ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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将棋: 強豪アマ・瀬川晶司さん のプロ入り問題
アマ・プロ間の差が最も大きいと言われた将棋ですが、最近はアマがプロに勝っても、(女流が男性棋士に勝っても) あまり騒がれなくなりました。
これは、プロがだらしないのではなく、トップアマとして、元奨励会員のいわばセミプロが活躍していることも原因の一つです。

瀬川氏も元奨励会員であと一歩でプロになれなかった口です。彼の場合、アマになってからさらに強くなったため、対プロ戦17勝7敗と驚異的な勝率を残し、異例の「プロ入り希望」宣言になりました。

瀬川氏の嘆願について、将棋連盟は試験対局をおこなうことに決めました。合格すればフリークラスという特別ワクでプロ入りできます。非常に妥当な決定だと考えます。おそらく4段陣と5-6局くらいやって、5割以上でOKとかになるのではないかと予想します。
d0018433_12114828.jpg瀬川氏には是非頑張ってもらいたいと思います。

奨励会員のプロ入りの厳しさについては、:大崎善生『将棋の子』が参考になります。   

将棋連盟HP  
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by bibliophage | 2005-05-30 12:15 | ニュース関連
『野垂れ死に』 (火宅の人)x三乗
d0018433_11104557.jpg著者:藤沢秀行 
書名:野垂れ死に
発行:新潮社
ダイハード度:★★★★★ 

天才囲碁棋士でかつ飲む・打つ・買うの王者、藤沢秀行氏の半生の記録。週刊文春5/26号、朝日新聞5/29に記事あり。

囲碁はルールを知っている程度の素人ですが、秀行先生のご乱交は時々耳にしていました。それにしても、この本を読んでビックリしました。スケールが違います。壮絶です。

前借りした対局料を全額競輪につぎ込み、高利で金を借りては負ける。事業を始めては、小切手・手形をバンバン使ってしまい、3億の借金で自宅まで差し押さえられる。外に女性を作っては、三年家に帰らない。酒に酔って夜中に裸で徘徊し、四文字語をわめく、吐血しても止めない。

しかし、これで終わらないのが天才秀行先生。最高位の棋聖を6連覇した時は、アル中の禁断症状と戦って酒を絶ち(防衛したらすぐ再開w)、書の個展を開いては大盛況、なんとか借金の方も落ち着かせています。その上、三種類のガンも克服し、もう80歳に!

d0018433_1112095.jpg囲碁に対する真摯な態度には感心しました。人一倍碁を勉強し、門下を問わず若い棋士を指導し、囲碁界の発展を願う姿勢。何事でも目いっぱいやる人なんですね。

この秀行先生を支えた奥さまもスゴイ!手記←が2003年に出版されています。ちょっと読むのが恐いです。
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by bibliophage | 2005-05-29 11:12 | 新書
『仮題・中学殺人事件』 読者が犯人!?
d0018433_934922.jpg著者:辻真先 
書名:仮題・中学殺人事件
発行:東京創元社(文庫)
意外犯人度:★★★★☆ 

TV演出家→アニメ脚本家→小説家と転身した辻氏の長編ミステリーデビュー作。初出1972年。2004年に文庫が復刊されました。

この作品の最大のポイントは「犯人は読者(きみ)だ!」と書き出しで宣言していることです。『アクロイド殺し』もびっくり!ですね。
純粋にこれを成り立たせるには、どこかで物語のワクを破るメタ構造になっていなければなりません。この作品ではどうなのかは、最後にわかります。

平易にかかれたジュブナイル小説とは言え、物語の構造は凝っています。
美人のキリコとずんぐりした薩次、二人の中学生が殺人事件の犯人を推理します。
1. 女流漫画の原作者が殺された…時刻表トリック
2. 中学校のトイレでガリ勉女子が殺された…密室トリック
ここまでが実はストーリー・イン・ストーリーで、中学生推理作家:桂真佐喜の作品であるという設定になっています。
桂君がこれを書いたのは、ある人物にこれを読ませたかったから…。


脚本家ならではの読みやすさで、古さも感じさせません。キリコ・薩次シリーズは計6作出ています。
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by bibliophage | 2005-05-28 09:37 | ミステリ-
『一日江戸人』  粋趣向 江戸之風俗
d0018433_17442151.jpg著者:杉浦日向子  
書名:一日江戸人 
発行:新潮社(文庫)
ベランメエ度:★★★★★ 

