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ストレスがたまったら本のまとめ買い。結果は積ん読。なんとかしなきゃ…。ということで書評のブログです。ときに音楽や趣味の記事も…。
by bibliophage
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『麦ふみクーツェ』 大人向けの不思議な童話
『麦ふみクーツェ』 大人向けの不思議な童話_d0018433_7254240.jpg著者:いしいしんじ 
書名:麦ふみクーツェ
発行:新潮社(文庫)
純粋精神度:★★★★☆

(リクルート編集者出身の)作家+イラストレーター、いしいしんじ氏の坪田譲治文学賞受賞作品。

ある国の港街におとうさん、おじいちゃんと三人で暮らすぼく。ぼくにはときどき「とん、たたん、とん」と麦ふみをするクーツェの姿がみえる。おとうさんは変わり者の数学教師で、難しい証明問題をいつも考えている。おじいちゃんは打楽器の演奏者で、街の楽団を厳しく指導する。ぼくは指揮の勉強をするために、船に乗って大都会に出て、世界的なチェロ弾きとその娘に出会う。

最初、ストーリーはゆっくりと展開しますが、竜巻で運ばれたネズミが街に大量に降ってきてから街の歯車が狂い始めます。
大人の童話にふさわしく、おとうさんは「ねずみと素数」の考えに取りつかれておかしくなります。
また、特徴的な人物:変な曲を作り出す用務員さん、盲目の元ボクサー、一見感じのよいセールスマン、などが登場し、話をつなげていきます。
最終的には、「ぼく」は「麦ふみクーツェ」のルーツにたどりつくわけですが…。

色々な小話をはさみながら、何となく話がつながっていくところが、上手いと思いました。その小話のひとつひとつが面白くできています。「アメ玉ください」と叫ぶおうむとか、前世のことを語る男とか。こういう物語の発想には、ピュアな精神を持ち続けることが必要だと思いますが、1966年生まれの著者がいかにしてそうできるのか。感嘆します。
また、最後のコンサートの場面はなかなか感動的でもありました。

結局、「自分の持って生まれた能力・特徴にあわせて一生懸命に生きよう」というのが、童話としてのメッセージなのでしょうが、そこら辺りは栗田友起さんの文庫解説にていねいに書かれています。
同じ著者の 『プラネタリウムのふたご』 も、雑誌ダ・ヴィンチで「絶対はずさない!プラチナ本」として紹介されていました。

いしいしんじ氏HP
by bibliophage | 2005-08-21 07:28 | その他小説
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