ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『魔王』 政治と超能力
d0018433_16453666.jpg著者:伊坂幸太郎 
書名:魔王
発行:講談社
腹話術度:★★★★☆

死神の精度』で人気絶頂の伊坂氏の新刊。「魔王」と続編の「呼吸」を収録。

世の中が反米、反中国の全体主義的雰囲気に包まれはじめた近未来の日本。野党党首犬養は、その空気に乗じて未来党の勢力を伸ばしていく。その流れに違和感を感じる安藤兄弟。ある日、兄は自分が頭の中で思ったことを他人に喋らせる能力があることに気づく。彼はその力を使って犬養と対決することを決心する。


近未来の形を取っていますが、右系化、憲法改正論議といった現在の日本の状況をもろに反映した内容の話です。今までの伊坂氏の作品とは一線を画すストーリーで賛否両論を巻き起こしそうです。
私は「面白かった」という印象を持ちました。小説家というものは村上龍とまではいかなくても同時代性を持った作品も書くべきと思います。
「鷹の定点観測」の話がユニークで興味を引きました。

「呼吸」の最後は憲法改正の投票の場面ですが、おそらく続編が書かれるのではないかと思われます。ここで終わると、いくつか未解決の問題が残るからです。バーのマスターの正体とか…。
一人称の主人公が、兄→弟の彼女と変わったので、続編があれば弟になるハズです。楽しみに待っています。
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by bibliophage | 2005-10-30 16:46 | その他小説
『本業』 タレント本をいじり倒す
d0018433_23571150.jpg著者:浅草キッド 水道橋博士 
書名:本業
発行:ロッキング・オン
文才度:★★★★★

水道橋博士によるベストセラー「タレント本」の書評集。

「タレント本とは、「…払いきれない有名税に対するタレント本人による青色申告書」である(序章より)」


ダカーポのコラムはいつも面白いと思って読んでいますが、この本を読んで博士の文章芸の巧みさを再認識しました。
矢沢栄吉、松本人志、島田紳助、杉田かおる、らの自伝を取り上げて、TV番組などでの自分たちとのエピソードをからめて、内容を紹介、批評しています。

諸星和己のところでは、「「光GENJIは「光通信」の如く…バブルアイドルだったかもしれない」と書き、飯島愛の章では、「銀行の「不良債権」とは逆に、芸能人の「不良体験」は…巨万の富を生み出す」とシャレをかまします。
文章にスピード感があり、内緒話的なエピソード満載で、知的なオチも入れる、というとても漫才師とは思えない文才です。
なべやかん、ガッツ石松、関口房朗の箇所が特に興味を引きました。

取り上げた本の発売時期がやや古くなっているのが玉にキズですが、TVで色々な番組を持っている博士ならではの面白い内容だと思います。
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by bibliophage | 2005-10-28 23:58 | 評論
『女形(おんながた)』 乱歩賞作家 X 歌舞伎 
d0018433_23462177.jpg著者:不知火京介 
書名:女形
発行:講談社
伝統芸能度:★★★★☆ 

『マッチメイク』で2003年乱歩賞を受賞した不知火氏の長編2作目。

歌舞伎役者、茗荷屋の松之助、松次郎親子が同じ日の舞台中に死亡した。自殺なのか、事件なのか。桔梗屋 半四郎の弟子である大部屋役者、堀内すみれは残されたメモからその真相を推理する。


受賞作の評判はもうひとつだったようですが、これは相当な力作です。
歌舞伎の演目の内容、役者の生活、京都の風景などがこと細かく描写されており、感心しました。著者の歌舞伎に対する知識はハンパではありません。

内容的には、ある医学的欠陥と血液型の謎、それに歌舞伎の芸や血筋をからませた筋書きで、本格度は高くありませんが、興味深く読ませます。すみれの兄弟子やんま、梨園の問題児山中信十郎、米国人役者青松などの登場人物も魅力的です。
比喩が歌舞伎の言葉から取られているのも新鮮でした。例:こめかみに筋隈のような太い血管を浮かび上がらせ…、兄さんの顔が鳴上上人みたいになったので…。

ただ、歌舞伎役者の家系図を入れた方が明らかにわかりやすいでしょう。血液型の話は図を自分で書かないとよく理解できないハズです。

本作が一般受けするかどうかはわかりませんが、歌舞伎に少しでも興味がある人はきっと楽しめると思います。
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by bibliophage | 2005-10-22 23:49 | ミステリ-
『容疑者Xの献身』 オタクの深情け
d0018433_80917.jpg著者:東野圭吾 
書名:容疑者Xの献身
発行:文芸春秋
叙述度:★★★★★

何を書いてもはずさない東野氏の新刊は、物理学者VS数学者の知恵比べ。

金をせびりにきた昔の夫を殺してしまった母と娘。母の方に好意を持っていた隣人、数学教師の石神はそれを知り、死体処理と事件の隠匿を図る。石神の大学時代の友人、物理学者の湯川は、その事件の裏に隠された真相を推理する。


