ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『編集者T君の謎』 将棋世界の不思議エッセイ
d0018433_014397.jpg著者:大崎善生 
書名:編集者T君の謎 将棋業界のゆかいな人びと
発行:講談社(文庫)
諧謔度:★★★★☆

雑誌「将棋世界」編集者を18年。その後、作家としてベストセラーを連発する大崎氏による将棋界のエッセイ。

「私の将棋の本としては3冊目の出版になる。これを読んでひとりでも多くの方が、あの無垢にして純粋な将棋の世界に少しでも興味を持っていただけたら幸いです。(「あとがき」より)」

あとの2冊とは、若くして癌で死んだ天才棋士を書いた『聖の青春』と奨励会で挫折した青年の話『将棋の子』のこと。後者は読みましたがとても面白かったです。

今回のエッセイは「週刊現代」での1年間の連載を内容別に章分けしてあります。特に面白いのがⅠ章「天才たちのスーパーバトル」。
・ 元名人でクリスチャンの加藤氏の傑作な話。
・ 名人になった佐藤氏が若い頃、大崎氏に怒鳴りつけられた話。
・ 著者が森下九段に「君が負けるのは弱いからだ」と言った話、などなど。

一方、本の題名にもなっているT君の話などは内輪ネタでイマイチ冴えません。

後に大崎氏の妻となる高橋和さんが、詰め将棋の年間最優秀作品に与えられる看寿賞を取っていたのにはビックリしました。

将棋連盟の運営などは棋士だけで決められており、将棋の人気凋落傾向を憂いて、棋士たちに苦言を呈するという硬派な面には感心しました。

全体的には、笑いがあってオチがある上手い文章で、将棋の世界がさらに好きになりました。
大崎氏の小説の方も読まなくてはいけないと思ってはいるのですが…。
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by bibliophage | 2006-09-30 00:02 | 評論
『地下鉄に乗って』 タイムスリップ・終戦後
d0018433_7102311.jpg著者:浅田次郎 
書名:地下鉄(メトロ)に乗って
発行:講談社(文庫)
ファンタジー度:★★★★★

10/21~映画公開ということで、駆け込み読書。吉川英治文学新人賞。

<久しぶりにクラス会に参加した帰り、真次は地下鉄の連絡通路を歩いていて突然30年前にタイムスリップした。それは、父と喧嘩をした兄が地下鉄に飛び込んで死んだまさにその日だった。その後もタイムスリップは続き、真次はアムールという人物と知り合い、時代は遡っていった。驚くべきことに愛人であるみち子も同じ内容の経験を持ったという。2人のタイムスリップの行き着く先はどこなのか?>

いやぁ、これは面白かった。発想と話の展開、ミステリー的なオチまで素晴らしい!

立志伝中の人物である父から離れて母とともに暮らす真次。父と真次との間の葛藤が話のメインにあり、そこにみち子がからんでタイムスリップが起きます。


仕掛けの一つは途中でわかるのですが、最後の話の着地点は全く想定外でした。
やられた、という感じでしかも泣けても来るという完全に浅田氏の術中にはまってしまいました。やれやれ…。

こういうオチのある話の場合、原作を読むとおそらく映画を楽しむのが難しいのではないかと思います。
…と言いながら、私はたぶん映画も見に行くことでしょう。
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by bibliophage | 2006-09-27 07:11 | その他小説
『安徳天皇漂海記』 マルコの冒険
d0018433_063994.jpg著者:宇月原晴明 
書名:安徳天皇漂海記
発行:中央公論社
怪異度:★★★★☆

山本周五郎賞受賞。ダカーポ誌上でかの豊崎・大森コンビが一押し。

<源実朝は鎌倉3代将軍ではあったが、実権は北条氏に握られ、和歌の世界の人となっていた。ある日、実朝は従者の若者とともに江ノ島の洞窟に導かれ、壇ノ浦に沈んだはずの安徳帝が琥珀に包まれた姿で存在することを知る。時・所は移ってクビライ・カーンに仕えるマルコ・ポーロ。マルコは帝のその不思議な話を聞き知っていたが、滅び行く南宋の少年皇帝の元で実際に安徳帝の姿を見ることになった。>

