ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『地下鉄に乗って』 タイムスリップ・終戦後
d0018433_7102311.jpg著者:浅田次郎 
書名:地下鉄(メトロ)に乗って
発行:講談社(文庫)
ファンタジー度:★★★★★

10/21~映画公開ということで、駆け込み読書。吉川英治文学新人賞。

<久しぶりにクラス会に参加した帰り、真次は地下鉄の連絡通路を歩いていて突然30年前にタイムスリップした。それは、父と喧嘩をした兄が地下鉄に飛び込んで死んだまさにその日だった。その後もタイムスリップは続き、真次はアムールという人物と知り合い、時代は遡っていった。驚くべきことに愛人であるみち子も同じ内容の経験を持ったという。2人のタイムスリップの行き着く先はどこなのか?>

いやぁ、これは面白かった。発想と話の展開、ミステリー的なオチまで素晴らしい!

立志伝中の人物である父から離れて母とともに暮らす真次。父と真次との間の葛藤が話のメインにあり、そこにみち子がからんでタイムスリップが起きます。


仕掛けの一つは途中でわかるのですが、最後の話の着地点は全く想定外でした。
やられた、という感じでしかも泣けても来るという完全に浅田氏の術中にはまってしまいました。やれやれ…。

こういうオチのある話の場合、原作を読むとおそらく映画を楽しむのが難しいのではないかと思います。
…と言いながら、私はたぶん映画も見に行くことでしょう。
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# by bibliophage | 2006-09-27 07:11 | その他小説
『安徳天皇漂海記』 マルコの冒険
d0018433_063994.jpg著者:宇月原晴明 
書名:安徳天皇漂海記
発行:中央公論社
怪異度:★★★★☆

山本周五郎賞受賞。ダカーポ誌上でかの豊崎・大森コンビが一押し。

<源実朝は鎌倉3代将軍ではあったが、実権は北条氏に握られ、和歌の世界の人となっていた。ある日、実朝は従者の若者とともに江ノ島の洞窟に導かれ、壇ノ浦に沈んだはずの安徳帝が琥珀に包まれた姿で存在することを知る。時・所は移ってクビライ・カーンに仕えるマルコ・ポーロ。マルコは帝のその不思議な話を聞き知っていたが、滅び行く南宋の少年皇帝の元で実際に安徳帝の姿を見ることになった。>

鎌倉歴史ファンタジーとでも申しましょうか。とにかく不思議な物語です。

パート1:実朝編。パート2:マルコ・ポーロ編。
パート1は「吾妻鏡」の記述に従い、実朝の歌をfeature しながら、安徳幼帝との不思議な出会いから実朝の死までを語ります。ややテンポが遅めで、古文が入ったりするので読み進みにくい印象がありました。
それに比してパート2はマルコ・ポーロが主人公で小気味好く話が進みます。彼は南宋皇帝の最期と安徳帝の昇天?を見届けます。

時折、素晴らしく美しい風景イメージ描写が出てきます。実朝を海へと導く真っ赤な幕の場面、南方の島での蜜でできた湖の場面など。

平家物語の名調子を中国風?に訳した節が心に響きます。
「サヘートの庭に響く鐘の音は
あらゆるものがうつろいゆくことを教えてくれる
サーラ樹の花の色は…」


先入観では「安徳天皇が生き返って大活躍!」かと思っていましたが、全然違いました。もしそうだったならライトノベルになってしまいますねw。
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# by bibliophage | 2006-09-23 00:04 | その他小説
『今日、ホームレスになった』 大手企業管理職→ホームレス
d0018433_5202661.jpg著者:増田明利 
書名:今日、ホームレスになった 13のサラリーマンの転落人生
発行:新風社
衝撃度:★★★★★

ホワイトカラー出身者たちの転落人生。

「図らずもホームレスになってしまった人たちと我々の間に、どれほどの違いがあるのだろうか。自分が彼らのようにならないという保証があるのか。(「はじめに」より)」

書店でふと見かけて読んでみましたが、インパクトが有り杉ました。
13名の元ホワイトカラー、現ホームレスに詳細なインタビューをすることで、なぜ彼らがそうなったかを具体的に記しています。

元大手総合商社次長、元ファンドマネージャー、元大手鉄鋼メーカー副部長。数年前まで巨大ビルで働いていた自分が、今はそれを見上げる公園で暮らしている…。これは辛すぎます。しかもその気持ちが徐々に薄れていくところがまた悲しい。

