辺りが最高に可笑しい。電車の中で読んでいると吹き出してしまって困りました。

こんな、反社会的でブラックな話は筒井氏でないと書けないですね。いやあ、楽しませてもらいました。
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by bibliophage | 2006-02-04 11:05 | その他小説
『チューイングボーン』 小説の長さと密度
d0018433_1193532.jpg著者:大山尚利 
書名:チューイングボーン
発行:角川書店(文庫)
緊密度:★★☆☆☆

第12回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。(大賞は 『夜市』)

登はある日、大学時代の同級生里美に不思議な仕事を頼まれた。それは小田急ロマンスカーの展望室からビデオの撮影を3回することだった。だが驚くことに、その撮影をするときには必ず人身事故が起きた。この仕事と事故との間に関係はあるのか?

『夜市』と競った最終候補作ということで、期待しながら読みました。
結果は、……残念!という印象でした。

プロットとオチはユニークでした。受賞の理由はそこにあると思います。それは認めます。
ですが、問題は無駄な描写が延々と続くこと。主人公の苦悩の独白と堂々巡りの行動がかなりの部分を占め、なかなか展開しません。審査の荒俣氏も、事件のワンパターン性を問題にしていました。
途中で斜め読みに切り替えても全く問題なし。要するに短編から中編にすべき作品を長編で書いたのが、密度の低くなった理由だと思います。林氏の「純文学系でも高評価されるだろう」という選評には、首をかしげざるを得ません。
次回作では、すぐれた発想を生かしてもう少しがんばって欲しいところです。
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by bibliophage | 2006-01-21 11:15 | その他小説
『バスジャック』 異次元のインパクト
d0018433_0543826.jpg著者:三崎亜記 
書名:バスジャック
発行:集英社
笑劇度:★★★★★

『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞した三崎氏の2作目。

・ある日、私は町内会のオバサンに「2階扉をつけるように」と注意された。「町内でお宅だけがついていない」とのことである。(「2階扉をつけてください」
・最近「バスジャック」がブームになっており、今、私もそのさなかにいる。(「バスジャック」
・私は動物園に仕事にやってきた。その内容は珍しい動物の展示である。(「動物園」

先週の週刊文春で藤田香織氏が絶賛していたので、迷わず読みました。
結果、面白くてびっくりしました。

上記3編に、「しあわせな光」「二人の記憶」「雨降る夜に」「送りの夏」を加えた計7つの短編集。
どれも発想が斬新で、若干日常を逸脱しているところがポイントです。
風景描写も細やかだし、文章も素晴らしい。

私は特に上記3編が気に入りました。これらはすべてユーモアが密度高く詰め込まれていて、おもわず吹き出したりニヤニヤしたりしてしまいました。
「バスジャック」を読んでいると、この人は筒井康隆を継げるのではないかと感じたりもしました。
と思うと、雰囲気のあるショートショートがあるし、恋愛や死を取り上げた話があるしで、実に多彩な作家だと思いました。

これは、いきなり前回の直木賞にノミネートされたのもうなずけます。
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by bibliophage | 2006-01-17 00:51 | その他小説
『ぬしさまへ』 妖怪捕り物帖
d0018433_1382424.jpg著者:畠中恵 
書名:ぬしさまへ
発行:新潮社(文庫)
軽妙度:★★★★☆

第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞『しゃばけ』の続編。

江戸の回船問屋長崎屋の若だんな一太郎は気が優しくて病気がち。でも、祖母のぎんが三千年生きた妖(あやかし)だったせいで、若だんなの周りには、手代の佐助・仁吉をはじめとして、世話をしてくれる妖がたくさん集まっている。先ほどあった火事の折に、小間物商の娘が殺された。妖たちの助けを借りて、一太郎は事件の犯人を捜す。

主人公が病弱で、それを妖怪たちが助けるという不思議な設定です。
 1. ぬしさまへ  2. 栄吉の菓子  3. 空のビードロ
 4. 四布の布団 5. 仁吉の思い人 6. 虹を見し事

