ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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カテゴリ:評論( 40 )
『毒書案内』 名作~奇書テンコ盛り
d0018433_11362544.jpg著者:石井洋二郎 
書名:毒書案内 人生を狂わせる読んではいけない本
発行:飛鳥新社
幻惑度:★★★★☆

仏文化専門の東大教授石井氏による危険な本の案内書。

「ここに集めたのは基本的に…選りすぐりの劇薬ばかりですから…場合によってはそれこそ取り返しのつかない結果を招きかねません。…服用にあたってはうっかり致死量に達しないよう、くれぐれも慎重にしてください。(「まえがき」より)」

神保町の三省堂で目立つように平積みされていたので、おもわず手に取りました。

「死の誘惑」 「異界の迷宮」 「揺らぐ自我」 「迷走する狂気」 「性と暴力」 「官能の深淵」 「背徳と倒錯」の7章に分けられ、各章5冊、計35冊の作品のあらすじ、抜粋、感想が書かれています。
紹介されているのは、太宰治 『人間失格』、マン 『ヴェニスに死す』、安部公房 『砂の女』、ランボー 『地獄の季節』、ニーチェ 『ツァラトゥストラ』、バロウズ 『裸のランチ』、ノボコフ 『ロリータ』 など、かなりメジャーなものばかりです。

さすがに「星の王子さま」の訳者だけあって、いかに毒を持っているかの修辞表現の巧みさに感心しました。
三島 『金閣寺』は、「彫琢をきわめた華麗な文章と、巧緻をきわめた緊密な構成を持つ完璧な造形に加えて、「美」という観念をめぐる豊穣なアイロニーの修辞学による力を備える」と表現されます。
また、『われらの時代』 の大江と 『北回帰線』 のミラーは、「性を梃子として世界に挑みかかるような書物で、秩序の攪乱や禁忌の審判を志向する同じ血を体内に宿していた」と描かれます。
全体的には文章も平易で、ルビが多用されていてとても読みやすくなっています。

奇書では 『ドグラマグラ』 と 『家畜人ヤプー』 が取り上げられていました。私が最も思い入れのある前書に関しては、不遜ながらもう少しつっ込んで欲しいという印象でした。

ともあれ、古今の名作の梗概を語り、その魅力を流麗な文章でつづる本書は、読んでみる価値があると思います。
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by bibliophage | 2006-01-07 11:39 | 評論
『起業バカ2』 それでも起業したいという人がよむべき本
d0018433_2393811.jpg著者:渡辺仁 
書名:起業バカ2 やってみたら地獄だった!
発行:光文社
転落度:★★★★★

経済ジャーナリスト渡辺氏が書く起業の難しさ。

「バカは成功に学んで失敗し、利口は失敗に学んで成功する(本文より)」

これは面白いです。
退職金数千万をつぎ込んで借金地獄に陥った人などが実名入りで紹介されます。
いかに起業というものが難しいか、人が簡単にだまされるか、がよくわかります。

例として、薬局フランチャイズの「ラゴラ」。薬局オーナー74人が計10億円の被害を受けています。ほとんどが商売にド素人の中高年脱サラ起業家で、立派な雑誌広告と甘い売上げ予測にだまされ、加盟金、内装工事費、レセプトコンピューター納入費などを払ったものの、開店後のサポートも全く無く、数ヶ月で閉店に至っています。

その他にも、家電などの、卸し商社オーナーがパクリ屋に商品を騙し取られて倒産した例や、レンタルルーム経営に手を出して失敗し、風俗の仕事をさせられた中国人留学生など多くの例があげられています。

最後のセリフも面白い。
「そもそも素質potentialのある人間は…とうに企業している。私の本を読んでいる時間なんてない。本書を読んでいるあなたに、起業の資格なんぞない…」
しかし、それでも起業するというのなら、奨励したい、と締めています。

失敗だらけの末に成功した例も書かれており、いずれにせよ起業は生半可ではできないことを痛感しました
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by bibliophage | 2005-12-07 23:11 | 評論
『グレアムヤング 毒殺日記』 出されたお茶が飲みづらくなる
d0018433_242491.jpg著者:アンソニー・ホールデン 
書名:グレアムヤング 毒殺日記
発行:飛鳥新社
戦慄度:★★★★★

11月はじめに世間を騒がせた静岡の女子高生の薬物投与事件。彼女の座右の書。

「おそらくぼくは彼らを人間として見ることをやめてしまったんだと思いますーというか、正確を期すれば、ぼくの一部がそうしたということですが。彼らはモルモットになっていたのです(本文より)」