転落のパターンはかなり共通しています。
大企業勤務40代後半~50代→バブル崩壊、不況→リストラ、会社倒産→再就職不能→ローン破綻→借金→家庭不和→失踪。

ホームレスの生活も詳しく書かれていて、雑誌収集がいかに大事な仕事かわかりました。
とにかく他人事と言って済ませられない内容の本です。ガクガクブルブル…。
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# by bibliophage | 2006-09-20 05:21 | 評論
『凶笑面』 民俗学ミステリー
d0018433_20315414.jpg著者:北森鴻 
書名:凶笑面 蓮丈那智フィールドファイルⅠ
発行:新潮社(文庫)
本格度:★★★☆☆

鮎川哲也賞作家北森氏による民族ミステリー短編集。ダカーポおすすめ。

<東敬大学助教授、端整な顔立ちの女性学者、蓮丈那智。今日も彼女の元には、不可思議な風習についての民俗学的調査の依頼が届いていた。助手の内藤三國を連れて現地に赴く那智だったが、なぜか彼らは殺人事件に巻き込まれていく。>

解説に書かれているように、ひとつひとつの話にかなりの資料が使われていて、とてもハードワークだと思いました。横溝正史作品のようなおどろおどろしさに走らず、民族学の面白さを取り入れた点でとてもユニークな作品と言えると思います。

しかし、ちょっと読みにくいのが難点。持って回った言い方も好きになれませんでした。
例:声は続かなかった。怒りとは別の感情が、声帯の機能を停止させたらしい。
d0018433_20331395.jpg
また巻頭に、諸星大二郎先生の「妖怪ハンター」に捧ぐ、とありましたが、比較するとかなりあっさりした印象。もう少しエグさがあってもいいかも。

主人公の蓮丈那智は能面のような印象で、美人のようですが、萌えキャラではないですねw。


法月綸太郎氏による分析では、
1. 民族学的調査依頼
2. 関係者の殺害
3. 民俗学的討論と事件のデータ提示
4. 民俗学的謎と殺人事件の解決
というパターンを持ち、助手の三國を含めてシャーロック・ホームズの様式を踏襲している、とのことでした。

密度が濃い作品であることは確かなので、今度は長編の方を読んでみたいと思います。
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# by bibliophage | 2006-09-18 20:35 | ミステリ-
『文学賞メッタ斬り!リターンズ』 毒舌の楽しみ
d0018433_030880.jpg著者:大森豊、豊崎由美 
書名:文学賞メッタ斬り!リターンズ
発行:PARCO出版
斬殺度:★★★★★

物議をかもしたw「文学賞メッタ斬り!」の続編。

「そして最後に、…(島田雅彦の言葉を借り)、わたしたちのいいかげんな与太話や採点に傷ついた方々には深くお詫び申し上げます。御免。(「おわりに」より)」

島田雅彦氏をゲストに迎えてパワーアップ。相変わらず歯に衣着せぬ物言いが心地よいです。

小学館文庫小説賞の河崎愛美「あなたへ」を評して、「脇の甘い比喩を得意になって使いまくる、ちょっと作文が上手い程度の15歳を、いい年こいた大人がちやほやしてどうするよっ… 」ということで点数15点!
2005年上半期芥川賞候補の伊藤たかみ「無花果カレーライス」について、「点数つけると16点くらいですね。…わざわざ印刷して紙面に載せる価値があるんですか、この作品に」との講評。どちらも豊崎さんです。
大森さんも伊藤たかみ氏を「へた」と評していました。
前回ついに芥川賞を受賞したとはいえ、伊藤たかみ作品を読むことはたぶんないだろうと思いますw。

2006年下半期の直木賞予想で東野+恩田のW受賞という読みでは、私も大森さんと一致していたのがちょっと嬉しく思えました。モロにはずれていましたが…。

毒舌だけではなくて、自分のツボにはまったモノを異様に持ち上げるのが可笑しい。
興味を持った作品は青木淳悟「四十日と四十夜のメルヘン」、松尾スズキ「クワイエットルームにようこそ」、中原昌也「点滅……」、鹿島田真希「ナンバーワン・コンストラクション」etc…。

巻末に受賞作を一覧で点数化しています。個人的には、「夜市」は過小、「博士の愛した数式」は過大評価と思いました、

評論家というのは、古今東西の作品に精通していなければならない大変な仕事だとつくづく思いました。続編はまたまた2年後でしょうか。今から期待しています。
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# by bibliophage | 2006-09-16 01:34 | 評論
トラックバック・スパム その2:excite の新対策
よほど多くの方が困っていたのか、本日exciteがスパムの新しい対策を発表しました。