以上の6つの短編で、一太郎が車椅子探偵で、妖たちがその手下のパターンが多いです。
いずれもよく考えられた筋書きで、江戸情緒も、人情もあり、ミステリー仕立てになっています。このなかでは、5.が一番気に入りました。

ちょっと若だんなのインパクトが弱いのと、妖たちが物事をさっさと調べてしまうので、最初は話が軽量級な感じがします。読み進んでキャラに慣れてくると、それが軽妙に思われて、なかなか味わい深く感じられました。

藤田香織氏による解説がツボを押さえた内容で、漫画の『百鬼夜行抄』との設定の類似性など、いろいろとよくわかりました。

文庫の帯についているマークを切り取って「鳴家(やなり=小型の妖怪)てぬぐい」プレゼントに応募してみました。
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by bibliophage | 2006-01-13 01:45 | その他小説
『夜市』 プロットが全く新しい作品
d0018433_12385788.jpg著者:恒川光太郎 
書名:夜市
発行:角川書店
斬新度:★★★★★

第12回日本ホラー大賞受賞作。さらに、いきなり直木賞の候補に!

大学生のいづみは高校の同級生裕司に不思議な夜の市に誘われた。裕司の目的は、幼少時にいなくなった弟を買い戻すことだった。彼らは穏やかな老紳士に出会い、人さらいの店をみつけだした。夜市から出るためには、必ず何かの品を買わなければならない。裕司は弟を連れて帰れるのか。(『夜市』)

これは、面白いです。
辛口の審査員3名、荒俣、林、高橋各氏とも珍しく絶賛していました。
文章は淡々としているのに、情景が浮かんでくるようだし、何より話の構成がユニークです。物語の途中でオチがわかるのですが、よく考えられているなぁ、と感心。こんな話は聞いたことがありません。
スプラッターのホラーの対極にあるような、ダーク・ファンタジーという印象でした。
日本ホラー大賞(特に短編)は本当にレベルが高いです。

書き下ろしの『風の古道』も、不思議な異空間の道に紛れ込んだ少年たちの話です。雰囲気は『夜市』に似ていますが、趣向は全く異なり、こちらも楽しめました。
(一ヶ所、「全体的な状況では正当防衛かもしれないが…」のくだりは12歳らしくない物言いですねぇ。triviaですが。)

次回作がとても待たれるところですが、今度はかなり毛色の違うものを書く必要がありそうです。その時は、また直木賞候補になって、朱川湊氏に続くかもしれません。(さすがに今回は無理でしょう。)
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by bibliophage | 2006-01-09 12:41 | その他小説
直木賞(+芥川賞)候補作発表と受賞作予想
第134回直木賞候補作が発表されました。 (・文芸春秋HP

伊坂幸太郎 「死神の精度」 (文藝春秋) 候補4回目
荻原浩 「あの日にドライブ」 (光文社) 1回目
恩田陸 「蒲公英草紙」 (集英社) 2回目
恒川光太郎 「夜市」 (角川書店) 1回目
東野圭吾 「容疑者Xの献身」 (文藝春秋) 6回目
姫野カオルコ 「ハルカ・エイティ」 (文藝春秋)3回目

さて、いろいろなblogで予想がされています。同情票を含めて東野圭吾氏が一番人気のようです。私の予想は…東野・恩田のW受賞です。

元々、文芸春秋による文芸春秋のための賞なので、過去の受賞も候補も圧倒的に文芸春秋社の本が占めています↓。

第121-133回の受賞率(受賞作数/候補作数):
集英社2/10 講談社2/12 文芸春秋10/26 新潮社3/9 マガジンハウス1/2
角川1/7 幻冬舎0/5 中央公論0/2 徳間書店・朝日新聞社・毎日新聞社各0/1

