ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
<   2005年 04月 ( 25 )   > この月の画像一覧
『ミステリーファンのための警察学読本』 刑事というのは優秀な人たちなのだ
d0018433_2143560.jpg著者:斉藤直隆
書名:ミステリーファンのための警察学読本
発行:アスペクト
購入動機:書店で目について
情報度:★★★★★

警察オタクとでもいうべき斉藤氏の『~のための警察学入門』をupdateして書き直したもの。

第一章は警察ミステリーについて。横山秀夫をはじめ、逢坂剛貫井徳郎柴田よしき、黒川博行、今野敏、佐々木譲の作品があげられていてここだけでも十分な情報があります。

第二章では『踊る大捜査線』の内容にツッコミます。捜査一課にキャリアが多すぎるとか。しかし、『踊る~』のリアルさが刑事ドラマの絶滅を救ったと評価しています。

第三、四章は警察の構造や出世競争のしくみなど、この本の最も面白い部分です。
・ 警視庁に組織犯罪対策部が新たに作られた。
キャリアとノンキャリアの出世スピードの違い。
・ 巡査→巡査部長→警部補→警部→警視→警視正と昇進していくには、試験に連続して合格しなければならない(ノンキャリア)。巡査部長試験が数百倍で、それに10年合格できないと巡査長という名誉職的な称号が与えられる。
・ 刑事という専門職になるのも、検挙実績→捜査応援→署長推薦→選抜試験→選科講習と進んで、優秀でも20代後半にやっとなれるという大変さ。

いやあ、刑事さんって優秀な人たちなんですねぇ。
ミステリー好きは読むべき本です。
[PR]
by bibliophage | 2005-04-29 21:17 | 評論
『星降り山荘の殺人』 カジュアルな本格
d0018433_275659.jpg著者:倉知淳
書名:星降り山荘の殺人
発行:講談社
購入動機:ネット評
本格度:★★★★☆

2chのミステリ板:「やられた!と思った作品」にいつもあげられています。

ミステリ外部の人が読んでも楽しんでもらえる本格作品を目指す(あとがき)」、という著者の試みは成功していると思います。

スターウォッチャーという変な肩書きを持つナルシストの二枚目星園がオカシイです。彼の付き人になってしまった主人公和夫、UFO研究家嵯峨島、女流作家草吹などが雪の山荘に集まって、お約束通り事件が起きます。

この本の評価として、ミスリードがアンフェアと感じるかどうかということに集約されますが、私はOKでした。ここまでやれば天晴れと思いますが…。
[PR]
by bibliophage | 2005-04-28 02:13 | ミステリ-
『笑犬樓の逆襲』 いつまでも前衛的な老大家
d0018433_7432051.jpg著者:筒井康隆
書名:笑犬樓の逆襲
発行:新潮社
購入動機:著者のファン
スラップスティック度:★★★★☆

(以下このエッセイ風に…)
わはははははははははは。
これは筒井康隆が、『噂の真相』に書いたエッセイで、断筆解除後の1998年8月から、休刊の2004年4月までのものをまとめたものだ。30歳でデビューした時からメチャクチャな話ばかり書いてきた奴だが、60を過ぎた今でもハチャメチャで年令相応の落ち着きなどとは無縁である。ただ、評論家斬りの過激さは、本人も言うようにかなり薄くなってはいるが。

断筆中は税金が払えないというのでホリプロに「タレント」として所属し、芝居に出たり、CFに出たりしていたようだが、災い転じて福となしたのか、復帰後は作家と役者の二股で活躍している。こともあろうに天皇の前にのこのこ出かけていって、紫綬褒章までもらっている始末だ。

筒井作品の中で特にわしの心に残っているのは、『最高級有機質肥料』と『狂気の沙汰も金次第』の二つだ。前者は卒倒するくらいに発想が斬新で、後者は「ことわざの合成」という言葉遊びが身の毛もよだつほど素晴らしい。「暑さ寒さも胃がんまで」なんてブラックユーモアの極地ではないか。

実は『朝のガスパール』以降、筒井の作品にはとんとご無沙汰だったのだが、『パプリカ』なんぞは読んで気が狂った奴が出たようだし、『愛のひだりがわ』もじわりと面白そうだ。そうそう、ちょっと前にテレビでフカキョン主演の『富豪刑事』もやっていたなあ。自選の短編集も文庫であるようだし、久しぶりにまた読んでみるとするか。