「グレアム・ヤングの毒物歴:
0歳 生後3ヶ月で母結核で死亡。
2歳 父フレッド、モリーと再婚。
9歳 香水、マニキュアの瓶を集める。ナチ、黒魔術、犯罪などに興味を持つ。
12歳 化学・毒物学の専門書を読み漁る。愛読書『被告席の毒殺魔』。
13歳 薬剤店でアンチモンを購入。友人が腹痛、嘔吐を頻回に起こす。
   義母、体調をくずす。
14歳 姉、ベラドンナ中毒の症状。グレアム、タリウムを購入。義母、死亡。
   父も嘔吐・腹痛のため入院。父、グレアムを疑いだす。
   理科の担任がノートを見て、机の中の毒物に気づく。
   グレアム逮捕され、狂人犯罪者を収容するブロードムア病院へ送られる。
・・・・・・
23歳 品行方正な振る舞いにより刑期短縮で釈放。職業訓練所に通う。
   訓練所の友人が腹痛を起こす。
   光学器械製造メーカーに就職。グレアムお茶を配って歩く。
   グレアムの上司2人、腹痛・下痢・神経症状で入院し死亡。
   同僚2人は足の痛み・腹痛・脱毛を訴える。
   専門家は死亡した上司の症状を「タリウム中毒」と診断。
   グレアムの過去がスコットランドヤードに照会され、逮捕される。
・・・・・・
42歳 刑務所内で心臓発作により死亡。」

女子高生とグレアム・ヤングは、以前の薬物犯罪者を崇拝し、肉親をもモルモットとみなして毒物を投与した点はそっくりです。恐ろしいのは投与した相手に対し、憎しみの感情がないこと。淡々と毒を与えて平気な点です。まさに人格障害です。ヤングが初回に逮捕された時、鑑定した精神科医は「再犯の恐れが高いので早期に釈放してはいけない」と正しい判定をしていたのに、それはいつしかうやむやになってしまいました。女子高生の場合はどうでしょうか?

ヤングの逮捕が遅れた理由は、初回は「まさか14歳の子供が、肉親に毒物を投与することはない」と思われたこと、2回目は「風土病の感染症と間違われた」ことと「医者がタリウム中毒の症状を知らず診断ができなかった」ことです。
ヤングは自慢したがりの虚栄心を我慢できずに逮捕につながった点がありますが、もう少しクールだったらさらに被害者は増えていたことでしょう。

本書は事件直後の2~3週間前は品切れだったので図書館で借りましたが、現在増刷されているようです。チャールズ皇太子の伝記で知られるホールデン氏の出世作であり、訳もとても読みやすい。人間の心の闇を見つめることのできる本書は、一読に値すると思います。

1994年映画化されています。  
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by bibliophage | 2005-11-30 02:44 | 評論
『本業』 タレント本をいじり倒す
d0018433_23571150.jpg著者:浅草キッド 水道橋博士 
書名:本業
発行:ロッキング・オン
文才度:★★★★★

水道橋博士によるベストセラー「タレント本」の書評集。

「タレント本とは、「…払いきれない有名税に対するタレント本人による青色申告書」である(序章より)」


ダカーポのコラムはいつも面白いと思って読んでいますが、この本を読んで博士の文章芸の巧みさを再認識しました。
矢沢栄吉、松本人志、島田紳助、杉田かおる、らの自伝を取り上げて、TV番組などでの自分たちとのエピソードをからめて、内容を紹介、批評しています。

諸星和己のところでは、「「光GENJIは「光通信」の如く…バブルアイドルだったかもしれない」と書き、飯島愛の章では、「銀行の「不良債権」とは逆に、芸能人の「不良体験」は…巨万の富を生み出す」とシャレをかまします。
文章にスピード感があり、内緒話的なエピソード満載で、知的なオチも入れる、というとても漫才師とは思えない文才です。
なべやかん、ガッツ石松、関口房朗の箇所が特に興味を引きました。

取り上げた本の発売時期がやや古くなっているのが玉にキズですが、TVで色々な番組を持っている博士ならではの面白い内容だと思います。
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by bibliophage | 2005-10-28 23:58 | 評論
『ほとばしる副作用』 アイドル願望を持った女オタク
d0018433_8131465.jpg著者:辛酸なめ子 
書名:ほとばしる副作用
発行:文芸春秋(文庫)
妄想度:★★★★★