相変わらずページをめくらせる手腕がすごく、時間を忘れて読んでしまいました。
犯人がわかっていてそれを追い詰める倒叙の形式で、湯川博士がまさに刑事コロンボの役割です。元夫の描写を読んでいると、殺されてしかるべきひどい奴だな、と思えるし、母親が昔の知り合いの男性とデートしたりすると、よくそんなことができるな、と腹が立ってくる、という具合でいつのまにか感情移入してしまいます。

石神のしくんだ母と娘のアリバイ工作について考えていると、完全にこちらまでだまされてしまいました。一種の叙述トリックともいえるでしょう。

そのトリックとからむ真相についてですが、「やはりそこまではやらないだろう」というのが一点。それと、「与えられた資料だけからは、(物理的に)湯川博士は真相に到達し得ないだろう」、というのが一点。以上が若干引っかかったポイントです。後期クイーン問題みたいな話なので、言うだけヤボかもしれません。

真相がすごくて完全に想定外だったので、やられた感は相当強かったです。
『白夜行』 『超・殺人事件』 についで、(今のところ)三番目に気に入った東野作品でした。
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by bibliophage | 2005-10-19 08:07 | ミステリ-
『あの戦争は何だったのか』 太平洋戦争の真実
d0018433_018678.jpg著者:保阪正康 
書名:あの戦争は何だったのか
発行:新潮社
詳細度:★★★★★

昭和史に関する著書の多い評論家、保阪氏による太平洋戦争の総括。

「あの戦争にはどういう意味があったのか、何のために310万人もの日本人が死んだのか、きちんと見据えなければならない(はじめにより)。」

右にも左にもよらずになるべく客観的に戦争の経過を記そうという意思が感じられて好感が持てます。
・第一章「旧日本軍のメカニズム
軍人養成機関、徴兵制、軍の機構などが書かれています。大本営とは正確には何か?…知りませんでした。
・第二章「開戦に至るまでのターニングポイント
2.26事件から東條内閣を通して開戦までの経過。誰が日本を開戦に導いた真の黒幕か?…これは意外な解釈。
・第三章「快進撃から泥沼へ
真珠湾からミッドウェーとガダルカナルの二つの敗戦まで。暗号は筒抜けなことに気づかないし、無策で兵士をどんどん死なせるし…。
・第四章「敗戦へ
インパール、サイパン、レイテ、硫黄島、沖縄と敗れ、玉砕していった人々。原爆投下とポツダム宣言。
・第五章「8/15は終戦記念日ではない
玉音放送、シベリア抑留、連合軍による占領などについて。

著者によれば、「太平洋戦争は不可避だった」が「戦略がなかったために泥沼化」し、あげくの果ては一億玉砕になりかねないところを「原爆のおかげで終戦は早まった」ということになります。「原爆のおかげ」とこれだけはっきり書いた日本人は珍しいと思います。

今まで目をそむけていた敗戦にまともに向き合い検証することで、最終的には「日本人とは何か」を問いかける、という著者の考えに共感しました。

それにしても「ガダルカナル攻防戦」ほど悲惨な戦いはなかったのですね。多くの同胞を犬死にさせた大本営の指示にはあきれました。
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by bibliophage | 2005-10-18 00:22 | 新書
『「脳」整理法』 占いから相対性理論まで
d0018433_15401194.jpg著者:茂木健一郎 
書名:「脳」整理法
発行:筑摩書房
脳自由度:★★★★★

気鋭の脳科学者が語るアタマの使い方。

「はじめて異性とデートするのも…はじめて出社する日も、一回性の体験です。そのような一回性の体験を大切に刻印し、整理していく脳の働きこそが、私たちの人生をつくっているのです。(第一章より)」


今朝の新聞の宣伝によると5万部を突破したとのこと。ベスト10にも入っていました。
これは面白いです。
脳が一番多く直面する物事は、半ば必然で半ば偶然に起きる、すなわち「偶有性を持った」性質があり、それらをどういう風に整理するかが、最も大切な脳の働きだ、というのが著者の一番の論点です。
一方に科学的で必然の世界である「世界知」があり、もう一方に私たちが一人称でいかに生きるかという「生活知」があり、その間に存在する人生の大半を占める偶有性を持った出来事をいかに整理するかが我々の脳にかかっている、というわけです。

たとえがとてもわかり易く、偶然の幸運に出会う能力「セレンディピティ」について、ノーベル賞級の発見(田中さんの例など)と素敵な恋人に出会う能力とは実は同じである、と言ったりします。
神の存在は否定していますが、占いの存在意義は有るというふうに自由自在な発想をしています。
筆者のいう「クオリア」の意味が今ひとつつかめませんでしたが、全体的にはとてもわかりやすい内容になっています。