<半角英数字によるコメント・トラックバックの拒否機能>

「設定画面」-「環境設定」の中の
半角英数記号のみのコメント・トラックバックを受付けない 」にチェック
→「変更」ボタンをクリック。

なるほど!これなら簡単ですね。excite 担当者さん、ご苦労さまでした。

まさかこれを破ろうとして、スパムTBに全角で漢字やカナを入れてきたりしないでしょうねw。
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# by bibliophage | 2006-09-13 23:54 | その他
『名もなき毒』 逆玉探偵、杉村三郎
d0018433_9261082.jpg著者:宮部みゆき 
書名:名もなき毒
発行:幻冬社
執拗度:★★★★☆

前作 「誰か」 に続き、好い人である三郎氏が活躍。

<青酸カリによる毒殺事件の4人目の被害者が出た。その家族と知りあうことになった杉村三郎はその真相を知りたいと考えはじめる。一方、彼の勤める編集部ではトラブルメーカーの女性が悪態をつきながら会社を辞めていった。>

489ページの重量級の本なので、電車で読むのには不向き。自宅で休みに読みました。

冒頭、いきなり殺人事件が起きて期待が高まります。が、すぐさま今多コンチェルンの会長の娘婿である主人公杉村氏の日常に話が移り、そのまま淡々と進みます。
結局のところ、全体的にはミステリー色は弱く、人間描写の深い物語になっています。

今回のNo.1キャラは編集部を辞めていった原田いずみ。職歴・学歴詐称、仕事能力なし、責任転嫁、暴力、キレやすい、粘着質。容姿についてほとんど言及されていませんが、おそらくある程度魅力的なのだと考えられます。これはボーダーラインの典型か、はたまた性格障害か?彼女の行動に関して、途中からネガティブな伏線が張られて、その通りに話が展開していきます。過去に兄の結婚式をぶち壊した話がとにかく強烈!でした。

その他、杉村夫妻をはじめ、殺された古屋明俊とその娘・孫(女子中学生)、ジャーナリストの秋山氏、など登場人物がバックストーリーを含めて丁寧に書かれています。
また、青酸カリの「毒」、人間の持つ「毒」、土壌汚染の「毒」、と毒からみで話をまとめ上げる落語的な上手さが感じられました。

表現としては、義父である今多会長の話にただうなづきながら、ふと、「それで、私という観葉植物の葉が揺れた」という杉村氏の心象の描写が巧みだと思いました。

真犯人はちょっと拍子抜けの感があるし、杉村探偵の人の好さ(と無神経さ)も鼻につくところがあります。また、容疑の浅い段階では家宅捜索しないだろう、とかミステリーとしてはツッコミ所が多そうです。しかし、人間の描き方の執拗さというのは一読の価値があります。「模倣犯」を期待しなければ、楽しめる作品だと思います。このシリーズはこういうtaste なのでしょう。
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# by bibliophage | 2006-09-12 09:33 | ミステリ-
トラックバック・スパムに辟易
この数日間、わけのわからないスパムTBが連日50件以上あって、大変迷惑しています。

以前は、薬の販売やエロ関係が主で1日数件だったので、何とか1件1件削除していました。しかし、最近のものは50件~80件近くまとめてで、しかも内容・意味が全くがないものばかり。しかもリンク元も表示されない全くのスパムです。

Blogの勧進元であるexcite にメールしたら下記のような回答でした。

1.「ログイン」→「設定」環境設定の「トラックバック権限」を変更します。
・全てのユーザー(誰でもコメント可)
・エキサイトブログユーザー(エキサイトブログユーザーのみ可)
・トラックバック禁止(完全にトラックバック不可)

2.また、下記の手順でトラックバックを一括削除することも可能です。
ブログログイン後、以下の手順で操作してください。
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【4】現在トラックバックされている内容がすべて表示
【5】各トラックバックの左にチェックボックスがあるので不要なものをチェック
【6】「選択されたトラックバック を削除」のボタンをクリック
【7】削除が完了

1.の設定変更は意味がないので、2.の一括切除を選択。これだと数分以内に削除終了することが可能でした。
しかし本来exciteも、他のblogがやっているように、TB、コメントは最低こちらの許可後にupする形にして欲しいものです…ぶつぶつ…。
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# by bibliophage | 2006-09-12 00:30 | その他
『ダ・ヴィンチ・コード』 やっと読了
d0018433_1050633.jpg著者:ダン・ブラウン 
書名:ダ・ヴィンチ・コード(上・中・下)
発行:角川書店(文庫)
薀蓄度:★★★★☆

単行本と文庫合わせて1000万部以上売れている超ベストセラー。世界では44言語で5000万部!