漫画家・エッセイストである杉浦日向子氏による江戸の風俗・趣向案内。

この手の本は興味があって買うものの、大概は積ん読書庫行きとなります。
ところが、これは抜群に面白くて一気に読めました!その理由は著者が漫画家で、おまけに江戸時代の専門家なので、ほぼ2ページに1つわかりやすいイラストが入っているからです。

・江戸のかっこいい三男(さんおとこ)は、火消しの頭、力士と与力。
・将軍の食事はできてから口に入るまで、お毒見と廊下移動があって2時間もかかる。
・江戸時代の銭湯は混浴だった。
 
など興味深い話が満載です。

なかでも出版事情の話が面白く、最大のベストセラーは『吉原細見』という遊女名鑑だったとか。恋愛小説『偐(にせ)紫田舎源氏』は当時40万部も売れており、『世界の中心~』も真っ青です。

文章のテンポが良く、ユーモアもあって、楽しめました。実際に当時の江戸にいるような気分になる一冊です。
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by bibliophage | 2005-05-27 17:47 | 評論
『孤虫症』 実家に寄生虫…
d0018433_644998.jpg著者:真梨幸子 
書名:孤虫症
発行:講談社
つつがあり度:★★★★☆ 

第32回メフィスト賞を受賞した寄生虫サスペンス小説。

36歳の私は高層マンションに住み、大手電器会社勤務の夫、成績優秀な娘と暮らしている。幸せな生活を送っているように見える私には秘密がある。別に借りたアパートで週三回、違う三人の男と寝ているのだ。
私は最近、下腹部の痛みが気になっている。そんなある日、トイレで何かが排出された…。


なかなか恐い話です。「私」の周りの人間が次々と亡くなっていきます。
帯を見ると、携帯サイトで配信されていたとのこと。翌日も読みたくなるように、細かい話のヤマがつながっている感じです。
寄生虫の生理的な恐さとともに、人間の恐さもじわじわと描いてクライマックスの謎解きに至ります。最後の部分で、ある女流作家の作品が思い起こされます。
謎解きと言っても、決して「本格」ではありません。むしろ1章はアンチミステリーというか、なんというか…。

Sex描写が今までの女流と違って、具体的で粘着性のある文章です。おそらく作者は、本文に出てくるような女性専用の某賞にも応募歴があるのでは、と思わせます。また、この粘着描写が、本筋とも効果的にからんできます。

最後をもっとアウトブレイクにする手もあったように思いますが、渋く論文で終わるこの形もシンプルで良いと感じました。魅力的な作品だと思います。
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by bibliophage | 2005-05-26 06:47 | ミステリ-
『阿修羅ガール』  さすがの文体とイメージ
d0018433_12374252.jpg著者:舞城王太郎 
書名:阿修羅ガール
発行:新潮社(文庫)
成り切り度:★★★★★ 

独特の文体の舞城氏が女子高生に成り切って精神世界をさまよいます。第16回三島由紀夫賞受賞。

煙か土か食い物』を本格推理と思い込んで読むというミスで手痛い打撃を受けて以来、舞城氏の作品は敬遠していました。しかし、これは書き出しから気に入りました。
減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。 返せ。

女子高生コトバや人殺しのプータローのセリフが、舞城文体のリズムにぴったり合っています。
マキにボコられて生死をさまよう主人公愛子の三途の川での場面が白眉です。救ってくれようとする陽治のコトバが崖に刻まれて見えるとか、喚起させるイメージのセンスが抜群です。
森のシーンがとってつけたような印象があるのと、最後の解説がクドイのがやや気になりましたが、全体では受賞にふさわしい作品だと思いました。

芥川賞は取れるのでしょうか?覆面だから無理か…。
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by bibliophage | 2005-05-25 12:40 | その他小説
10cc 来日
名曲「アイム・ノット・イン・ラヴ」の10ccが7月に来日します。
元々4人組の英国のロックバンドで、途中2人づつに分裂 (スチュワート&ゴールドマンとゴドレイ&クレーム) しました。
今回は「グラハム・ゴールドマンとそのお友達」での公演なので、バンド名の由来からすると実質2.5ccというところですw。

・来日情報: 12 
・10cc関連サイト: 34 

d0018433_18355534.jpgd0018433_1836621.jpg
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by bibliophage | 2005-05-24 18:38 | 音楽
『不連続殺人事件』 論理的な結末
d0018433_7125212.jpg著者:坂口安吾 
書名:不連続殺人事件
発行:角川書店、双葉社(文庫)
正当推理度:★★★★★ 