それにしても、9.11のテロを「面白かった」なんて書いて許されるのはこの筒井くらいのものだろう。シラクとブッシュに大阪弁で本音を言わせている箇所も痛快だった。ああそうだ。この本の最後に「筒井康隆のすべてを知るための50問50答」というのがあるが、この聞き手が実に優秀で、絶対読むべきところだとわしが思ったことも付け加えておこう。
[PR]
by bibliophage | 2005-04-27 07:39 | ユーモア
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』 マーケティングの勝利
d0018433_712948.jpg著者:山田真哉
書名:さおだけ屋はなぜ潰れないのか?
発行:光文社
購入動機:書店で目について
目からウロコ度:★★★★★

どこの書店でも平積みされているベストセラー。現在25万部!4/24の朝日新聞にも書評あり。

著者の山田氏は公認会計士で、『女子大生の事件簿』シリーズも出しています。

日常の身近な疑問を取り上げて、会計に興味をもってもらう、という著者の意図は達成されています。下記のどの章を読んでも、なるほどと思ってしまいます。

1.  さおだけ屋が潰れない謎 → 利益の出し方
2.  誰も来ないフランス料理店の謎 → 連結経営
3.  在庫だらけの自然食品店の謎 → 在庫と資金
4.  スーパーの完売御礼で怒鳴られる謎 → チャンスロス
5.  麻雀でトップを狙わない打ち手の謎 → 回転率
6.  いつもワリカンの支払いをする人の謎 → キャッシュ・フロー
7.  キャッシュバック・キャンペーンの謎 → 数字のセンス

とにかくわかりやすさを重視してあり、数式は最小限、というかありません。フランス料理店にわざわざ行って、トイレの張り紙をみて理由がわかった、などというのはミステリー仕立てのうまさです。

それにも増して優れているのがタイトルで、著者のHPによれば、いくつかある候補の中からHP読者にアンケートを取って決めたとのこと。会計士はマーケティングも一流です。
[PR]
by bibliophage | 2005-04-26 07:02 | 新書
『僕のなかの壊れていない部分』 ハ-ドボイルド・ラブストーリー
d0018433_6455694.jpg著者:白石一文
書名:僕のなかの壊れていない部分
発行:光文社
購入動機:書店で目について
内容凝縮度:★★★★★

出版社勤務を経て専業作家となった白石氏の4作目。

主人公の僕:松原直人は仕事歴8年の編集者。記憶力がよく、エーリッヒ・フロムなどからの引用がすぐに出てくる。美人のスタイリストで恋人の枝里子と出会ったときも、三島由紀夫についての薀蓄で彼女の気を引いた。枝里子以外にも、スナックで働く年上で子持ちの朋美、有閑マダムの昭子の二人と関係を持っている。

この作品の「僕」は、村上春樹の「僕」と違って、屈折して懐疑的で、すぐ切れるし、厭世的で、あまりサワヤカな人物とは言えません。しかし、人間が生きなければならない理由をいつも考えていて、釈迦のようでもあります。自分をないがしろにした母への恨みと、子供の時に優しくしてくれた別の女性の影響の上にこの「僕」の考え方は形成されています。

「僕」に惹かれる枝里子の気持ちがわかります。知的で影があって、時に怒ったと思ったら、次には甘えてくるし、sexも上手い。ダメンズと違って仕事もできる。

各人物がよく書かれていて存在感があります。「僕」の記憶力がよい理由が後半明らかになりますが、このエピソードが秀逸です。編集者の仕事内容が書かれていて興味を引きます。リーダビリティも高いです。

内容の濃い話で、読む価値があると思いました。
[PR]
by bibliophage | 2005-04-25 06:50 | その他小説
『言いまつがい』 電車の中で読んではいけない
d0018433_711865.jpg監修:糸井重里 
書名:言いまつがい
発行:新潮社
購入動機:書店で目について
笑撃度:★★★★★

糸井重里さんの有名なサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」(通称:ほぼにち)の、言い間違いについての投稿を集めたものです。「言いまつがいは唇のどろんこ遊び」とはさすがに糸井さんですね。

フロイトの「精神分析入門」を読んで、言い間違いが「抑圧された無意識の表れ」だと知って驚いたことをチラリと思い出しました。そういった典型的なものもあれば、単なる無知・勘違いに基づくものなどの集大成で、とにかく笑えます。