<ルーブル美術館長ソニエールが殺される→ハーバード大教授ラングドンが疑われる→ソニエールの孫娘ソフィーに助けられる→聖杯の場所を示すキーストーンを持ち出して2人で逃げる→聖杯研究家のティービングの家へ転がりこむ→みんなでイギリスへ逃亡→テンプル教会には手がかりなし→ウェストミンスター寺院でドタバタ→暗号の5文字がわかった→ロスリン礼拝堂でご対面→ラングドンはルーブルへ戻る>

d0018433_10502024.jpg先に映画を観てしまったのですが、その前に読むべきだった…。映画はかなり原作を忠実に再現してはいますが、見終わったとき多くの疑問が残ってあまり感動する余裕がありませんでした。

原作を読み終わってようやくわかった点。
・ オプス・デイとシオン修道会のこと。
・ ソフィーが見たシオン修道会の変な儀式。
・ オプス・デイの司教がバチカンに何を言われて、何で金をもらったのか。
・ 「導師」がそこにつけこんでそそのかしたこと。

読み終わっても疑問な点。
・ 何人も人が死んで、必死になって暗号を解いて、クリプティクスを開けて、ロスリン礼拝堂へ行って、で結局、何?

映画についての感想。
・ トム・ハンクスはちょっとミスキャスト。ソフィーと恋仲にはなりえない。
・ 導師の正体を原作のようにギリギリまで隠せないのが残念。また、導師の行動が唐突な印象。

様々なキリスト教の薀蓄が語られ、トリビアの泉的な面白さはあります。
もし原作も映画もまだの方がいるなら、「上巻だけ読んでから映画を観る」ことをおすすめします。
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# by bibliophage | 2006-09-09 10:52 | ミステリ-
『快楽の封筒』 ネコ殺しの作家
d0018433_6481254.jpg著者:坂東眞紗子 
書名:快楽の封筒
発行:集英社(文庫)
官能度:★★★★★

タヒチ在住、ネコ殺しの告白で時の人となった坂東さんの官能短編集。

<マンションに住む鏡子はサラリーマンの夫、幼稚園児の娘と3人暮らし。ある日廊下で、ふと隣に住む男と目を合わせてから、彼女は彼のことが忘れられなくなった。(「隣の宇宙」)>

これは面白かった。
いろいろなしがらみの中で、自分の心に忠実に生きる女性の性の形を繊細かつ大胆に描いています。

ベニスのお祭りでのヨリコと3人のイタリア人(「謝肉祭」)、貧しい山村における男女(「蕨の囁き」)、遊びに行ったイタリアで美しい少年に出会った中学生(「アドニスの夏」)。
その他、「奪われた抱擁」、「二人の兵士の死」、「母へ」
最後に表題作「快楽の封筒」。ここでは「隣の宇宙」における二人の関係が夫に知られることになり…。

イタリアの話から日本の寒村まで、その幅広い描写力が凄い。
女性から書かれた官能小説というのはこういうものかと理解しました。(性器の呼称はもう少し考えて欲しいが…)
とにかく、直木賞・柴田錬三郎賞などの受賞歴にも納得です。

子ネコ殺しについては、やはり「崖から投げ落とすなら、どこか遠くに捨ててきてね」と言いたいですね。
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# by bibliophage | 2006-09-06 06:52 | その他小説
『55歳の地図』 お遍路放浪マンガ日記
d0018433_7191241.jpg著者:黒咲一人 
書名:55歳の地図
発行:日本文芸社
解脱度:★★★★☆

干された漫画家の四国放浪記。雑誌ダカーポのおすすめ。

<連載が全くなくなり55歳で漫画家をやめた黒咲氏。家財、漫画の原稿などを捨て、ホームレスとなって、新しい道を探すため三輪自転車を押しながら四国遍路の放浪の旅を始めた。>

どこかで見たような劇画の絵柄ですが、黒咲氏の作品は今まで読んだことはありませんでした。漫画家は人気商売だけに、(当たり前ながら)連載がなくなると生活できなくなるのですね。

