ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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カテゴリ:その他小説( 65 )
『ネコソギラジカル(下)』 ネコナデ・コンサーヴァティブ
d0018433_1275835.jpg著者:西尾維新 
書名:ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い
発行:講談社
急進度:★★☆☆☆

「戯言シリーズ」最終章、ついに完結。

玖渚友は、ぼくの鎖を解いて離れていった。一方、想影真心は骨董アパートを粉々にして姿を消した。真心を救えるのはぼくしかいない。一計を案じたぼくは、そこに狐面の男も引きずり込んだ。そして戦いは終わり、4年の月日が流れた。


う~む。正直、これで終わりか?という印象です。
戯言シリーズは「ネコソギラジカル」しか読んでおらず、玖渚友といーちゃんの出会いや、哀川潤や零崎人識の以前の活躍など全く知らないので、物語の全体を通した面白さというのは私にはわかりません。
それでも敢えて言えば、この(下)は話の起伏が無さ杉では? (中)で狐さんがいーちゃんとの戦いを放棄した時からそんな予感はしていましたが…。

第17幕「長いお別れ」はホントに長かった。よくここまで引っ張れるなぁと筆力に感心。
人識は全く何もしないし、「13階段」といーちゃんが一所で共同生活するという擬似家族の展開には苦笑。
筋バレになりますが、「人類最強」と「人類最終」が体育館で最後の決闘というのも、狐さんの言うように「小芝居茶番劇」という印象でした。

これだけの人気シリーズになると、作者もおいそれとドラスティックな展開とラジカルな結末にはもって行けなかったのではないかと思います。まあ後味は悪くないのでコアなファンには納得な閉め方なのかも知れません。
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by bibliophage | 2005-11-12 01:37 | その他小説
『弁頭屋』 久しぶりの猟奇+幻想小説
d0018433_2282336.jpg著者:遠藤徹 
書名:弁頭屋
発行:角川書店
異形度:★★★★☆

あのホラー小説大賞 『姉飼』 の遠藤氏による生理的恐怖短編集。

1.「弁頭屋」いつも校門まで弁当を売りにくる美人の双子。その弁当の特徴は…。
2.「赤ヒ月」体育館の裏で高槻先生が男子生徒を食べていた。
3.「カデンツァ」妻の恋人は炊飯ジャー。
4.「壊れた少女を拾ったので」死にかけたペットの放置場に少女は座っていました。
5.「桃色遊戯」ピンク色のダニが世界中を覆い始めた。


「食べる」ということに焦点を当てて、その陰の面を抽出したような話が多いです。1.2.や4.など。食事前に読むのは避けたいところですねw。
1.2.はありふれた日常の光景の中に、突然非日常の世界が入ってきていて当たり前のように存在しているという構成が不気味でした。
4.に出てくる「セミのジャム」というのは最高に気持ち悪かった。
3.はぶっ飛び過ぎる設定なのに、読んでいるうちに普通の恋愛小説のように思えるのが不思議でした。
この中では、やはり表題作の1.が最も面白いと思いました。

この人の作品は内容は猟奇的ですが、文章はうまくて読みやすいと思います。
長編の構想を練って、現代の夢野久作を目指してもらいたいものです。
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by bibliophage | 2005-11-10 02:32 | その他小説
『血液魚雷』 日本のSFのレベルがわかる作品
d0018433_23194531.jpg著者:町井登志夫 
書名:血液魚雷
発行:早川書房
斬新度:★☆☆☆☆

小松左京賞受賞歴のある町井氏の作品で第三回「このミス」大賞の最終候補作。

20代の女性が心筋梗塞で洞西病院へ運び込まれた。放射線科医の石原祥子は、最新鋭の血管内観察用カテーテル「アシモフ」を使ってその原因を探ろうとする。そこに映し出されたのは今までに見たことのないようなものだった。

まずコンセプトが古い。次に展開が小さくて遅い。ところどころ医学的にミスがある(と思われる)。人物が平板である。謎解きが全くない。
結論:残念ながら(私には)全く面白くありませんでした。 期待してたんですが…。
あ、文章はうまいと思います。ナナメ読みでも何とか最後まで行けたので。

この作者が小松左京賞なのだから現在の日本のSFのレベルは推して知るべし。
「このミス」最終候補になった理由は何なのでしょうか?左京賞のネームバリューか?
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by bibliophage | 2005-11-02 23:27 | その他小説
『魔王』 政治と超能力
d0018433_16453666.jpg著者:伊坂幸太郎 
書名:魔王
発行:講談社
腹話術度:★★★★☆