(例)
・ 友達が大笑いして、「いや~、はらわた煮えくり返るほど、おかしい!」と言った。
・ はじめて患者の死を看取った研修医が緊張して、家族に「オダブツさまです」と告げた。

一番笑ったのは、
・5才の娘が「スターウォーズ・エピソード1」のことを、「『すたあ坊主、海老騒動』ってなに?」と聞いた。

歌舞伎の襲名みたいですね。洋画の題名をふざけた邦題にするサイトでみられるような面白さです。

「真剣さが必要な場所では読まないでください」という編集部のお願いにウソはありません。電車の中で読んでいて思わず吹き出しそうになり、あわてて花粉症のふりをしてごまかしました。気をつけてください。
[PR]
by bibliophage | 2005-04-23 07:08 | ユーモア
『Jポップの心象風景』 こ、これは…
d0018433_82507.jpg著者:烏賀陽弘道
書名:Jポップの心象風景
発行:文芸春秋
購入動機:書店で目について
目新し度:★☆☆☆☆

久しぶりにトンデモ本、キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!! ってところでしょうか。

Jポップのトップアーティスト8組の音楽性を通して、「日本人の内的世界に関する論考(著者あとがき)」を試みた新書。

1.  桑田佳祐(サザン)…日本土着文化とアメリカン・ポップスの同居した人格
2.  松任谷由美…母性原理を肯定するシャーマン
3.  GLAY…成長の物語を与え続ける好ましいキャラクター
4.  ブルーハーツ…アニミズム的な歌詞が新宗教と似た救済をもたらす
5.  草野マサムネ(スピッツ)…孤独な自分と死を見つめる表現者
6.  浜崎あゆみ…社会を救うため自己を犠牲に戦う女兵士
7.  椎名林檎…自分の内なる母親を殺して自立する娘
8.  B’z…欧米ロックのパクリがうまい人気者

内容をまとめると、上記のようになります。いや、この分析はいいんですが、っていうかまあそれはそうでしょう、というか。これをいちいちユングの精神分析とか、日本文化とかと無理やり結びつけないで欲しい。ポイントはずしてませんか?アーティスト分析:ひどいこじつけの薀蓄=15:85なので、読んでいてイタイし、辛いし…。

例えば、ユーミンの年末年始のコンサートツアーが、「日本人が無意識にたどる信仰行動」だ、とか(初詣でのことらしいんですが…)。Glayの20万人コンサートが、「困難に挑戦」する「成人への通過儀礼」だ、とか。
また、「Jポップを買うのは99%が日本人」なのは、「日本文化の集合的無意識」のためだ、とか。違いますよ、日本語だからですよ(笑)。ユングは泣いて、河合隼雄は怒るぞ~。

この本の最大のウリは書名です。これがウマイから買ってしまいました。
著者はAERAで、アーティストとの対談を多く手がけていたので、それに基づく部分は読むべきところもあります。また、Led Zeppelinの完全コピーバンドであるシナモンについて、などのトリビア情報も見られます。

しかし、名の知れた著者にしては、フ~ム?な著作ではないでしょうか。あとがきで、「Jポップは好きでなく、海外ポピュラーが好み」としれっと書いているのも減点ですねぇ。読み方に工夫がいる本です。
[PR]
by bibliophage | 2005-04-22 08:08 | 音楽
『玩具修理者』 懐かしいような奇妙な話 
d0018433_711429.jpg著者:小林泰三 
書名:玩具修理者
発行:角川書店
購入動機:書店で目について
奇妙度:★★★★★

彼女は昼間いつもサングラスをしている。わたしは、そのわけを尋ねた。彼女はしぶしぶ、子供の時の奇妙な話:何でも直してくれる玩具修理者、について打ち明けてくれた。

理系技術者である小林泰三氏の作品で、1995年の第2回ホラー小説大賞短編賞受賞作。

玩具修理者の名前は‘ようぐそうとほうとふ‘。性別、年令、国籍不明の人物で、人形でも、ラジコンカーでも、死んだネコでも全部バラバラに分解して直してくれる。ある日、彼女は背負っていた弟を落として死なせてしまう。仕方がないので、修理者の所に持っていったのだが…。

今読んでも十分奇妙で不思議な物語です。話の発想が技術者ならではで、修理者の気味悪さが秀逸です。自分の幼少時の悪戯などの懐かしい記憶が喚起されました。話の最後にオチがあってよくできています。