四国八十八ヶ所の第一番札所「霊前寺」到着が2003年11月23日。八十八寺を打って(=回って)高野山に行った後、一番に戻ったのが2004年1月23日。
丁度2ヶ月の旅ですが、冬季に回ったせいで何度も危ない目にあっています。そこで人々の有難い助け、慈悲を借りて何とかやり遂げたというのがウリになっています。

作品中に出てくる漫画家仲間の描き方が面白い。本宮氏はサラリーマン金太郎風で、高橋よしひろ氏は犬の姿!でした。

吾妻ひでおの「失踪日記」とは違った味わいで、四国遍路の実際がよくわかりました。しかし「失踪日記」ほどバカになり切れていないというか何と言うか…。やはり、あれほどのインパクトはなかったですね。

とは言え、自分を捨ててこの作品を生み出した黒咲氏ですので、また新たな活躍を期待したいです。
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# by bibliophage | 2006-09-04 07:21 | 漫画
『悪魔のささやき』 人はなぜ魔がさすのか
d0018433_2335662.jpg著者:加賀乙彦 
書名:悪魔のささやき
発行:集英社
逢魔度:★★★★★

精神科で作家の加賀氏による犯罪心理エッセイ。

<「あのときは、悪魔がささやいたんです」…
単なる言いわけや嘘と切り捨ててしまうには、あまりにも多くの自殺未遂者や犯罪者が口々にそう語るのです。(「はじめに」より)>

「バカの壁」のように口述筆記で書かれているのでとても読みやすくなっています。

ふわふわとした心の動き(=気)の状態に、強い刺激、時代の風潮、声高な主張などが作用して、その結果心の底の悪と共鳴して破滅的行動として爆発すること。
これが「悪魔のささやき(とその後の事件)」であるとしています。例として、太平洋戦争時の国民の意識、オウム真理教の幹部たち、ネット集団自殺、拝金主義によるライブドア事件、などをあげています。

著者がクリスチャンであること、東京拘置所に勤務していた経験、終戦体験などから「悪魔のささやき」という考えを持つようになったようです。

特に日本人はこのささやきに弱い、ということで著者の対策は以下の5つ。
1. 視界、関心をできるだけ広く持つ
2. 世界の代表的な宗教について知る
3. 死について知る
…メメント・モリですね
4. 自分の頭で考える習慣をつける
5. 確固たる人生の態度を持つ

むむ、早速実践しなくては…w。

教育システムについての捉え方など紋切り型な点もみられますが、著者の精神科医としての豊富な経験に基づく内容は読んでみる価値があると思います。
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# by bibliophage | 2006-09-02 02:38 | 新書
『マッチメイク』 プロレスミステリー
d0018433_6273816.jpg著者:不知火京介 
書名:マッチメイク
発行:講談社(文庫)
ギミック度:★★★★☆

第46回(2003年)乱歩賞受賞作。

「新大阪プロレスに入門した山田聡。ある夜、総帥のダリウス佐々木がタイガー・ガンジーとの流血試合後に死亡した。著書に遺書めいたことを書いていた佐々木は自殺したのか?その後、この事件を調べようとした別のレスラーもトレーニング中に亡くなった。山田は同期の本庄とともに真相を探る。」

不知火氏はミステリー新人賞でいつも最終選考に残っていた実力者で、ついに乱歩賞か、と受賞当時思いました。
受賞・出版当時の評判はもう一つだったようですが、今回文庫化されたものを読んでみたらなかなか面白かったです。

マッチメイク」とは、試合の筋書きを考えること。ショーとしてのプロレスの最も重要なポイントで、これが真相とからんできます。なかなかいいタイトルだと思いました。

主人公の山田、同期の本庄、山田を鍛える前座レスラー丹下、この3人は良いとして、他にいろいろ出てくるレスラーのキャラが少しわかりにくい感じはしました。それで、犯人を考えにくいという点が、ミステリーとしてはひっかかるかもしれません。

しかし、プロレス界の隠語の話やレスラーのトレーニングの内容などが詳しく書かれているのも、興味深い点です。流血におけるレフェリーの役割には唖然としました。

文庫463ページと長めですが、リーダビリティーは高くすらすらと読めました。プロレスアレルギーがなければ、読んでみる価値はあると思います。新奇性という点では同時受賞の「翳り行く夏」よりも高そうです。