死神の精度』で人気絶頂の伊坂氏の新刊。「魔王」と続編の「呼吸」を収録。

世の中が反米、反中国の全体主義的雰囲気に包まれはじめた近未来の日本。野党党首犬養は、その空気に乗じて未来党の勢力を伸ばしていく。その流れに違和感を感じる安藤兄弟。ある日、兄は自分が頭の中で思ったことを他人に喋らせる能力があることに気づく。彼はその力を使って犬養と対決することを決心する。


近未来の形を取っていますが、右系化、憲法改正論議といった現在の日本の状況をもろに反映した内容の話です。今までの伊坂氏の作品とは一線を画すストーリーで賛否両論を巻き起こしそうです。
私は「面白かった」という印象を持ちました。小説家というものは村上龍とまではいかなくても同時代性を持った作品も書くべきと思います。
「鷹の定点観測」の話がユニークで興味を引きました。

「呼吸」の最後は憲法改正の投票の場面ですが、おそらく続編が書かれるのではないかと思われます。ここで終わると、いくつか未解決の問題が残るからです。バーのマスターの正体とか…。
一人称の主人公が、兄→弟の彼女と変わったので、続編があれば弟になるハズです。楽しみに待っています。
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by bibliophage | 2005-10-30 16:46 | その他小説
『東京奇譚集』 春樹先生活躍中
d0018433_6551830.jpg著者:村上春樹 
書名:東京奇譚集
発行:新潮社
奇譚度:★★★★☆

2005年3月以降に発表された作品に書き下ろしを加えた村上春樹氏の最新短編集。

1.「偶然の旅人」 ゲイで調律師の青年は、カフェで自分と同じディケンズの本を読んでいる女性と出会う。
2.「ハナレイ・ベイ」 サチは、息子がサーフィンをしていて鮫に襲われて死んで以降、毎年ハワイのそのビーチを訪れていた。
3.「どこであれそれが見つかりそうな場所で」 トレーダーをしている男性が、高層マンションから跡形もなく失踪した。
4.「日々移動する腎臓のかたちをした石」 小説家の淳平は「男の一生で意味を持つ女性は3人しかいない」という父のことばが心から離れない。
5.「品川猿」 安藤みずきは1年前からなぜか自分の名前だけが思い出せなくなっていた。

1. は「僕=村上はこの文の筆者である。」という前書き風の書き出しで、いつのまにか春樹ワールドに入っていきます。しかし内容的には、なんと言うことはなく、ジャズの薀蓄がやや鼻につき、2つの偶然の一致(シンクロニシティー)が起きるという話でした。
2. は、サチが言った「エルヴィス」を、「エルヴィス・コステロ」と解した若いサーファーの反応が笑えました。全体には「わたせせいぞう」風で、奇譚の内容もありきたり。「女の子とうまくいく3つの方法」というのは必見かもw。
3. 探偵役の男性が何をするのか期待していると、実は何もしない、というのが新しい気がします。この話に限らず、「デニーズ」とか「メリルリンチ」とかやたらと実在の固有名詞が出てくるのが目に付きました。
4. 淳平はパーティーで出会ったキリエとつきあうことになりますが、この女性が透明感があるというか実在感がないというか…。春樹ファンならきっと気にいる人物だと思います。文中にすごい駄洒落がでてくるのは好感が持てました。作中に出てくる腎臓石のイメージがユニークでした。

以上の1~4まで読んでどうもピンと来なくて困っていましたが、書き下ろしの5.が圧倒的に面白かった。相変わらず比喩が冴えていて、「春の夕暮れどきの月のような微笑み」「眠りを誘う目的の低予算環境ビデオみたいな人生」とか出てきます。猿に関する細かいユーモアも笑えました。ストーリーはかなりドラスティックなw展開をみせ、はっとするようなオチもあります。たぶん典型的春樹ファン(特に女性)は「何これ~」と感じるかも知れません。私はこの作品が最も好きです。
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by bibliophage | 2005-09-21 06:55 | その他小説
『麦ふみクーツェ』 大人向けの不思議な童話
d0018433_7254240.jpg著者:いしいしんじ 
書名:麦ふみクーツェ
発行:新潮社(文庫)
純粋精神度:★★★★☆

(リクルート編集者出身の)作家+イラストレーター、いしいしんじ氏の坪田譲治文学賞受賞作品。

ある国の港街におとうさん、おじいちゃんと三人で暮らすぼく。ぼくにはときどき「とん、たたん、とん」と麦ふみをするクーツェの姿がみえる。おとうさんは変わり者の数学教師で、難しい証明問題をいつも考えている。おじいちゃんは打楽器の演奏者で、街の楽団を厳しく指導する。ぼくは指揮の勉強をするために、船に乗って大都会に出て、世界的なチェロ弾きとその娘に出会う。