太宰治と並ぶ戦後の純文学人気作家で、『白痴』『堕落論』の著者坂口安吾が書いた本格推理小説。エラリー・クイーン張りの読者への挑戦状とともに、犯人当て懸賞金まで出したという自信作。第二回日本推理作家協会賞受賞。

小説家の私は、詩人の歌川一馬からの依頼で、山中の彼の家におもむく。そこには、癖のある文学者:望月、丹後をはじめ、一馬夫人あやかとその昔の愛人、女流作家、女優、一馬の父多門とその妾、など多くの人々が集まってきていた。
山荘に客が全員そろった後、はたして次々と人が殺されていく。
そのいくつもの殺人事件は、同一犯による連続したものなのか?それとも不連続なのか?私の弟子である巨勢博士が真犯人を推理する。


江戸川乱歩が指摘したように、最初に登場人物がうじゃうじゃでてきて、かなり混乱します。しかし、さすがに安吾先生、文章が読みやすくて、読み進むうちに整理されてきます。
途中でなんとか犯人だけはわかりました。それだけ論理的でフェアな作品と言えると思います。

映画(1977年)についてはこちら。

坂口安吾作品では、ナンセンス文の極地である『風博士』も気に入っています。
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by bibliophage | 2005-05-23 07:11 | ミステリ-
『「心理テスト」はウソでした。』 専門家の自虐
d0018433_7135933.jpg著者:村上宣寛 
書名:「心理テスト」はウソでした。
発行:日経BP社
サービス度:★★★☆☆ 

認知心理学、統計分析等の専門家である村上氏による暴露(?)本。

1章で血液型性格学、
2章で誰にでも当てはまる心理テスト(バーナム効果)、
3章でロールシャッハ・テスト、
4章でYG性格検査、
5章で内田クレペリン心理テスト、
 が無意味・インチキであることを解説しています。

ロールシャッハ・テストの結果が全く当たらなかった学会のシンポジウムの話や、クレペリンテスト(単純な足し算)はゆっくり正確にやった方が「異常」と判断されにくいというアドバイスなど、は興味深く読みました。また、クレペリン自身はいかに偉大な精神医学者であったかや、最近は「基本性格は外向性・協調性・勤勉性・情緒安定性・知性の五つである(ビッグ・ファイヴ仮説)」と考えられていることもよくわかりました。

ただ、全体的にちょっと冗長な印象で、内容的には新書でも十分ではないかと感じました。「心理テスト」と銘打っていきなり血液型の話もイマイチです。さらに、ロールシャッハ・テストを完全否定するなら、以前の自著「ロールシャッハ・テストー自動診断システムへの招待」を参照してください、とか書かないで欲しいものです。

また、自分の大学の学生や読者を小馬鹿にしたような書き方が若干ハナにつく所があります。「さおだけ屋~」を見習って、もう少しサービス精神を発揮して欲しい所です。いわば自虐ネタなんですから。
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by bibliophage | 2005-05-22 16:47 | 評論
『バルタザールの遍歴』 グラマラス・サイキック・ファンタジー
d0018433_8545123.jpg著者:佐藤亜紀 
書名:バルタザールの遍歴
発行:文芸春秋(文庫)
細密描写度:★★★★★ 

今をときめく恩田陸の『六番目の小夜子』を破って第三回日本ファンタジーノベル大賞を受賞(1991年)。『文学賞メッタ斬り!』でも、あの豊崎由美にベタ誉めされていました。

<1918年ウィーン貴族の長子として生まれたメルヒオール・エネスコ。その体の中にはもう一人の人格バルタザールが宿っていた。ナチスの台等とともに、彼(ら)は典型的な没落貴族の子弟として酒色に溺れ、家財を失い、僻地へと転落していく。>

著者の専門の西洋美術の知識とヨーロッパ留学体験をもとに、緻密な構成と圧倒的な描写力で迫ってきます。大聖堂を見上げているような印象です。
彼(ら)がこのまま落ちる所まで落ちて終わりなのか、と思っていると、話は思わぬ方向へ。最大の敵として現れたコルヴィッツと、文字通り「魂をかけたw」戦いが始まります。(ファンタジーにこだわったせいなのか、この展開にはやや不可思議な印象を受けました。)

ともあれ、久しぶりに密度の濃い文章を楽しめました。他の作品も是非読みたいと思いました。

佐藤亜紀氏HP  
著者インタビュー  
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by bibliophage | 2005-05-21 08:55 | その他小説