2作目の歌舞伎ミステリー「女形」も力作でした。次作にも期待します。
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# by bibliophage | 2006-08-30 06:37 | ミステリ-
『うつうつひでお日記』 すごい読書量に脱帽
d0018433_1174859.jpg著者:吾妻ひでお 
書名:うつうつひでお日記
発行:角川書店
どん底度:★★★★☆

あの「失踪日記」の著者による漫画日記。

「この本はまるごとあじま(=著者)の日記になっていてすごくうっとおしいです。…日記ですのでオチはありません。…一気によむと鬱になるかもしれないので注意してください。(「まえがき」より)」

うわぁ、ほんとにオチがありません!「失踪日記」みたいなモノを期待すると大きくハズレることでしょう。

アル中は脱却しているものの、仕事が少なかった2004年7月~2005年2月までの日記。図書館へ行って、アイスや麺類を食べて、少しだけ仕事して、鬱に悩まされて、本を読んで、といった単調な生活が描かれています。はじめは、(脈略なく入っている)美少女のイラストを見ながら何とか先へ読み進むといった感じでした。

しかし著者の読書量はハンパではありません。笠井潔、絲山秋子、T.J.パーカー、小川勝己、舞城王太郎、その他何でも手当たり次第にすごい猛読。ここにマンガも加わり、「ホムンクルス」「デスノート」「ああっ女神様」etc etc…。この読書内容と著者の評価を見るためだけでも読む価値があります。

プロとして他の人気漫画家に嫉妬するようなところも素直に描いているのが凄い。
森博嗣のマンガ本(!)を読んで、「マンガ家でもやっていける」「これをどういう技術で描いてるのかわからない」などと驚く様が、正直で笑えます。

結局、「失踪日記」が大ヒットして終わるというオチ(?)があるのですが、それまでの苦労・悩みがこの本のウリでしょうね。

ギャグ漫画家の寿命は本当に短い。紆余曲折を経てなお問題作を放つ吾妻氏はその意味では大したものです。
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# by bibliophage | 2006-08-27 01:29 | 漫画
「ダカーポ」特集 眠れないほど面白い本
d0018433_1502814.gif雑誌ダカーポがリニューアル特別号と銘打って面白本を特集。

Ⅰ. 2006前半最新ベスト10:
かの「文学賞メッタ斬り!」の大森望・豊崎由美コンビと関口苑生の3氏が選出。
 1. 「安徳天皇漂海記」 宇月原晴明
 2. 「デス博士の島…」 ジーン・ウルフ
 3. 「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロ …
 5. 「チョコレートコスモス」 恩田陸 …
 9. 「図書館戦争」 有川浩 …
大森・豊崎氏のNO.1 ということで「安徳天皇…」は迷わず購入。ライトノベルは得意ではないですが「図書館戦争」も読む予定です。

Ⅱ. 国内ミステリーベスト10:
杉江松恋、香山二三郎氏による。
 1. 「ワイルド・ソウル」 垣根涼介 これは◎の納得!
 2. 「アヒルと鴨のコインロッカー」 伊坂幸太郎
 3. 「ユージニア」 恩田陸
 4. 「葉桜の季節に…」 歌野昌午 これは私的にはイマイチ。
 5. 「スティームタイガーの死走」 霞流一 全くどーでもよいバカミス。
 6. 「鏡の中は日曜日」 殊能将之 これも◎のおすすめ。…
他に「凶笑面」 北森鴻、これは購入しました。

Ⅲ. 恋愛小説ベスト1は 「ツ、イ、ラ、ク」 姫野カオルコ

Ⅳ. 時代小説ベスト1は 「壬生義士伝」 浅田次郎、「十兵衛両断」 荒山徹

Ⅴ. マンガ
  1.「デスノート」、2.「舞姫(テレプシコーラ)」◎、3.「マエストロ」、
  他「55歳の地図」は購入。「セクシーボイスアンドロボ」は絶版じゃないかぁぁ…。

「ダカーポ」 この号は見てみる価値があると思います。
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# by bibliophage | 2006-08-26 01:54 | 雑誌
『愛のひだりがわ』 筒井式ジュブナイル
d0018433_03504.jpg著者:筒井康隆 
書名:愛のひだりがわ
発行:新潮社(文庫)
成長度:★★★★☆