また、受賞までの候補回数:38/19=平均2回
(参考: 直木賞のすべて

最近3回が文芸春秋の単独かW受賞
なので、見た目の公平性とバランスに配慮すれば、文芸春秋の単独受賞またはW受賞の可能性は低い、と考えられます。文芸春秋から3作と他社から3作候補が選ばれているので、1作ずつの受賞が妥当ではないかと思いました。

文芸春秋の方は、わざわざ6回目でもノミネートされたことと、作者自身のベスト3と思われるデキから考えて、他の方の予想通り東野氏でしょう。(今回の結果に最も関心を持っている作家は、東野氏のライバルで過去4回候補になっている真保裕一氏ではないかと思います。)
他社の方は、恒川氏は初回でホラーなので、当て馬。萩原氏と恩田氏では、どちらも甲乙つけがたい人気作家ですが、出版社の(賞候補)実績と2回目候補であることから恩田氏が選ばれると思います。

芥川賞候補作は読んでおらず、全くわかりません。話題性の追求を第一として、松尾スズキ氏でどうでしょうか。
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by bibliophage | 2006-01-05 20:27 | その他小説
『金春屋ゴメス』 ユニークな設定の時代小説
d0018433_647102.jpg著者:西條奈加 
書名:金春屋(こんぱるや)ゴメス
発行:新潮社
ファンタジー度:★★★☆☆

第17回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

近未来、「江戸」は北関東から東北にまたがる領土を持ち、日本から独立した国だった。辰次郎は運良く江戸入国を果たし、奉行所の配下として働き始める。江戸では鬼赤痢と呼ばれる伝染病が流行っていた。辰次郎は奉行のゴメスの指示の下、その原因を探り始める。

設定がとてもユニークです。タイムスリップせずに同時代に昔の江戸を存在させた点。大賞受賞の理由はまさにこの構想にあると思われます。
登場人物では奉行のゴメスの存在感が際立っており、冷酷無比、非道のむくつけき親分で、仁王のようなイメージです。そのくせ実はXXXであるというのも意外性があり笑えます。

江戸時代の風俗・考証も色々と考えられていて丁寧に書かれているという印象を受けました。また、感染症ネタの落とし所も納得できるものでした。

ただ、メインの話は全く普通の時代小説であり、これがファンタジーノベル大賞だと言われるとやはり違和感が…。もう少し現代とのずれをストーリーに組み込まないと、構想倒れといわれかねないと思いました。

かの 『後宮小説』 や 『バルタザールの遍歴』 を輩出した輝かしい同賞の過去を考えると、少し寂しい気がしました。
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by bibliophage | 2005-12-28 06:48 | その他小説
『砂漠』 新たな青春小説に感動…なんてことは、まるでない。
d0018433_122215.jpg著者:伊坂幸太郎 
書名:砂漠
発行:実業之日本社
青春度:★★☆☆☆

伊坂氏の一年半ぶりの書き下ろし長編。

仙台の国立大学に入学した僕(北村)。僕には、遊び好きの鳥井と愚直な西嶋という友人ができた。僕らは、無口で超能力を持つ南、クールビューティーの東堂の二人の女性となぜか麻雀を打つ。僕たちはその後、ある事件に巻き込まれ、鳥井が大怪我をする。

う~む。期待して読むと大きくはずれると思います。
大学の新入生の話というのは、非常にありふれた題材であって、そこを伊坂氏がどう料理するかが見物。しかし、最初の「春」の章では何も事件は起きないし、謎も提示されません。

キャラクターはそれなりに立っています。西嶋に存在感があって、行動の意外性が面白い。しかし、モデル並の容姿の女性がこういう変な男に惹かれる、という設定がまた漫画的というか、よくある話だと感じられました。
「夏」の章から事件が起きていきますが、常に話は淡々と流れていきます。最後に鳥井の活躍する場面でようやく盛り上がりが見られました。