鎌倉歴史ファンタジーとでも申しましょうか。とにかく不思議な物語です。

パート1:実朝編。パート2:マルコ・ポーロ編。
パート1は「吾妻鏡」の記述に従い、実朝の歌をfeature しながら、安徳幼帝との不思議な出会いから実朝の死までを語ります。ややテンポが遅めで、古文が入ったりするので読み進みにくい印象がありました。
それに比してパート2はマルコ・ポーロが主人公で小気味好く話が進みます。彼は南宋皇帝の最期と安徳帝の昇天?を見届けます。

時折、素晴らしく美しい風景イメージ描写が出てきます。実朝を海へと導く真っ赤な幕の場面、南方の島での蜜でできた湖の場面など。

平家物語の名調子を中国風?に訳した節が心に響きます。
「サヘートの庭に響く鐘の音は
あらゆるものがうつろいゆくことを教えてくれる
サーラ樹の花の色は…」


先入観では「安徳天皇が生き返って大活躍!」かと思っていましたが、全然違いました。もしそうだったならライトノベルになってしまいますねw。
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by bibliophage | 2006-09-23 00:04 | その他小説
『今日、ホームレスになった』 大手企業管理職→ホームレス
d0018433_5202661.jpg著者:増田明利 
書名:今日、ホームレスになった 13のサラリーマンの転落人生
発行:新風社
衝撃度:★★★★★

ホワイトカラー出身者たちの転落人生。

「図らずもホームレスになってしまった人たちと我々の間に、どれほどの違いがあるのだろうか。自分が彼らのようにならないという保証があるのか。(「はじめに」より)」

書店でふと見かけて読んでみましたが、インパクトが有り杉ました。
13名の元ホワイトカラー、現ホームレスに詳細なインタビューをすることで、なぜ彼らがそうなったかを具体的に記しています。

元大手総合商社次長、元ファンドマネージャー、元大手鉄鋼メーカー副部長。数年前まで巨大ビルで働いていた自分が、今はそれを見上げる公園で暮らしている…。これは辛すぎます。しかもその気持ちが徐々に薄れていくところがまた悲しい。

転落のパターンはかなり共通しています。
大企業勤務40代後半~50代→バブル崩壊、不況→リストラ、会社倒産→再就職不能→ローン破綻→借金→家庭不和→失踪。

ホームレスの生活も詳しく書かれていて、雑誌収集がいかに大事な仕事かわかりました。
とにかく他人事と言って済ませられない内容の本です。ガクガクブルブル…。
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by bibliophage | 2006-09-20 05:21 | 評論
『凶笑面』 民俗学ミステリー
d0018433_20315414.jpg著者:北森鴻 
書名:凶笑面 蓮丈那智フィールドファイルⅠ
発行:新潮社(文庫)
本格度:★★★☆☆

鮎川哲也賞作家北森氏による民族ミステリー短編集。ダカーポおすすめ。

<東敬大学助教授、端整な顔立ちの女性学者、蓮丈那智。今日も彼女の元には、不可思議な風習についての民俗学的調査の依頼が届いていた。助手の内藤三國を連れて現地に赴く那智だったが、なぜか彼らは殺人事件に巻き込まれていく。>

解説に書かれているように、ひとつひとつの話にかなりの資料が使われていて、とてもハードワークだと思いました。横溝正史作品のようなおどろおどろしさに走らず、民族学の面白さを取り入れた点でとてもユニークな作品と言えると思います。

しかし、ちょっと読みにくいのが難点。持って回った言い方も好きになれませんでした。
例:声は続かなかった。怒りとは別の感情が、声帯の機能を停止させたらしい。
d0018433_20331395.jpg
また巻頭に、諸星大二郎先生の「妖怪ハンター」に捧ぐ、とありましたが、比較するとかなりあっさりした印象。もう少しエグさがあってもいいかも。

主人公の蓮丈那智は能面のような印象で、美人のようですが、萌えキャラではないですねw。


法月綸太郎氏による分析では、
1. 民族学的調査依頼
2. 関係者の殺害
3. 民俗学的討論と事件のデータ提示
4. 民俗学的謎と殺人事件の解決
というパターンを持ち、助手の三國を含めてシャーロック・ホームズの様式を踏襲している、とのことでした。