今日から私もセレンディピティを高めるべく、「行動」「気づき」「受容」のパターンで行きたいと思います……って何か「チーズはどこに行った」とか「Good Luck」調ですね。
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by bibliophage | 2005-10-16 15:42 | 新書
東野圭吾 作品 のお気に入り
トラキチさんの 東野作品 My Best 3(延長されたしめきりの直前!)への投稿記事です。

d0018433_03550.jpg1. 『白夜行
はじめて読んだ東野作品でした。トラウマを抱えた少年と少女による犯罪。
緊迫感に満ち満ちた展開とそれにぴったりなクールな文章。最後までノンストップで読みました。着ぐるみの格好での最期はちょっと哀れだったなぁ。
この作品の直後に内田康夫氏の『遺骨』を読もうとしたら、あまりにもヌル過ぎて序盤で投げ捨てた記憶があります。
この投票でもやはり堂々の1位ですか…当然でしょうね。

d0018433_032075.jpg2. 『超・殺人事件
知的ゲームの作品集としてこれもとても気にいっています。特に「超犯人当て殺人事件」に感動。作中作の犯人を推理させられる編集者たち。その叙述トリックもびっくりしたし、メタ構造にも驚いた。「超読書機械殺人事件」も面白かった。この作品中の自動書評機械、ショヒョックスについて、評論家が皆、判で押したように「私もこんな機械が欲しい」という感想を書いていたのが情けなかった。

3. 1&2に比してこれはというものが浮かびません。
  というか何をよんでもはずれナシなのですが…。

今までに『パラレルワールドラブストーリー』 『名探偵の掟』 『怪笑小説』 『秘密』 『片想い』 『さまよう刃』などを読みました。
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by bibliophage | 2005-10-13 00:06 | ミステリ-
瀬川晶司氏、将棋プロ試験第4局 中井女流6段に逆転勝ち!
最強アマの瀬川氏が、土壇場の大逆転勝ちで2勝2敗のタイにこぎつけました。

d0018433_20304498.jpg相手の中井広恵さんは、男性棋士から18勝をあげている実力者。瀬川氏は後手で8五飛戦法を採取。あっという間に勝負がつくことのある激しい戦型です。
終盤まで中井さんに押されていましたが、最後に時間を多く残していた分、勝ちを拾えたようです。3局目に久保8段に時間をうまく使われて敗れたことをさっそく生かしたところはさすがです。
あと2人に対し1勝でプロ入り。次の高野五段戦、後がないと思って望めば大丈夫でしょうが、最終局にもつれこんだらかなり厳しいことになりそうです。11/6が楽しみです。

六番勝負特設ブログ
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by bibliophage | 2005-10-10 20:20 | ニュース関連
『ほとばしる副作用』 アイドル願望を持った女オタク
d0018433_8131465.jpg著者:辛酸なめ子 
書名:ほとばしる副作用
発行:文芸春秋(文庫)
妄想度:★★★★★

一度聞いたら忘れられないタイトル(と筆者名)。なめ子氏のアイドル妄想エッセイ集。

「(加護亜依の)無自覚で無邪気な挙動は、男のロリコン魂を刺激するだけでなく、大人の女の子宮をも直撃する可愛さにあふれています(本文より)。」


アイドル万華鏡』を読んでいて、女性アイドルに対する屈折した思いがにじみ出ていたので、はて、この人はレズビアンなのかと思っていました。しかしこの本の解説(神林広恵氏)を読んで納得。
教師の両親に厳格に育てられ過ぎた結果、自身のコンプレックスとアイドル願望が昂じて、主に女性アイドルに対する妄想と下ネタを屈指した独自のエッセイ世界を作り出している、ということのようです。

この本では、ブリトニー、アヤパン、ベッキー、奥菜恵、優香、などを取り上げ、必ず文の後半でぶっ飛んだ妄想世界が描かれ、ヘタウマ(?)な漫画が脱力を誘います。
また「脳内セラピー」の中の「生理」についての記述が面白く、ここまで書く女性は珍しい。まさに面目躍如といったところでした。
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by bibliophage | 2005-10-10 08:14 | 評論
『妄想人生』 作家と学者の中間的存在
d0018433_15155394.jpg著者:島田雅彦 
書名:妄想人生
発行:毎日新聞社
サヨク度:★★★★☆

作家二十年選手の島田氏によるサンデー毎日の連載エッセイ。原題「気宇壮大のススメ」。

「小説家はあらゆる職業のターミナルといわれる。小説家なんてさまざまな職業を転々として、最後に辿り着けばいいのだ。(本文より)」


島田氏の文学作品は未読でした。知っていることは、芥川賞候補に何回もなって取りそこね、女性に人気で、料理が得意なこと、です。
このエッセイを読むと、流れるような軽妙な文章で、料理だけでなく、政治、クラシック、歴史、アダルトなどについて、薀蓄を傾けながら、しっかり自分の意見を語っている、という印象を受けました。ちょっと気取ったシニカルなところもいい感じです。
「プロ意識の高い娼婦は優れた女優たらねばならない」
「神話や歴史に人間の感情や生活のディテールを肉付けするとにわかに物語となって立ち上がる」
とか。

作家というより、文化人という趣きですが、演劇や詩でも活躍していたのですか。
法政大国際文化学部教授。偉いヒトなんですね。
2chの自分に関するスレッドを読んで腹を立てているところなども好感が持てました。

ちょっと自分の認識不足を恥じて、「彼岸先生」でも読もうか、と思います。

島田雅彦氏のHP
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by bibliophage | 2005-10-08 15:16 | 評論