相変わらず文章は軽やかでノリがいいのですらすらと読めます。ですが、全体的にはTVドラマのノベライズといった印象でした。
直木賞候補だった伊坂氏、こんな調子で大丈夫でしょうか?
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by bibliophage | 2005-12-16 01:07 | その他小説
『陰陽師 飛天の巻』 心地よきワンパターン
d0018433_1275567.jpg著者:夢枕漠 
書名:陰陽師 飛天の巻
発行:文芸春秋(文庫)
キャラクター造形度:★★★★☆

夢枕氏の人気シリーズ第二段。

1.天邪気、2.下衆法師、3.陀羅尼仙、
4.露と答へて、5.鬼小町、
6.桃薗の柱の穴より児の手の招くこと、
7.源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと


だいたい以下のようなパターンで話が進行します。

博雅が一人で晴明の屋敷を訪れる→季節に合った庭の草花の描写→女の式神が出迎える。博雅からかわれる→縁側で晴明と博雅酒を酌み交わす→呪(しゅ)の話か音楽の話をする→「今日は何の用で来たのか?」と晴明が尋ねる→用件(どこかの屋敷で奇怪なことが起きる、ある人が変なものに憑かれているetc)を博雅が伝え、「お前の方面の話だから…」と言う→晴明承諾し、「ゆこう」「ゆこう」と二人で出かける……(事件解決する)…。

風景描写はとても細密で、「針よりも細く、絹糸よりも柔らかな雨が音もなく注いでいた」などと書かれます。
独特の副詞が出てきて、「ゆるゆると行く、ほろほろと酒を飲み干す」など。
「痛い」と「ああっ」が「あなや」と表現されます。
鬼が醜い正体を現したり、人を食ったりする場面は流石に上手くて気味が悪いです。
晴明と博雅の友好が何やらゲイっぽく感じられるのですが、まあ気にしないということで。

ワンパターンなのですが、キャラが立っているというのか、鬼退治のカタルシスが痛快なせいか、つられて読んでしまいます。十津川警部とか浅見光彦にはまるのと似たようなものなのかも知れません。
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by bibliophage | 2005-11-19 01:30 | その他小説
『陰陽師』 安倍晴明:遅ればせながらMy Boom
d0018433_2227832.jpg著者:夢枕漠 
書名:陰陽師
発行:文芸春秋(文庫)
魑魅魍魎度:★★★★☆

伝奇小説の巨匠、夢枕氏の人気シリーズ。映画化、ドラマ化、漫画化されています。

漫画「今昔物語」を読んで以来、遅まきながら安倍晴明に興味を持ちました。

目次:1.玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること、2.梔子(くちなし)の女、3.黒川主、4.蟇(ひき)、5.鬼のみちゆき、6.白比丘尼


1. の最初は今昔物語のまんまで、若年の晴明が鬼を見た話、法師が晴明を試した話、蛙を葉っぱで殺した話、が出てきます。
その後に源博雅を晴明の親友として登場させたのが、夢枕氏一流の想像力の技であり、このシリーズが人気を博した理由の一つです。作者のいうようにワトソン役ですね。
2. はただのダジャレでイマイチですが、それ以外の話は鬼(化け物)の恐さとスプラッターの不気味さと晴明の術によるカタルシスがない交ぜになっていて独特の魅力にあふれています。個人的にはもう少し式神(晴明が操る鬼神)を自由自在に使って欲しいと思います。
d0018433_22272423.jpg野村萬斎主演の映画もレンタルして見ました。映画では蛙の代わりに蝶を葉っぱで切るエピソードに代え、6.の「白比丘尼」を小泉今日子扮する青音という女性に変形し、5.で出てきた帝の寵愛を受けた女の化身をシリーズ続編の「生成り姫」と合成(?)して登場させていました。(あの「生成り」の顔はちょっと…)。とにかく、映画化に当たって色々と工夫がなされていることがわかります。

残念なのは映画ではおどろおどろしさが足りないこと。スプラッターはちょっとマズイとの判断でしょうね。

岡野玲子さんの漫画も読んでみたいと思います。
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by bibliophage | 2005-11-13 22:35 | その他小説