最初、ストーリーはゆっくりと展開しますが、竜巻で運ばれたネズミが街に大量に降ってきてから街の歯車が狂い始めます。
大人の童話にふさわしく、おとうさんは「ねずみと素数」の考えに取りつかれておかしくなります。
また、特徴的な人物:変な曲を作り出す用務員さん、盲目の元ボクサー、一見感じのよいセールスマン、などが登場し、話をつなげていきます。
最終的には、「ぼく」は「麦ふみクーツェ」のルーツにたどりつくわけですが…。

色々な小話をはさみながら、何となく話がつながっていくところが、上手いと思いました。その小話のひとつひとつが面白くできています。「アメ玉ください」と叫ぶおうむとか、前世のことを語る男とか。こういう物語の発想には、ピュアな精神を持ち続けることが必要だと思いますが、1966年生まれの著者がいかにしてそうできるのか。感嘆します。
また、最後のコンサートの場面はなかなか感動的でもありました。

結局、「自分の持って生まれた能力・特徴にあわせて一生懸命に生きよう」というのが、童話としてのメッセージなのでしょうが、そこら辺りは栗田友起さんの文庫解説にていねいに書かれています。
同じ著者の 『プラネタリウムのふたご』 も、雑誌ダ・ヴィンチで「絶対はずさない!プラチナ本」として紹介されていました。

いしいしんじ氏HP
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by bibliophage | 2005-08-21 07:28 | その他小説
『クライマーズ・ハイ』 日航機事故から20年
d0018433_7274336.jpg著者:横山秀夫 
書名:クライマーズ・ハイ
発行:文芸春秋
リーダーズ・ハイ度:★★★☆☆

元新聞記者横山氏による、1985年日航機事故に遭遇した地方紙の記者たちの物語。

群馬の地方紙北関東新聞の記者悠木は、会社の山仲間である安西と谷川岳の難所衝立岩に登る予定だった。しかし、約束のまさにその日、日航ジャンボ機が群馬の御巣鷹山に墜落するという事故が起きた。全権キャップを命じられた悠木は山をあきらめ、連合赤軍以来のこの大ニュースの報道に全精力を注ぐ。

1. 日航機の大事故からちょうど20年がたち、ニュースバリューがある。
2. トラキチさんの横山秀夫My Best 3 投票で現在1位である。
という2つの理由で読んでみました。

気に入った点
・ 全編緊張しっぱなしのノンストップ・ストーリーの筆力は、さすが横山氏。
・ 新聞社の仕事内容について興味深く読めました。特に予定紙面が急に変わったりすることや、締め切りをめぐる攻防など。
・ 組織内部の派閥や手柄争い、足の引っ張り合いなどの駆け引きに見所がありました。
ちょっと引っかかった点
・ 悠木の記者としての能力です。クライマックスでの決断力や個人的な感情からの投書の扱いなど。(後者は設定が無理と思います。)
・ 横山作品のヒューマニズムが苦手。
・ 警察小説に比べるとどうしても事件へのかかわり方が間接的になる(当然のことですが…)。
・ クライマーズ・ハイの感覚が得られなかった。

ということで、すばらしい小説だと思いますが、My Best 3には入らない予定(それだけ全体の作品のレベルが高いということだと思います)。
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by bibliophage | 2005-08-15 07:38 | その他小説
『花まんま』 昔の大阪、そのまんま
d0018433_1035824.jpg著者:朱川湊人 
書名:花まんま
発行:文芸春秋
形而上度:★★★★☆

2002年オール読物推理新人賞を獲得してデビューした朱川氏の、あっという間の直木賞受賞作。東野圭吾はもうだめぽ…。

30年以上前の大阪の長屋街を舞台にした6編の奇妙な話。子供の地縛霊、前世を知る女の子、人を安楽死させる呪文、など。

朱川氏の子供時代の記憶に、心霊話をからめて構成されており、とても読みやすく面白い内容でした。関西生まれの私には「パルナスのケーキ」というのが、いたくなつかしく思えました。
朝鮮人、被差別地域出身者、地方の貧しい島の娘、などの人々の悲哀が、ストレートに表現されていて、とても好感が持てました。最近の小説の、意味も無くハッピーエンドにもっていこうとする傾向と違って、リアリティが感じられます。時代を昔に設定したことで可能になる表現かも知れませんが。