「時をかける少女」「富豪刑事」の筒井氏が描く少女の成長譚。

<母が死んで一人ぼっちになった小学生、愛。彼女は左手が不自由だが、犬と会話する力を持っていた。治安が悪くなった近未来の日本で、愛は失踪した父を探す旅に出る。少年サトル、犬のデン、ご隠居さん、詩人の志津絵さんらの助けを借りて愛の成長の旅は続く。>

殺伐とした世界における心温まる交流の話という対照性がいいですね。
左手の使えない愛(ちゃん)のひだりがわには必ず誰かがいて助けてくれる、というのがタイトルの意味です。

ジュブナイル(児童文学)らしく、殺人の場面もあっさりだし、愛ちゃんはいつも勉強してかしこくなっていくという教育的内容などを含んでいます。愛ちゃんの旅も、よく言えば展開が読めない、悪く言えば行き当たりばったり、に進んでいきます。

愛ちゃんたちが超音波でハマグリを取る場面がなかなか印象的でした。こういった絵が浮かぶようなシーンをつないでいくのはさすがに筒井氏の技だと思いました。また、戦闘シーンは得意なドタバタを避けて淡々と描かれています。

最後が類型的なパターンだったりと、気になるところもありますが、ジュブナイルということでさらっと読むのが吉かと思います。

虚人たち」との対比で語った村松友視氏による解説も読み応えがありました。
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# by bibliophage | 2006-08-23 00:42 | その他小説
『ニッポン幸福哀歌』 貴重な水木マンガ
d0018433_6182886.jpg著者:水木しげる 
書名:水木しげるのニッポン幸福哀歌
発行:角川書店(文庫)
哀愁度:★★★★☆

週刊漫画アクションに連載された「日本の民話」(昭和42-44年)シリーズ。

<難破した島でみつけた不思議な「人面相」、恵比寿と大黒が作ったパラダイスの「島」、願いをかなえてくれる「管狐」、手袋の好きな妖怪「ぬっぺふほふ」、など20編>

水木漫画でよくある容姿の人物(表紙参照):さえない中年の男が怪奇現象、妖怪に出会ってひどい目にあったり、自分を見つめ直したりする内容の短編集です。
パラダイスに住んでみたらだんだん飽きてきたとか、未来が見える三つめの目玉をもらったら世の中に嫌気がさした、など教訓的な話や、美しい妖怪の女性(雨女、影女etc)と仲良くなるという妄想的な話が多く見られました。

このシリーズは今まで読んだことがありませんでした。連載の関係なのか一遍の長さが短いのがやや物足りない感じもしますが、私のような水木ファンにとっては貴重な文庫です。
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昨日のニュースで、水木氏の故郷境港市の「妖怪そっくりコンテスト」というのがありました。「子泣き爺」に似せようと奥歯2本を抜いた、という人にはびっくりしました。
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# by bibliophage | 2006-08-22 06:25 | 漫画
『水曜の朝、午前三時』 韓流1970年
d0018433_04010.jpg著者:蓮見圭一 
書名:水曜の朝、午前三時
発行:新潮社(文庫)
懐古度:★★★☆☆

蓮見氏のデビュー作のベストセラー小説。

<45歳で脳腫瘍で世を去った直美。彼女は、娘に4巻のテープを残した。そこには1970年の万博でコンパニオンをしていた直美のかなわなかった恋愛の話が吹き込まれていた。>

この話はとても読みやすく、品の良いオールド・ファッションド・ラブ・ストーリーだと思います。
しかしオビの児玉清氏のように「涙が止まらなくなった…」ということはなかった。彼はいったいどこで泣けたのだろうか…?

<1970年万博。許婚が東京にいる身でありながら、別の男性に惹かれる主人公直美。しかし、相手の出自のため結婚することが適わず、東京へ戻る彼女。そして結婚後の再会…>。

確かに、直美は当時としては進歩的な女性なのでしょう。その行動力にも感心しました。

しかしこの現代(出版2001年)に、出自のポイントでの悲恋を描こうとした作者の見通しはいかなるものだったのか。いや、結果的には成功したわけですが…。
もし若い人々にも受けたとすれば、「かなわぬ恋」という普遍的なテーマの勝利だったのか、はたまた「(結婚は別として)恋愛は見かけが9割」という真実の力か。

私的には、文中にポピュラーミュージシャンの名前が次々と出てくるところが楽しめました
ボブ・ディラン、セルジオ・メンデス、モンキーズ、デヴィッド・ボウイ、CCR、ビーチボーイズ、フランク・ザッパ、ジャニス・ジョプリン、ヤードバーズ、エアロスミス。
小説のタイトルはサイモン&ガーファンクルから取ったものだそうです。