密度が濃い作品であることは確かなので、今度は長編の方を読んでみたいと思います。
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by bibliophage | 2006-09-18 20:35 | ミステリ-
『文学賞メッタ斬り!リターンズ』 毒舌の楽しみ
d0018433_030880.jpg著者:大森豊、豊崎由美 
書名:文学賞メッタ斬り!リターンズ
発行:PARCO出版
斬殺度:★★★★★

物議をかもしたw「文学賞メッタ斬り!」の続編。

「そして最後に、…(島田雅彦の言葉を借り)、わたしたちのいいかげんな与太話や採点に傷ついた方々には深くお詫び申し上げます。御免。(「おわりに」より)」

島田雅彦氏をゲストに迎えてパワーアップ。相変わらず歯に衣着せぬ物言いが心地よいです。

小学館文庫小説賞の河崎愛美「あなたへ」を評して、「脇の甘い比喩を得意になって使いまくる、ちょっと作文が上手い程度の15歳を、いい年こいた大人がちやほやしてどうするよっ… 」ということで点数15点!
2005年上半期芥川賞候補の伊藤たかみ「無花果カレーライス」について、「点数つけると16点くらいですね。…わざわざ印刷して紙面に載せる価値があるんですか、この作品に」との講評。どちらも豊崎さんです。
大森さんも伊藤たかみ氏を「へた」と評していました。
前回ついに芥川賞を受賞したとはいえ、伊藤たかみ作品を読むことはたぶんないだろうと思いますw。

2006年下半期の直木賞予想で東野+恩田のW受賞という読みでは、私も大森さんと一致していたのがちょっと嬉しく思えました。モロにはずれていましたが…。

毒舌だけではなくて、自分のツボにはまったモノを異様に持ち上げるのが可笑しい。
興味を持った作品は青木淳悟「四十日と四十夜のメルヘン」、松尾スズキ「クワイエットルームにようこそ」、中原昌也「点滅……」、鹿島田真希「ナンバーワン・コンストラクション」etc…。

巻末に受賞作を一覧で点数化しています。個人的には、「夜市」は過小、「博士の愛した数式」は過大評価と思いました、

評論家というのは、古今東西の作品に精通していなければならない大変な仕事だとつくづく思いました。続編はまたまた2年後でしょうか。今から期待しています。
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by bibliophage | 2006-09-16 01:34 | 評論
トラックバック・スパム その2:excite の新対策
よほど多くの方が困っていたのか、本日exciteがスパムの新しい対策を発表しました。

<半角英数字によるコメント・トラックバックの拒否機能>

「設定画面」-「環境設定」の中の
半角英数記号のみのコメント・トラックバックを受付けない 」にチェック
→「変更」ボタンをクリック。

なるほど!これなら簡単ですね。excite 担当者さん、ご苦労さまでした。

まさかこれを破ろうとして、スパムTBに全角で漢字やカナを入れてきたりしないでしょうねw。
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by bibliophage | 2006-09-13 23:54 | その他
『名もなき毒』 逆玉探偵、杉村三郎
d0018433_9261082.jpg著者:宮部みゆき 
書名:名もなき毒
発行:幻冬社
執拗度:★★★★☆

前作 「誰か」 に続き、好い人である三郎氏が活躍。

<青酸カリによる毒殺事件の4人目の被害者が出た。その家族と知りあうことになった杉村三郎はその真相を知りたいと考えはじめる。一方、彼の勤める編集部ではトラブルメーカーの女性が悪態をつきながら会社を辞めていった。>

489ページの重量級の本なので、電車で読むのには不向き。自宅で休みに読みました。

冒頭、いきなり殺人事件が起きて期待が高まります。が、すぐさま今多コンチェルンの会長の娘婿である主人公杉村氏の日常に話が移り、そのまま淡々と進みます。
結局のところ、全体的にはミステリー色は弱く、人間描写の深い物語になっています。

今回のNo.1キャラは編集部を辞めていった原田いずみ。職歴・学歴詐称、仕事能力なし、責任転嫁、暴力、キレやすい、粘着質。容姿についてほとんど言及されていませんが、おそらくある程度魅力的なのだと考えられます。これはボーダーラインの典型か、はたまた性格障害か?彼女の行動に関して、途中からネガティブな伏線が張られて、その通りに話が展開していきます。過去に兄の結婚式をぶち壊した話がとにかく強烈!でした。