もう一編『酔歩する男』が収録されており、こちらはタイムトラベルの話。
ある日、血沼は見知らぬ男に会った。その男、小竹田は血沼の個人情報をすべて知っており、大学時代の親友だったと言う。二人は一人の女性をめぐって争った…らしい。

タイムトラベルの説明に、ゲーム理論や量子力学まででてきてユニークです。東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』を思い起こさせる部分もあり、こちらもなかなか面白い話でした。
[PR]
by bibliophage | 2005-04-20 07:14 | ミステリ-
AERA in Rock
d0018433_1241715.jpgAERAにはロック好きの編集者がいるようで、時々プログレッシブ・ロック(やハード・ロック)の記事が出たりします。が、プログレがリバイバルで流行っているという噂はさっぱり聞きません。

それなのにとうとう、臨時増刊でロック雑誌『AERA in Rock』なるものまで発売されてしまいました。
 
「ハード・ロックとプログレは昔は一つだったが、前者はディープ・パープル、後者はキング・クリムゾンという二つのバンドが登場することで、両者は決定的に独立分離することになった(by 山崎智之氏)」とのこと。

政治家・官僚・財界人のロックファンのアンケート:「ロックの呪いが解けない人々」が面白い。野田聖子議員はクイーン、ディープ・パープル、ELPのアルバムを好みとしてあげ、自分でもベースを弾いていたらしい。松本大マネックス証券社長はピンク・フロイド、プレスリー、ヴァン・ヘイレンのファンだそうです。

d0018433_1122134.jpg私自身はハード・ロックよりも、ソフトあるいはファンキーなものが好みですが、プログレも結構好きです(初期のGenesis など)。

さらに今年の1月より講談社からも、『Rock in golden age』なる雑誌がシリーズで発刊されました。世の中には思った以上に隠れロック・ファンがいるようです。
[PR]
by bibliophage | 2005-04-19 01:18 | 音楽
『幸福な食卓』 あっさりしているようで深い話 
d0018433_1302020.jpg著者:瀬尾まいこ 
書名:幸福な食卓
発行:講談社
購入動機:他の本の記載から
不思議度:★★★★☆

書き出しはすべての小説において非常に重要です。読み手がそこで話に乗れるかどうか決まるわけですから。それにしてもこの1行目には参りました。

「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」

この不思議な出だしのせいで、一気に物語に引き込まれます。

登場人物が全員ユニークです。私:佐和子は優しいけれども大人のようにクールなところのある中学生。兄の直は勉強もスポーツも万能なのに、大学進学をやめて農業に従事する変わり者。父は自殺未遂をした後に教師の仕事を辞め、なぜか薬学部の受験生に。母は父の事件の後に家族3人と別居することになるが、いつも夕食を作りに来る。
この4人の家族を中心とする4つの連作です。

「幸福な朝食」では、本当は優しい転校生坂戸君が4ヶ月でまた転校してしまう。
「バイブル」では、失恋してばかりいる直に、新しいド派手な彼女(小林ヨシコ)ができる。一方、佐和子は高校受験の塾で、単純明快な大浦君と知り合う。
「救世主」では、同じ高校に合格した佐和子と大浦君は、いつの間にかつきあっていた。クラスで窮地に陥った佐和子は、大浦君のアドバイスに助けられる。

このあたりで、何か少女漫画の世界に入り込んだような気分になりました。不思議な家族の間の奇妙な関係の話が、大浦君の登場で急に俗っぽくなったように感じられたからです。しかし、それも作者の周到な計算によるものでした。
「プレゼントの効用」では、大浦君はクリスマスプレゼントを買うために新聞配達を始め、佐和子はマフラーを編みます。その後に、話が大きく展開します。

佐和子と直の会話がユーモアにあふれていて笑えます。
父の自殺未遂の原因とか、直が女の子にすぐ振られる理由とか、あまり詳しく書かれていません。佐和子の成長小説として続いていきそうなので、今後少しずつはっきりするのかもしれません。

全体にあっさりと書かれているのに深い味わいのある小説だと思いました。
(大浦君の手紙に「おれはそういうハイカラなのは苦手だ」とあるのは、最近の高校生に流行の言い回し?)
[PR]
by bibliophage | 2005-04-18 01:37 | その他小説