人それぞれでかなり異なる感想が湧きそうな小説、ということで一読に値すると思います。
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# by bibliophage | 2006-08-19 23:53 | その他小説
『博士の異常な健康』 究極の広告塔
d0018433_7332530.jpg著者:水道橋博士 
書名:博士の異常な健康
発行:アスペクト
説得力度:★★★★★

浅草キッドの博士が自分で体験した超健康法。

「俺は徹底的な体験主義者であり、自ら体を張って飛び込むことに躊躇がない。つまり本書は俺自身の体で文字を綴った経験談でもある。(「まえがき」より)」

この本は凄い!
自ら経験した健康法・治療法で効果があったものについて、その理論・科学的裏づけなどを詳しく書き、おまけにそれに対する批判意見まで載せて、とにかく徹底的に解説しています。

その内容は以下の如し。
1. 育毛・増毛法
2. 近視矯正手術。
3. 胎盤エキス
4. 断食
5. バイオラバー
6. 加圧式トレーニング


育毛法はプロピアという会社で、この章については週間文春の中村うさぎさん(だったかな)のコラムでも紹介がありました。同社のHPをみると、シャンプーは需要が多すぎて3ヶ月待ち!になっていました。
近視矯正については、18年も前の黎明期にRK手術を受けています。この思いきりのよさに感心。現在も視力は良いとのこと。

最も胡散臭いのがバイオラバーで、体につけるだけで肩こりが治りガンにも効果ありとのことでした。それでも博士の文章を読んでいると、つい購入したくなるのは大したもの。開発したのも一流のゴムメーカーとのことでした。

さて、最も興味深かったのが加圧式トレーニング。高圧テントかと思ったら、手足の付け根を緩く縛って運動負荷を加えると、効率よく筋肉が発達するというもの。正座の足の痺れにヒントを得たというこの方法、開発会社であるサトウスポーツプラザは東大に加圧関連の寄附講座までつくっており、論文まで出しているそうです。

とにかく豊富な語彙、ダジャレを含めた徹底的な解説、体験談、それによる説得力。これが本書の白眉でしょう。
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# by bibliophage | 2006-08-17 07:34 | 評論
『黒い雨』 終戦記念日に
d0018433_8211074.jpg著者:井伏鱒二 
書名:黒い雨
発行:新潮社(文庫)

いつかは読もうと思っていた作品。8/6に原爆の記事を目にして読んでみました。

<終戦後4年。閑間重松は妻しげ子、姪の矢須子と広島の山村に住んでいた。重松は被爆したものの症状は軽い。矢須子は元気だが、直接被爆したように噂されて縁談がまとまらない。重松は当時を思い出して「被爆日記」を清書していた…。>

「被爆日記」を清書する、という形で話が進み、時々現時点(4年後)の戻るという書き方のため、淡々とした印象を与えます。重松静馬著『重松日記』を原資料とし創作を加えたもの(Wikipedia)ということで、ドキュメンタリー色が強くなっています。名文家として知られる井伏氏が、原爆投下直後の広島の壊滅的状況、人々の悲惨な有様を粛々と書いて、目に浮かぶように再現しています。

色々な人々の観点から書かれた原爆投下時の状況。絶望的な話だけでなく、九死に一生を得た医師の挿話などもあり、読み応えがありました。
僧侶も間に合わないほどの死人の数のため、勤務先の工場長に命じられて、重松はお経を読む係りとなります。死者の家族からお布施を押し付けられて戸惑う重松。こういったエピソードがとても興味深いところでした。

最後に物語として大きな展開があり、余韻を残して話は閉じられます。

d0018433_8185531.jpg映画も観てみました。

今村昌平監督1989年作品。重松夫婦と姪に、北村和夫、市原悦子、田中好子。
田中好子が可憐で良かったです。
原作に忠実な筋書きに加えて、新たな登場人物も加わり、ドキュメンタリー色を薄めて作られています。
白黒映画であるところがピッタリで、こちらも見る価値は十分にありました。(8/15の夕刊フジでもおすすめDVDになっていました。)

戦争に巻き込まれるのだけは勘弁して欲しいと痛切に感じました。アメリカというのは昔から現在まで変わらない凶暴な国です。
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# by bibliophage | 2006-08-15 08:28 | その他小説