その他、杉村夫妻をはじめ、殺された古屋明俊とその娘・孫(女子中学生)、ジャーナリストの秋山氏、など登場人物がバックストーリーを含めて丁寧に書かれています。
また、青酸カリの「毒」、人間の持つ「毒」、土壌汚染の「毒」、と毒からみで話をまとめ上げる落語的な上手さが感じられました。

表現としては、義父である今多会長の話にただうなづきながら、ふと、「それで、私という観葉植物の葉が揺れた」という杉村氏の心象の描写が巧みだと思いました。

真犯人はちょっと拍子抜けの感があるし、杉村探偵の人の好さ(と無神経さ)も鼻につくところがあります。また、容疑の浅い段階では家宅捜索しないだろう、とかミステリーとしてはツッコミ所が多そうです。しかし、人間の描き方の執拗さというのは一読の価値があります。「模倣犯」を期待しなければ、楽しめる作品だと思います。このシリーズはこういうtaste なのでしょう。
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by bibliophage | 2006-09-12 09:33 | ミステリ-
トラックバック・スパムに辟易
この数日間、わけのわからないスパムTBが連日50件以上あって、大変迷惑しています。

以前は、薬の販売やエロ関係が主で1日数件だったので、何とか1件1件削除していました。しかし、最近のものは50件~80件近くまとめてで、しかも内容・意味が全くがないものばかり。しかもリンク元も表示されない全くのスパムです。

Blogの勧進元であるexcite にメールしたら下記のような回答でした。

1.「ログイン」→「設定」環境設定の「トラックバック権限」を変更します。
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【7】削除が完了

1.の設定変更は意味がないので、2.の一括切除を選択。これだと数分以内に削除終了することが可能でした。
しかし本来exciteも、他のblogがやっているように、TB、コメントは最低こちらの許可後にupする形にして欲しいものです…ぶつぶつ…。
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by bibliophage | 2006-09-12 00:30 | その他
『ダ・ヴィンチ・コード』 やっと読了
d0018433_1050633.jpg著者:ダン・ブラウン 
書名:ダ・ヴィンチ・コード(上・中・下)
発行:角川書店(文庫)
薀蓄度:★★★★☆

単行本と文庫合わせて1000万部以上売れている超ベストセラー。世界では44言語で5000万部!

<ルーブル美術館長ソニエールが殺される→ハーバード大教授ラングドンが疑われる→ソニエールの孫娘ソフィーに助けられる→聖杯の場所を示すキーストーンを持ち出して2人で逃げる→聖杯研究家のティービングの家へ転がりこむ→みんなでイギリスへ逃亡→テンプル教会には手がかりなし→ウェストミンスター寺院でドタバタ→暗号の5文字がわかった→ロスリン礼拝堂でご対面→ラングドンはルーブルへ戻る>

d0018433_10502024.jpg先に映画を観てしまったのですが、その前に読むべきだった…。映画はかなり原作を忠実に再現してはいますが、見終わったとき多くの疑問が残ってあまり感動する余裕がありませんでした。

原作を読み終わってようやくわかった点。
・ オプス・デイとシオン修道会のこと。
・ ソフィーが見たシオン修道会の変な儀式。
・ オプス・デイの司教がバチカンに何を言われて、何で金をもらったのか。
・ 「導師」がそこにつけこんでそそのかしたこと。

読み終わっても疑問な点。
・ 何人も人が死んで、必死になって暗号を解いて、クリプティクスを開けて、ロスリン礼拝堂へ行って、で結局、何?

映画についての感想。
・ トム・ハンクスはちょっとミスキャスト。ソフィーと恋仲にはなりえない。
・ 導師の正体を原作のようにギリギリまで隠せないのが残念。また、導師の行動が唐突な印象。

様々なキリスト教の薀蓄が語られ、トリビアの泉的な面白さはあります。
もし原作も映画もまだの方がいるなら、「上巻だけ読んでから映画を観る」ことをおすすめします。
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by bibliophage | 2006-09-09 10:52 | ミステリ-