デビューまでの期間が長かった朱川氏ですが、文章はとても練れていて、話の落とし方も上手く、ユーモアもあり、今回の受賞はフロックではないと思います。(相手にも恵まれた感あり、文芸春秋の計算通りか)
今後の作品に期待します。
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by bibliophage | 2005-07-30 10:05 | その他小説
『31歳ガン漂流』他 これが本当のリアリティー
d0018433_23574297.jpg著者:奥山 貴宏 
書名:31歳ガン漂流、32歳ガン漂流エヴォリューション、33歳ガン漂流ラスト・イグジット
発行:ポプラ社、牧野出版
壮絶度:★★★★★

今日の新聞朝刊広告掲載の本 さんの記事を見て知りました。

31歳のフリーライターであった著者は、体調不良で病院を受診し、入院検査の結果、進行肺癌で余命2年と告げられる。彼は残された年月を文章を書くことに集中する決心をし、病気と戦いながら、雑誌での執筆とウェブでの闘病日記(↓)の更新に全精力を費やしていく。

奥山のオルタナティヴ日記31歳~ガン闘病編  
・ガンエヴォ 

いや~、すごい!壮絶な闘病生活と骨身を削る執筆態度には頭が上がりません。
最初は病院や他の入院患者に当り散らしていた著者が、最後の方では死を悟ったかのように変わっていく様子には泣けました。

2004/12/20
この間の腹部CTの結果はやはり、悪化していて腫瘍が大きくなっていた。…
ベッドのシーツの臭いを嗅ぐとなぜか心が安らいだ。病気や死を受け入れたかのように、オレは病院も受け入れてしまったというのだろうか。以前はあれほど嫌悪して抜け出そうと努力していたというのに、どうしてこんなにも穏やかな精神状態で入院を迎えてしまっているのだろう。
2004/12/21
夜はモルヒネを飲んで眠る。一日の中で、モルヒネを飲むのが唯一の楽しみのようになってきてしまっている。


しかし、「退屈な人間になってしまうから」という理由で最後までホスピス生活を拒否し、自宅で仕事を続けた奥山氏の精神力に感嘆します。
2005年4月17日に亡くなられました。ご冥福を祈ります。

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by bibliophage | 2005-07-26 23:58 | その他小説
『死神の精度』 新しい死神像
d0018433_7172270.jpg著者:伊坂幸太郎 
書名:死神の精度
発行:文芸春秋
ユニーク設定度:★★★★☆

『重力ピエロ』が直木賞候補になった人気作家伊坂氏の短編集。
売れています。ヤフーの文芸書ランキングでも初登場3位(7/5付)。最新号の週間文春にも書評あり。

雨男である・音楽が好き・日本語の言い回しが時々わからない、という特徴を持った(人間の格好をした)クールな死神を主人公とする以下の6編の構成です。彼が担当する人間は8日目に死ぬ運命にあり、それで「可」なのか、それとも死を「見送る」べきか、を判断するのが仕事です。
1. 死神の精度:企業のクレーマー担当係の女性
2. 死神と藤田:筋を通すやくざ
3. 吹雪に死神:吹雪の山荘に集まった人々
4. 恋愛で死神:イケメンでシャイなブティック店員
5. 旅路を死神:人を刺し殺した若者
6. 死神対老女:センスの良い70歳の美容師


死神の設定がとてもユニークで、この時点で面白さが保証されたようなものです。人間との会話が時々ずれるところが笑えます。
話の中に必ず謎を入れてあるところが憎く、興味をもって読み進めます。ストーリーの展開、登場人物の背景の書き方も冴えていて、とにかく「上手い」なあと思ってしまいます。直木賞は秒読みというところでしょうか。

絶対に読んで損をしない本だと思います。
と言っておいて、気になる点を少し。
8日後のことがわかる死神でなくてはならない必然性、という内容は厳密には2.「死神と藤田」だけではないかと思いました。私は6編の中ではこれが最も面白く、伏線とオチに感心しました。一方、3.の吹雪の山荘モノは、面白いしかけもなく、イマイチと感じました。
4.「恋愛で死神」。彼女が「萩原さんが家にくる」とは普通言わないのでは。
6.「死神対老女」は未来の設定になっていますが、その割に描写は現代のままで、前の話と連関させる必要性がよくわかりませんでした。死神が晴れ間をみるという展開は、このシリーズはこれで打ち止めということなのかな?

私が最も好きな伊坂作品である『オーデュポン~』と比較すると、(短編ということもあり)インパクトはやや小さめでしたが、とにかくよく考えられた連作集であり、この死神シリーズは今後も続けて欲しいと思いました。
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by bibliophage | 2005-07-15 07:21 | その他小説