一度聞いたら忘れられないタイトル(と筆者名)。なめ子氏のアイドル妄想エッセイ集。

「(加護亜依の)無自覚で無邪気な挙動は、男のロリコン魂を刺激するだけでなく、大人の女の子宮をも直撃する可愛さにあふれています(本文より)。」


アイドル万華鏡』を読んでいて、女性アイドルに対する屈折した思いがにじみ出ていたので、はて、この人はレズビアンなのかと思っていました。しかしこの本の解説(神林広恵氏)を読んで納得。
教師の両親に厳格に育てられ過ぎた結果、自身のコンプレックスとアイドル願望が昂じて、主に女性アイドルに対する妄想と下ネタを屈指した独自のエッセイ世界を作り出している、ということのようです。

この本では、ブリトニー、アヤパン、ベッキー、奥菜恵、優香、などを取り上げ、必ず文の後半でぶっ飛んだ妄想世界が描かれ、ヘタウマ(?)な漫画が脱力を誘います。
また「脳内セラピー」の中の「生理」についての記述が面白く、ここまで書く女性は珍しい。まさに面目躍如といったところでした。
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by bibliophage | 2005-10-10 08:14 | 評論
『妄想人生』 作家と学者の中間的存在
d0018433_15155394.jpg著者:島田雅彦 
書名:妄想人生
発行:毎日新聞社
サヨク度:★★★★☆

作家二十年選手の島田氏によるサンデー毎日の連載エッセイ。原題「気宇壮大のススメ」。

「小説家はあらゆる職業のターミナルといわれる。小説家なんてさまざまな職業を転々として、最後に辿り着けばいいのだ。(本文より)」


島田氏の文学作品は未読でした。知っていることは、芥川賞候補に何回もなって取りそこね、女性に人気で、料理が得意なこと、です。
このエッセイを読むと、流れるような軽妙な文章で、料理だけでなく、政治、クラシック、歴史、アダルトなどについて、薀蓄を傾けながら、しっかり自分の意見を語っている、という印象を受けました。ちょっと気取ったシニカルなところもいい感じです。
「プロ意識の高い娼婦は優れた女優たらねばならない」
「神話や歴史に人間の感情や生活のディテールを肉付けするとにわかに物語となって立ち上がる」
とか。

作家というより、文化人という趣きですが、演劇や詩でも活躍していたのですか。
法政大国際文化学部教授。偉いヒトなんですね。
2chの自分に関するスレッドを読んで腹を立てているところなども好感が持てました。

ちょっと自分の認識不足を恥じて、「彼岸先生」でも読もうか、と思います。

島田雅彦氏のHP
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by bibliophage | 2005-10-08 15:16 | 評論
『LEONの秘密と舞台裏』 勝ち続ける編集長の秘密
d0018433_9512530.jpg著者:岸田一郎 
書名: LEONの秘密と舞台裏
発行:ソフトバンクパブリッシング
自信度:★★★★★

主婦と生活社の 「LEON」 「NIKITA」 両誌のカリスマ編集長、岸田氏による雑誌を成功させる方法。

「私は雑誌作りにおいて、他誌を手本とするつもりはなく、常にオリジナリティを大切にします。(第3章より)」


これは面白い!編集者だけでなく、すべてのビジネスマン必読の書ではないでしょうか。

岸田氏は、まず家庭画報社で「BIGMAN」の編集者となり、株式マンガ本をヒットさせます。次に20代男性向け雑誌「BEGIN」を編集長として成功させ、関連誌を立ち上げます。そして会社を移り、高級メンズ誌に挑戦することになったわけです。

40-50代で年収1500-2000万(!)の層をターゲットに、「実用性」を重視した高級ブランドを扱うライフスタイル誌
というコンセプトで、2001年勝負に出ます。
勝負といっても戦略が実に綿密に計算されており、10万部前後の売上げに対して、その2倍の収入が広告から入っています。

今までほとんどの雑誌を成功させてきた岸田氏に言わせれば、失敗ばかりするのは「再販制度と取次ぎシステムにつかりきって経営感覚のない、権威主義的な古い」編集者ということになります。
「勝てば官軍」式に見えますが、周到な準備とリスク回避能力、経営センス、独創性、すべて兼ね備えた岸田氏でこそ、この成功があったことは間違いありません。
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by bibliophage | 2005-10-01 09:55 | 評論
『アイドル万華鏡』 アイドル、メッタ斬り!
d0018433_1905583.jpg著者:辛酸なめ子 
書名:アイドル万華鏡
発行:コアマガジン
痛快度:★★★★☆

漫画家、コラムニストの辛酸なめ子氏による容赦ないアイドル評。

「伊東美咲: ヌメった唇のアップは淫靡であからさまに女性器を象徴…
小倉優子: 綿矢りさ以外にも様々のバーチャルライバルを設定し…
竹内結子: 埼玉オーラを引きずっているせいか、服装がオシャレすぎないというのも…」

以前から面白いコラムを書くなぁと思っていました。これはその集大成。
上記以外にも、広末のクスリネタや牧瀬里穂と東山紀之の関係などイロイロ書かれています。文章がブラックでシニカルなユーモアにあふれています。「~しているかのようです、~かもしれません」などのソフトで主観を排したような語尾を多用し、その実、しっかり対象をコケにしているところが特徴です。
女性アイドル以外にも、クリスチャン・ラッセン(画家)とか東儀秀樹、氷川きよしなどが面妖な表現で評されていました。

この本は「BUBKA」などのアングラ雑誌に掲載された文章なので好き勝手に書いていて楽しめます。
しかし、週刊文春のコラム「ヨコモレ通信」は欠かさず読むのですが、どうもメジャーになるにつれて色々執筆に制限が出てくるらしく、最近はイマイチ切れがよくないのが心配です。
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by bibliophage | 2005-09-25 19:01 | 評論
『ブス論』 日本の歴史におけるブスの存在
d0018433_7112896.jpg著者:大塚ひかり 
書名:ブス論
発行:筑摩書房(文庫)
資料充実度:★★★★☆

古典エッセイスト大塚氏による太古から現代までの文献に書かれた「ブス」の意義について。

1. 神話時代:醜女化したイザナミは人の寿命を左右する「パワー」を持った存在。
2. 平安初期:仏教普及により、悪業の報いとしてのブス。
3. 平安中期:「枕草子」「源氏物語」にみられる詳しいブスの身体描写。
4. 中世初期:男性・父系社会の進展による女性蔑視の影響。「性格ブス」出現。
5. 室町~江戸:おかめ、お多福がブスの主役に定着。


巻末の参考文献が大量で、そこから「ブス」の記述を拾い上げてまとめた執念は凄いと感じられました。全体にやや繰り返しが多いのが気になりましたが、「源氏」の三大ブス:末摘花、花散里、空蝉の記述など興味が持てました。

現代日本は、誰でも美を追求できる豊かさがあり、ビジュアルメディアの影響などで、ますます見た目主義が普及し、外見が重要視されている、とのこと。
著者自身は写真をみるとブスというより美人の部類ですが、147cmの低身長に強いコンプレックスを持っているそうです。「ブス」ではないだけに描写が客観的ですが、切実性(本質性)に若干欠ける感は否定できません。
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by bibliophage | 2005-09-15 07:12 | 評論
『救急精神病棟』 精神科医療の現在
d0018433_6344110.jpg著者:野村進 
書名:救急精神病棟
発行:講談社
苦闘度:★★★★☆

ノンフィクション・ライター野村氏が最先端の精神病院に泊まりこんで取材。

先日、71歳の男性が駅のホームで精神疾患と思われる女性に突き落とされ死亡するという事件がありました。精神疾患患者の犯罪が問題になっていますが、医療現場の実際はどうなのか。
著者は、幕張にある「千葉県精神科医療センター」という「精神科救急」を標榜する第一線の病院で2001年から約2年にわたり取材をしています。

いきなり、統合失調症の急性期で「第三次世界大戦が始まる~」と騒ぐサラリーマンの話が書かれていて、驚かされます。彼は9.11のテロ事件の事後処理に渡米し、現地での強いストレスによって発症した例でした。
この他に、突然の記憶喪失でパニックになった「健忘症」の女性、成田空港の近くで下着で騒いでいた患者、10年も風呂へ入らず、父親と二人でゴミの中で暮らしていた例、手洗いが止まらず水膨れになった「強迫神経症」の女性、など豊富なびっくりするケースを紹介しています。

そうした例の中で、現在の精神医療の発展や問題点をわかりやすく指摘しています。
・ 精神病の入院患者は34万人で、日本の入院患者の1/4に当たる。
・ 最近は「通電治療」の効果の見直しがなされていて、麻酔科医立会いの元にけいれんを起こさない形で使われている。
・ 統合失調症も早期の薬物治療により2/3がコントロールされるようになった。
・ 精神科医療の保健点数がようやく上げられたが、病院経営は依然として長期入院・薬漬けから脱却できてはいない。

特に最近の薬物治療の発展、統合失調症のメカニズムについての研究の進展には驚きました。
また、精神疾患は誰にでも起こりうること、患者に対する誤解・偏見は避けなければならないこと(難しいが…)もこの本を読んで考えさせられました。
池田小事件などに見られる「人格障害」者に対する対応は、なかなか難しいこともよくわかります。
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by bibliophage | 2005-09-08 06:35 | 評論